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3章
偽り
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『アレストラ』の国王交代に伴い、属国の国王や家臣たちが王宮に集う。王宮付近の守りは平時より格段に固い。
それと同時に、人間界へ攻めた『クロライド』への警告、もしくは攻撃の任務で『アレストラ』最高戦力の第一支団が向かっていた。
ネムリ「街は交代式でお祭りムードです。式まで時間がないので、街まで下りられませんが、中庭でご覧になりますか?」
成実「そうなんですね。ぜひ、見てみたいです。」
ネムリに誘われ、伊沖隊は中庭から城下町を眺めに行った。
成実「あれ?柿崎隊は?」
ネムリ「柿崎隊の皆さんは、別の用がある様子でした。」
成実「へぇ…。お、ほんとだ。盛大な祭りだな。」
中庭から見渡すと、国旗や行燈を掲げ、国を上げて交代式を祝う街並みが並んでいた。
成実(昨日の会話を聞いた後じゃあ、盛大さも勘ぐってしまうが…)
重宗「国をあげての祭りだな。」
ネムリ「はい。みなさま、新国王の就任を祝ふ…うっ…」
1歩後ろで街の様子を見ていたネムリの声が途中で止まる。
成実「え?」
成実が振り返ると、ネムリの胸を剣が貫いていた。
成実「っ!!」
ネムリ「あ…っ…く…」
ネムリの口が震える。
ネムリの背後に立つ男が、ネムリの肩に手を乗せ、剣を引き抜く。
ネムリはそのままうつ伏せに倒れる。剣を抜かれた傷口から出た血が、中庭の草を赤く染める。
成実「なんだお前!」
伊沖隊はすでに臨戦態勢にあった。
ネムリを刺した男は静かに剣を構える。
成実「王軍の服装だが…仲間割れか?とにかく、捕獲優先だ…。王軍に引き渡す。」
重宗ら「了か…。」
重宗ら伊沖隊の隊員の返事を遮ったのは悲鳴だった。
「きゃああああっ!!!」
昭夫「王宮の中か?!」
成実「今のは…遥?!」
成実は呟くと中庭の入口へ走り出した。
謎の男はその動きに合わせ、迎撃するように剣を構えた。
それよりも早く、正輝は謎の男へ直進し、刀で謎の男の剣に組み付いた。
正輝「行け!成実!」
成実は何も言わず入口まで一直線で駆け抜けた。
正輝「悪いな。うちの隊長は見境なくなる時があるんだ。」
男「それを見越して俺に組み付き、隊長を一直線で行かせるその素早さ。いいチームワークだな。」
盛也「なんだよ。喋れるんじゃねぇか。」
正輝が男の右手と剣を塞いでいる。盛也は、素手の左手側から切りかかる。
男「ふん!」
謎の男が身体に力を入れると、正輝と盛也は弾き飛ばされた。
男「さぁて。かかってこいよ。」
成実「はるかぁぁ!!」
成実は王宮を駆け、悲鳴のもとを探る。
成実(下から聞こえたな…。このへんか?)
ほどなくして、悲鳴の元は見つかった。
成実「遥!」
遥「…成実?!」
遥は無事だった。柿崎隊も一緒にいる。
成実「はぁ…なんだ。」
成実は遥の無事を確認し、胸を撫で下ろす。そこで異変に気づいた。
成実「こんなところでなにを…?てか、こいつは?」
柿崎隊は宝物庫の前にいた。そして、彼女らの側には国軍の男が1人、倒れていた。
景鈴「それが…。ネムリさんに呼ばれてここまで来たんだけど、ネムリさんはいないし…。突然襲われて…。」
成実「そうか…。柿崎隊長の刀でこうなったわけか…。」
景鈴「例によって、全然気づいてないんだけどね…。」
景鈴は苦笑いを浮かべた。
成実「ネムリさんは俺らといたんだが、同じように急襲されて殺された…。国軍の謀反か…?何が起きてる…。」
成実が考えこんだとき、廊下の突き当りから叫び声が響いた。
「いた!貴様ら!」
駆けつけたのは国軍だった。5人の国軍が臨戦態勢で近寄る。
隊長「貴様ら!投降しろ!」
成実「な、なんだ?!」
隊長「そこにやられている団員はなんだ?!やはり人間め…!」
景鈴「違います!彼が先に襲ってきたんです!」
成実「そうです!中庭でも、俺らも襲われて…。国軍に、何かしようとしてるやつがいる!」
隊長「信じられるか!人間のことなんて!」
成実「なんだ?昨日までと全然様子が…」
隊長「これも知らないと言うのか!」
隊長は端末の画面を見せてきた。
成実「っ!は…?」
成実らは言葉を失った。
『アレストラ』と隣国の国境付近の街では、轟音が響いていた。
「うわぁっ!」
「や、やめろ…ぐうっ!」
「やられるだけでたまるか!」
街に暴徒が現れたとの通報を受け、付近の警察組織が駆けつけ応戦しているのだが、状況は芳しくない。
エネルギー弾が降り、民家にも被害が及ぶ。
「人間が!お前らは、同盟を破るのか!」
景鈴「これは…岩橋隊…?!」
隊長「人間が我らの国で暴れている!これを見せられて、この状況で、貴様らの言うことを信用しろと?!」
成実「こんなの…何かの間違いだ!岩橋隊は先日、『クロライド』に拉致された!操られているんだ!報告書も、データも共有されているはずです!」
隊長「それが人間界の作戦で、偽装されているんだろう!いや、『クロライド』とグルかもしれない!」
成実「そんなバカな!」
成実と隊長の押し問答が続く。
隊長「とにかく、何も信用できない!殺しはしない。拘束する!」
一触即発の空気を破ったのは、景鈴だった。
景鈴「分かりました…。私たちの無実が晴れるまで、拘束してください。ただし、私たちは嘘を述べていません。なにか良くないことが起こっていることも念頭におかれてください。」
景鈴は両手を挙げ、投降を示した。
隊長「うるさい!戦闘体をとくんだ!捕らえろ!」
柿崎隊は戦闘体を解除した。
成実(まずい…。解除して大丈夫なのか…。暴れだしたりしないよな…俺…)
生身で魔界の空気に触れ、また魔力が暴走することにビビりながらも、成実は戦闘体を解除した。
成実(よかった…。何も起こらない…)
国軍が成実らに銃口を向け、牢まで誘導する。
国軍「入れ!」
成実「くっ…」
成実らは、窓もない地下室へ入れられた。
最後尾は遥だった。足取りはふらつき、顔は上気して息を切らしている。
遥「はぁ…はぁ…」
成実「遥…?」
国軍に連れられ、遥は地下室へ入ってきたが、連れてきた兵士は遥を凝視し、生唾を飲んだ。
国軍「お前はこっちだ。」
成実「おい!遥!」
成実は遥を追おうとするが、拘束されたままじゃ兵士に適わず、ドアが閉められる。
成実「遥!」
ほどなくして、悲鳴が響いた。
「ああああああっ!!!」
それと同時に、人間界へ攻めた『クロライド』への警告、もしくは攻撃の任務で『アレストラ』最高戦力の第一支団が向かっていた。
ネムリ「街は交代式でお祭りムードです。式まで時間がないので、街まで下りられませんが、中庭でご覧になりますか?」
成実「そうなんですね。ぜひ、見てみたいです。」
ネムリに誘われ、伊沖隊は中庭から城下町を眺めに行った。
成実「あれ?柿崎隊は?」
ネムリ「柿崎隊の皆さんは、別の用がある様子でした。」
成実「へぇ…。お、ほんとだ。盛大な祭りだな。」
中庭から見渡すと、国旗や行燈を掲げ、国を上げて交代式を祝う街並みが並んでいた。
成実(昨日の会話を聞いた後じゃあ、盛大さも勘ぐってしまうが…)
重宗「国をあげての祭りだな。」
ネムリ「はい。みなさま、新国王の就任を祝ふ…うっ…」
1歩後ろで街の様子を見ていたネムリの声が途中で止まる。
成実「え?」
成実が振り返ると、ネムリの胸を剣が貫いていた。
成実「っ!!」
ネムリ「あ…っ…く…」
ネムリの口が震える。
ネムリの背後に立つ男が、ネムリの肩に手を乗せ、剣を引き抜く。
ネムリはそのままうつ伏せに倒れる。剣を抜かれた傷口から出た血が、中庭の草を赤く染める。
成実「なんだお前!」
伊沖隊はすでに臨戦態勢にあった。
ネムリを刺した男は静かに剣を構える。
成実「王軍の服装だが…仲間割れか?とにかく、捕獲優先だ…。王軍に引き渡す。」
重宗ら「了か…。」
重宗ら伊沖隊の隊員の返事を遮ったのは悲鳴だった。
「きゃああああっ!!!」
昭夫「王宮の中か?!」
成実「今のは…遥?!」
成実は呟くと中庭の入口へ走り出した。
謎の男はその動きに合わせ、迎撃するように剣を構えた。
それよりも早く、正輝は謎の男へ直進し、刀で謎の男の剣に組み付いた。
正輝「行け!成実!」
成実は何も言わず入口まで一直線で駆け抜けた。
正輝「悪いな。うちの隊長は見境なくなる時があるんだ。」
男「それを見越して俺に組み付き、隊長を一直線で行かせるその素早さ。いいチームワークだな。」
盛也「なんだよ。喋れるんじゃねぇか。」
正輝が男の右手と剣を塞いでいる。盛也は、素手の左手側から切りかかる。
男「ふん!」
謎の男が身体に力を入れると、正輝と盛也は弾き飛ばされた。
男「さぁて。かかってこいよ。」
成実「はるかぁぁ!!」
成実は王宮を駆け、悲鳴のもとを探る。
成実(下から聞こえたな…。このへんか?)
ほどなくして、悲鳴の元は見つかった。
成実「遥!」
遥「…成実?!」
遥は無事だった。柿崎隊も一緒にいる。
成実「はぁ…なんだ。」
成実は遥の無事を確認し、胸を撫で下ろす。そこで異変に気づいた。
成実「こんなところでなにを…?てか、こいつは?」
柿崎隊は宝物庫の前にいた。そして、彼女らの側には国軍の男が1人、倒れていた。
景鈴「それが…。ネムリさんに呼ばれてここまで来たんだけど、ネムリさんはいないし…。突然襲われて…。」
成実「そうか…。柿崎隊長の刀でこうなったわけか…。」
景鈴「例によって、全然気づいてないんだけどね…。」
景鈴は苦笑いを浮かべた。
成実「ネムリさんは俺らといたんだが、同じように急襲されて殺された…。国軍の謀反か…?何が起きてる…。」
成実が考えこんだとき、廊下の突き当りから叫び声が響いた。
「いた!貴様ら!」
駆けつけたのは国軍だった。5人の国軍が臨戦態勢で近寄る。
隊長「貴様ら!投降しろ!」
成実「な、なんだ?!」
隊長「そこにやられている団員はなんだ?!やはり人間め…!」
景鈴「違います!彼が先に襲ってきたんです!」
成実「そうです!中庭でも、俺らも襲われて…。国軍に、何かしようとしてるやつがいる!」
隊長「信じられるか!人間のことなんて!」
成実「なんだ?昨日までと全然様子が…」
隊長「これも知らないと言うのか!」
隊長は端末の画面を見せてきた。
成実「っ!は…?」
成実らは言葉を失った。
『アレストラ』と隣国の国境付近の街では、轟音が響いていた。
「うわぁっ!」
「や、やめろ…ぐうっ!」
「やられるだけでたまるか!」
街に暴徒が現れたとの通報を受け、付近の警察組織が駆けつけ応戦しているのだが、状況は芳しくない。
エネルギー弾が降り、民家にも被害が及ぶ。
「人間が!お前らは、同盟を破るのか!」
景鈴「これは…岩橋隊…?!」
隊長「人間が我らの国で暴れている!これを見せられて、この状況で、貴様らの言うことを信用しろと?!」
成実「こんなの…何かの間違いだ!岩橋隊は先日、『クロライド』に拉致された!操られているんだ!報告書も、データも共有されているはずです!」
隊長「それが人間界の作戦で、偽装されているんだろう!いや、『クロライド』とグルかもしれない!」
成実「そんなバカな!」
成実と隊長の押し問答が続く。
隊長「とにかく、何も信用できない!殺しはしない。拘束する!」
一触即発の空気を破ったのは、景鈴だった。
景鈴「分かりました…。私たちの無実が晴れるまで、拘束してください。ただし、私たちは嘘を述べていません。なにか良くないことが起こっていることも念頭におかれてください。」
景鈴は両手を挙げ、投降を示した。
隊長「うるさい!戦闘体をとくんだ!捕らえろ!」
柿崎隊は戦闘体を解除した。
成実(まずい…。解除して大丈夫なのか…。暴れだしたりしないよな…俺…)
生身で魔界の空気に触れ、また魔力が暴走することにビビりながらも、成実は戦闘体を解除した。
成実(よかった…。何も起こらない…)
国軍が成実らに銃口を向け、牢まで誘導する。
国軍「入れ!」
成実「くっ…」
成実らは、窓もない地下室へ入れられた。
最後尾は遥だった。足取りはふらつき、顔は上気して息を切らしている。
遥「はぁ…はぁ…」
成実「遥…?」
国軍に連れられ、遥は地下室へ入ってきたが、連れてきた兵士は遥を凝視し、生唾を飲んだ。
国軍「お前はこっちだ。」
成実「おい!遥!」
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