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皇后様のお茶会ーソードー

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俺たちは急いで王宮へ向かう。

馬車が遅れて、お茶会の開始時間に間に合わなかった。

王宮につくと、皇后様が
ジークを迎えた。


皇后様は、ジークを抱きしめる。


「母上、ただいま帰りました。」

「お帰りなさい。」

そして、お茶会の会場に案内される。

マリーベルはどこだ!
今日こそは!
おっいたぞ!
目立つな!何だあの格好は?


マリーベルは、ハリネズミの形をしたお菓子の前でしょんぼりしていた。

あれは第二王立学園の制服で来てるのか?

父上はドレスも買ってないのか?

どうなっている?

でも、可愛いな。

ヒラヒラした、ピンクのドレスもかわいいが、マリーベルはシンプルでこちらの方が可愛らしい。


チェックのスカートにブレザーを着て、
スカートと同じ柄のリボンが付いている。


俺はマリーベルに誕生日会でのことを謝る。

ジークも、やってきて謝た。

マリーベルは、許してくれたが、上の空で、しょんぼりしていた。


マリーベルともっと話をしたかったが、
俺たちは貴族の令息達に囲まれてしまった。


そこで、マリーベルのことを聞く。

どうやら、あのハリネズミのお菓子はマリーベルが手土産で持ってきたものらしい。

その後、俺は今までの態度を後悔する羽目になる。


「お前の妹はやっぱり、ゴールドマン公爵家に相応しくないな。だからいつもの様に注意してきたんだろ!」

「所詮、妾の子だろ!あの手土産は無いぜ。」

「親は公爵令嬢なのにな。妾の子ってだけであーも違うんだな。」

「ソードどうした。お前だって嫌ってただろ。」

「あんな平民の食う芋菓子なんて俺たちが食うわけないだろ。」

「何だよ、あの制服!第一王立学園に落ちた妾の子のくせに。」

「おっ?!早速、令嬢たちの教育を受けてるぜ!妾の子の分際でこんなとこに来んなよ。」

クスクスと笑う。


俺は、マリーベルが令嬢達にいじめに遭っているとは知らなかった。

マリーベルは妾の子ではない。国王より許可を受けた、正式な婚姻のもと生まれた子なので、正式な公爵令嬢なのだ。

法的に出生届も存在している。

周りにそう勘違いさせたのは、俺や父上の態度だ。


妾、妾と協調するこの令息達の背景を考える。

家柄や地位は高いが、
家庭環境があまり良くなく、

父親が妾の家に入り浸り帰らない子、

母親が亡くなり、父親と継母が継母から生まれた子ばかり可愛がる子

父親が愛人を作り、母親に虐待まがいの教育を受けてる子

両親はいるが仲が悪く、どちらの親にも相手にされず、祖父の家で育つ者

などなどだ。

ジークはそんな姿を見て、

「俺は、マリーベルに謝罪したんだよ。
妾の子は、本妻の子に気を遣えと言ったんだ。

俺は間違ってた。

そもそも、マリーベルは妾の子じゃない。
婚姻関係を結んだ公爵令嬢だ。

でも、そんな事が問題じゃ無い。

本妻の子に気を使うのは、妾の子がすることじゃ無い。

本来は、親達だろ!
子供の気持ちを考えるべきだ。
出来るだけ同じだけ愛情を注ぐべきだ。

事態を複雑にした親達が、お前らに気を使い大切にするべきだ。

妾の子も責任を持って接するべきじゃ無いのか?

俺は、これ以上マリーベルの悪口は聞きたく無い。

よく考えてくれ。
お前らの行動は、この国にとって良いことなのか?

お茶会で、陰口を叩いて、そのお茶会はみんな楽しいものになるか?

噂されるから、こういう会は行きたく無いと思うことはないか?

俺はある。だから、俺はみんなが楽しめる会にするために、発言に気をつけることにした。」

令息達は黙った。


俺は、ジークと友人になって良かったと思う。

間違いを間違いだったと認めるのは、難しい。

そして、意見がちがうからと切り捨てず、

正しい方向性を皆んなで考えようとする殿下は、

とても重たいものを背負っている様に見えた。



俺は、マリーベルを目線で追いかける。
前はマリーベルのことを知ろうとも思わなかった。

令嬢達が壁になり、皇后様や大人達が見えないところで、マリーベルの手土産を足で踏み潰していた。

俺は腹が立った。

マリーベルは、
お茶会や誕生日会などで
いつも泣き喚いたり、令嬢令息たちに
怒鳴りつけたり、
他の貴族に高圧的に接していた。

俺は今日初めてその理由を知った。

俺はいつも、
「お前は、ゴールドマン公爵家に相応しくない。」

とか偉そうに言っては、注意し、父上に報告して、マリーベルはいつも怒られていた。

俺はなんてバカだったんだ。

俺の態度が、周りの令嬢、令息たちの態度を助長していたと後悔する。

ジークも同じで後悔している様だ。


でも、いつものマリーベルとは違った。
じっと手を握り我慢していた。
お茶会を主催した、皇后様の面子を守るためだと俺は理解した。


一人の令息が、俺に話しかける。

「あの芋菓子
さっき頂いたのですが。

美味しかたですよ。

芋でも、種類が沢山あります。
安いものも有れば高額のものもあります。

多分あの色とねっとり感のある種は、最近海外で高額で取引されてる芋だと思います。

卸している農家さんは1件だけです。
なので手に入れにくい品物となってますね。

私の父の顧客のベルトランの王子が
妹さんの王女が友達から貰って
食べさせてくれたと自慢してましたよ。

焼いただけの、
焼き芋だったそうですが、
余りの甘さに感動して、
興奮して私に芋の風味を語ってくれました。

なのでベルトランではサツマイモの焼き芋が、今高級お菓子として取り扱われてます。

更に、荒地でも育つサツマイモは飢饉や戦争の際の食糧として注目され、

国力を上げて研究されている今注目の商品です。

ベルトランの国王は王女の友達にとても感謝の意を示して、

芋と共に世界の繁栄と国が見えたと、国旗の象の頭につけてる月桂樹を芋の蔓に変えたそうですよ。

私は、ここんな良いものを食べれて今とても感動してます。

だから、革新的な最高の品だと思いますよ。

戦い方って色々あると思いますよ。

情報を聞いただけで
芋の印象が変わるでしょ。」

そういいながら、俺たちに笑いかける。

確かに!

俺は家に帰れば、マリーベルのグルメな話を使用人達から聞いている。

その度に、食べてみたいと思った。

だから、マリーベルが持ってきたあの手土産をすごく食べてみたいと思う。

そうか、他の人はそんなマリーベルを知らないんだ。

俺に話しかけた、令息は、バーミリオン男爵の嫡男ヒスイだ。

俺たちより3つ上の学年で、学園での先輩だ。

宰相をしている父上は、彼を俺以外のジークの側近候補として、考えてると言ってたのを思い出す。

ついこの前まで、授業で魔法が暴発した生徒に巻き込まれ、大怪我をして寮で寝込んでいたと聞く。

痙攣を起こして一時はやばかったらしい。

破傷風と呼ばれる病気の様で、父親の男爵がツテを辿って、ベルトランから医師を呼び、ペニシリンと言う薬で治ったと聞いた。

父上が側近に彼を考えるわけがわかった。
情報力の強さと使い方がうまいんだ。
だから、商売で強い。


マリーベルのシュンっとした姿を見ると、俺は居ても立ってもいられなかった。

ヒスイの様にうまく伝えられるかわからない。

情報を引き出せるかわからない。

でもやってみる。

俺は、マリーベルに話しかける。


「マリーベル。お前がグルメなのと、植物に対する効能をよく知ってるのを聞いたよ。お前頑張ってるんだな。

兄として誇らしいよ。

コレは、どんな料理なんだい?可愛らしいハリネズミだね。」



マリーベルは、俺の言葉に反応してくれた。

「このお菓子はサツマイモと言う、甘い芋で作られてます。

サツマイモは
品種によって、60種類あります。

風味はジャガイモというよりは、栗に似ています。

最近話題になったお肌に良いビタミンCは林檎の5倍。さらに、サツマイモのビタミンC
は熱でこわれにくいと言われています。

お肌をケアする他の栄養がたくさん入っている為、肌荒れや便秘に効果があります。

今回の品種は、砂糖を使わなくても甘いし、素材のねっとり感を生かして、バターは少ししか使ってないので、他のお菓子よりは太りにくいと思います。」


えっ?
と周りがざわつく。

ご夫人達はここ最近ビタミンCが肌に良いと知り、その言葉に敏感になっている。

そして、他のお菓子より太りにくいと聞いてこちらの様子をチラチラと伺っている。

俺はお菓子を齧る。
なんだ?なんだ?うますぎだ!

俺は情報とか何も考えず、

「本当だ!モンブランに似てるけど、甘味が強い!これはストレートの紅茶が飲みたい!コレで砂糖不使用なんて信じられないよ。」


ジークも俺の意図を察して食べるが、
本当に美味しかった様で、目を見開いた。

「コレは!
美味い!砂糖不使用なんて本当なのか?また、焼いたことにより、香ばしいぞ!そして、中はしっとりだ。
こんなに甘いのに他の料理より、ヘルシーなんて本当かい?」



皇后様は、向こうで何やら叫んでいる。

「何ですって?
マリーベルちゃんがお菓子を持ってきてるですって!

あの子のお菓子は美味しいのよ!

バイオレットちゃん教えてくれてありがとう!

さあ食べに行くわよ!

えっ?

もう食べた?

しっとりして、甘くて美味しかった?!
マリーベルちゃんが、別でバイオレットちゃん用に菓子折りにしてくれたやつを10個も食べちゃった?
お腹いっぱい?
そして私への手土産は後3個しか残ってない?

どうして、みんなに振る舞ったのよ!
私への相談は無かったわよ!
えっ?前相談して怒られた?
いつもそうしてるから?

そう。そうね。今度から気をつけます。

なんて事?!
急がなくては!」


皇后様は、ドレスを履いているので、速歩で物凄い速さでやって来た。

その表情はちょっと怖かった。


「チッ!あと一つしかないじゃない!」

最後の一つを食べると、皇后様は暫く感動して目を見開いていた。

皇后様?今舌打ちしなかったか?まあいいや。

そして、
マリーベルに芋についてあれこれ聞き出し、
苗のオジサンへ交渉のプロフェッショナルをすぐに送れと指示がだされた。


その後、様子を伺っていた貴族達はこぞってマリーベルの芋けんぴと言うお菓子を取り合っていた。

皇后様は、争奪戦に勝ち、優雅にお茶を飲みながら、芋けんぴをポリポリと幸せそうに食べる。

俺とジークは、マリーベルに
「アレまだある?」

と聞くと、嬉しそうに

馬車に可愛くラッピングした

袋を取りに行き、

ニッコリ笑い渡してくれた。

その笑った姿は可愛かった。



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