6歳で死んでしまう少女は 精霊さんと共に生き延びる。

マキマキ

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第23騎士団

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私たちは、お兄様の亡くなった友人、第23騎士団の駐屯地付近の川に向かう。灯籠と花火を見に行く為だ。

お兄様の馬に私も一緒に乗せてもらう。
ポルカは、私たちの上空を飛んで行く。
ゴリチャンは川を泳いで行くらしい。

花火は王都付近だけでなく、
全地域で平等に盛大に。打ち上げられるそうだ。

私は
「そんなにお金使って大丈夫?」
と聞くと

王太子アルベルト殿下は、

王宮でパーティーを開かない代わりに、無駄に輸送費がかかる高価な食材を仕入れる費用や装飾代が浮いた上に、経済発展を遂げた為、微々たるものらしい。

途中で、ホットドッグ屋さんに寄った。

第23騎士団に教えてもらった、行きつけの店らしい。


「メアリーさん注文したものは出来てますか?」

「あー。クロードかい。出来てるよ。これから孤児院とあの子達の灯籠流しに行くんだろ?

私の分まで、よろしく頼んだよ。

本当に気の毒な子達だよ。

まったく。ただ、チョット犬っぽかったり、猫っぽかったりしただけじゃないか。

私の亭主なんて馬面なのにさ。なにが違うんだい!」

と怒りながら、エプロンの端で涙を拭き取った。

「おい誰が馬面だって!俺のような渋いイケメンがわからないなんてお前の目は腐ってるぞ!!お前だって、猪女将だろ!!」

「なに寝ぼけたこと言ってんだい!お前がイケメンなら、世の男は皆イケメンだよ。顔洗って、出直しな!!」

女将さんはそう言いながらお尻で店主さんを吹き飛ばす。


お兄様は、そんな店主さんとおかみさんのやり取りに呆れながら

「マリーベルも食べる?」と聞いてくれた。

私はウンウンとうなづく。


するとおかみさんは、

「まあ、なんて可愛い子なんだい?!
この子が、前言ってた6歳になったばかりの可愛い目が離せない妹かい?」

お兄様を見ると、恥ずかしそうな照れたような顔をしている。

おかみさんは、ホットドッグを手早く作り私に渡してくれる。

そして
「特別だよ!」
とウィンクしてくれた。

ホットドッグを見ると
可愛らしい包紙に
可愛い犬型のパンに大きなソーセージとレタスとチリビーンズが乗った本当のホットドッグだった。

おおー。前世ならインスタ映えだ。可愛い。
喜んでいると、後ろから

他の騎士団員達たちが、

「ずりー。俺らそんな可愛いホットドッグ食ったことねーぞ!」

おかみさんは

「あんた達は、腹の中にすぐいれっちまうだろ。可愛いもへったくれもあるかい!!これでも、食ってな!!」

っと、大量のホットドッグをドカンと置く。


どこからともなく、ポルカが現れて、

「食っていいのか?食っていいのか?」

と周りに確認して、
そのホットドッグを嬉しそうにほうばる。

あいつ、あんなに屋台で食ったのにまだ食うか!

お兄様は、私が犬型のホットドッグを食べて喜んでるのを見て、私の頭を撫でて、

「良かったな。」

と微笑む。



食べながらお兄様は、第23騎士団について話してくれた。


「これから向かう川は第23騎士団の管轄の村の近くにある。ダラー川だ。

第23騎士団は獣人部隊だった。

マリーベルが蝗害に気がつくもっと前に、感覚が優れた23騎士団たちは蝗害に気がついていたんだ。

蝗害発生原地域で、草むらの中から草を食べる音がいつもより多い事に気がついたそうだ。

蝗害が起こり、魔物が発生しやすい地域だった事から、魔物化した蝗になると予測していたんだ。

マリーベル、獣人が迫害を受けているのを知ってるか?」

私は、知らないのでブンブンと首を振る。


「そうか。獣人の背景を知った方が分かりやすいかな?

獣人は、アチコチの国でかなり昔から迫害を受けている。

理由は、人間よりも感覚や運動神経などが優れている為に、人間が恐れてしまった為だ。

そして、自国を追われて無国籍となった。

マリーベル。

無国籍になった人はどうなるか知ってるか?

身元を補償するものがなく、仕事につく事も出来ない。

自由に海外を行き来できない。
医療も受けられない。
教育も受けられない。
税金で動いているサービスは何も受けられなくなる。
国際的な機関も動く事は難しく、門前払いされる事もあったと聞く。

それ故に、人身売買や臓器売買等犯罪に巻き込まれる事もあった。

我が国は、戦争でたくさんの兵士が必要となった。身体能力が優れた獣人を国籍と引き換えに第23騎士団に引き入れた。

他にも、働き手の少ない、きつい、汚い、給料が少ない仕事の働き手になってもらう為に、国籍と引き換えに国に招き入れた。

彼らは、国籍を貰いこの国の仲間になれたと始めは喜んだ。

しかし、同じ労働をしているにもかかわらず、不当に安い賃金で働かされ、奴隷同然の扱いを受ける事も多かった。

国は引き入れるだけ引き入れて、法の整備や、受け入れ先の教育をする事は無かった。

言語や文化の理解が互いに出来ておらず、そのせいで差別は残ったままだった。

彼らは国籍を失いたく無い為、それでも真面目に働く者も多かった。

その一方で、酷いイジメにあったり、雇い主に採取され、耐えられなくなって逃げ出す者もいた。自由に海外に出国出来ない事から、国内で犯罪に手を染める者もいた。

そういった事から、獣人に対する嫌悪感が高まり、真面目に働く獣人に対しても差別は一層強くなったんだ。」

すると、王太子アルベルト殿下は

「第23騎士団の団長だったレオンと俺たちは親友でよく第2騎士団と合同訓練をしていたんだ。」

他の第二騎士団の隊員は

「初めは怖かったけどな。優しくて、クソ真面目な仲間思いの奴らだったよ。」

「あいつらは、食いしん坊でな。此処でよくホットドッグを取り合って食べたな。強くて、勇敢で、魔物も大きな物をバンバンと狩っていた。きっと、ゴリともすぐ仲良くなっただろうな。うっうっ。」

泣き出す者もいた。

お兄様は、

「第23騎士団は、早々に気がついた蝗害を上層部に報告した。

しかし、上層部はまともに取り合わなかった。

彼らは何とかしようと、発生地域を特定し、対策しようとした。

しかし瘴気に当てられた魔物化した、大量の蝗を確認し、自分達では手に負えないと判断。上層部に応援要請と、住民の移動を開始した。

調書によると、

住民は
「そう言って、わしらをどかした後に泥棒するんじゃろ!あっちに行け!獣如きが!」

「お前らのせいで、俺たちは仕事につけず貧しいんだ。国から出て行け。」

「この万引きはんめ。この前、獣人にやられたんだ。お前らも一緒だ。信用できるか!」

等と行って、避難しなかったと書かれてあった。


そのせいで、住民の達は逃げ遅れ、蝗に取り囲まれた。

第23騎士団は、住民を守る為に戦った。住民は逃したものの、騎士団達は蝗の群れの中心に取り残されてしまった。

彼らは、銃や魔法を使う近くの駐屯地の第5騎士団に応援を頼んでいたが、上層部はこれを無視し、応援を頼んでいなかった。

一方で俺たちはマリーベルから報告を受けて、各地域の確認を行い手順に乗っ取って上層部に騎士団の派遣要請をした。

上層部は全域の貴族の騎士団に報告する事もせずに、「平民や獣の部隊がいるのに、高貴な自分達が命の危険のある任務に行く必要はない。」とのたまい、

自分達が現場で指揮する事を拒否した挙句、貴族のパーティーに出席し、違法賭博をしていた。

魔獣退治では必ず必要な第3騎士団と平民の第22騎士団以降の部隊が招集された。

しかし、第23騎士団の応答はなかった。

上層部の書記官があまりの酷さに、上層部の所業を俺たちに密告してくれた。

俺たちは、第5騎士団に至急応援に向かうよう指示した。

事態を知った第5騎士団は慌てて現場に駆けつけた。

マリーベルが知ってるように、
我々では現状維持が精一杯だった。

蝗が移動した後、彼らの金属のボロボロになったネームプレートと剣そして、沢山の血痕があったそうだ。

第5騎士団の団長は「もっと、早く来ていたなら、彼らの退避ぐらいは出来たのに。」と言って泣いていた。

それが第23騎士団におこった出来事だ。」


周りの第2騎士団の団員は、話を始める前はおちゃらけていたが、この話をし始めると険しい顔をしていた。

手を握り締め、悔しいのを堪えている感じだった。

私は、国籍がなくなるとどういうことになるか考えても見なかった。

そして、差別が生み出した結果に唖然としていた。




ポルカは

「人間とは愚かだな。
我からすれば、人間も動物もそう変わらん。
皆懸命に生きている愛しい生き物だ。


本当に自分が何でもできる。何とかなると思ってる人間なら、差別なんて生まれないんだ。

ほれ、人間はちゃんとペットという動物とは絆を築けている。

種別を超えて付き合う能力があるんだ。

怖がって付き合えば、差別なんて無くならん。

互いに、この人は安全だと認識するそこが大切なんだ。

ビビるから徒党を組み、不安を煽る原因と思われる者を排除する。

怖がり現状維持にこだわるから、変えようとする人間を遠ざけ嫌悪する。

どうせ変わらざるえないなら、自ら変えようと動けば怖く無くなるのにな。」

私は何とも言い難かった。

私自身も、今安全であれば、現状維持を選択し、あらがうだろう。

ああ、そうか差別とは恐れだったのかもしれない。


前世の歴史としてテレビで報道されていた内容を思い出した。

シベリア孤児の受け入れ
エルトゥールル号遭難事件
板東捕虜収容所

受け入れ側の
彼らは、恐れと戦いながら
それでも、現状を受け入れて、
自ら変化に飛び込んだ。

ポルカの言葉で気がつく。
お互いに知り合い、お互いに恐れを無くす。
それが差別をなくすポイントなんじゃないかと。


すると、騎士団の一人が

「アルベルト副団長!皆食べ終わったようです。」

「クロードそろそろ行くか。」

「ああ、そうしよう。」

お店を出る時、隊員の一人が

「家族を戦争や犯罪に巻き込まれて失った、アイツらには弔う家族が居ないんだ。俺たちが行ってやらないとな。寂しいだろ。」


と言っていた。
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