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魔獣狩り4-ベリル-

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俺達の仲間や、
一緒にやってきた他のチームは

温室に入った途端異変に気づく。

おかしい。

人工の魔物が襲ってこない。

「なあ、ベリルおかしくないか?」

「魔物が全部止まってるぞ!」

「おいなんか聞こえるぞ」

俺たちは耳を澄ます。

「ヴーッーヴーッ」

蔦の丸い塊から聞こえてくる。

手がズボッと出てきたが、
蔦でもとに戻された。

やな予感がする。

これ、兄が昔言っていた

迷宮蔦状ピンギキュラじゃないのか?

本物なのか?!

だとすると、俺は温室の入り口に駆け寄る。

蔦で覆われて出られなくなった。

まずい!

俺は周囲の皆んなに

「背後を守って!構えるんだ!

これは、本物の魔物だ!捕まったら死ぬぞ!」


俺たちは必死で、襲いかかってきた蔦を、剣を振り回して切る。

中には泣き出す子もいたが、

俺は、
「泣いてもいいから剣を振れ!振らないと死ぬぞ!」

と指示を出す。


何とか温室内部の蔦は切れたが、

温室の外は蔦だらけだった。

蔦にぐるぐる巻きにされていた人も救助した。

女性のフタッフの様だが、意識がなかった。

首や手足は閉められていた様で、紫になっていた。

それが俺たちを怯えさせた。

蔦のせいで外に出られない。

「これだけ、大きな魔物がいれば、
主催者側も時期異変に気づく。
ここで、救助を待とう。」

俺たちは、体力を消耗した上に、

汗をかいていた。

薄らと風が吹く。

暫くすると、俺たちは

汗が乾き寒くなった。

俺は、マリーベル達がリュックを背負って入った理由がやっと分かった。

自然を相手にするときは、服装、着替え、食料、飲み物を事前に準備しておく事を今更ながら大切だと悟った。

彼らが常に何かを背負って戦う練習をしていたのは、リュックを背負いながら戦うためだったのだ。

おそらく、リュックより重いものを背負っていたのだ。


今までは、本物の魔物じゃなかったから対応できたんだ。

俺は自分の甘さを思い知った。

俺たちは身を寄せて、ガタガタと震えながら、救助を待つ。

蔦は、温室に侵入しようと伸びてくる。

その度に剣できる。

だんだん気力が無くなる中、

俺は、

「大丈夫だ!絶対助けは来る!諦めるな!」

何度も何度も声をかけた。

でも、段々とそれも出来なくなった。

最終的には皆んな黙って、膝を抱えて寄り添って助けを待った。

シクシクと俺の仲間の一人が泣く声が聞こえてくる。

俺は何も言えずにいた。


すると、いきなり

光が指す。

俺たちが馬鹿にした

鎌を二刀流にしていた、ライという名前の男の子が蔦を猛スピードで刈て、光を通したのだ。

その後ろを、刀削麺を切る包丁で、襲ってくる蔦を切る男の子!

マリーベルはそれを包丁で的確に、
同じ大きさに切る。

その下で、すかさず刈った魔物をゴミに出す様に紐で纏める子達。


マリーベル達だった。

「ベリル大丈夫か?」

ジャックスが声をかけてきた。
俺たちの様子を見て、

「汗かいて冷えちゃったんだね!」

といって、防寒着を着せてくれた。

あったかい。俺アイツをいじめてたのに。

そして、ジュースと甘い黒い餡子玉というお菓子を食べさせてくれた。

それは、とっても甘くて美味しかった。
体が少し軽くなった。

周囲にはマリーベル達と戦ってきた子供達が皆んないた。 

50人ぐらいかな?

体力を温存しながら、順番で戦っているらしい。

俺は安心して泣いてしまった。

一人で指揮を取るのは辛った。

皆んなを励ましていたけど、
助けが来なかったらどうしようって不安だったんだ。

皆んな不安そうだったから、
俺が頑張らないと死んじゃうって思ったから。

「ゔっゔっ。ごめん。おら酷いことしたのに。俺お前らがぎで、安心じんじたんだ。」

すると、アップルと言うお姉さんが
僕の頭を撫でて、

「よく頑張ったわね!
よく判断したね。」
そう褒めてくれた。

マリーベルは、

「緊急時はお互い様でしょ!」


他の子達が俺たちに話しかける。

「俺も泣いちゃったんだ!」

「君だけじゃないから大丈夫だ。」

「あのバイオレットって子に、泣くな!水分とエネルギーを消耗するなって、怒られたんだ。」

「でも、泣いちゃうよね。」

「あはは。お前は泣いても戦ったんだろすごいよ。」

「君達には、驚かされるよ。俺はうダメだって思って、若干諦めてたんだ。助けるだけでなく、的確に、救急治療してくれたおかげで助かったよ。

君達は、エルニシアを助けてくれたんだね。ありがとう。

蔦で圧迫されはしたけど、だいぶ引いてきてるね。

気絶してるだけの様だ。助かってよかった。この子は俺が運ぶから大丈夫だよ。」

「学校で、応急処置の方法を習ってたからな!俺の家業の建築現場でも教えてるんだぜ。」

「叔父さん、首絞められてて、紫の顔して、目から血を流しながら、助けを求めてくるんだもん。

こえーよ。」


「えっ!叔父さん?!俺のこと?俺は20歳だよ!」

「えっ!時々、「ヨッコラセ」とか言って立つじゃん!じじ臭いから30過ぎてると思ってた。」

叔父さんはショックを受けた顔をする。

周りの子達は大笑い。

みんなの優しさと何気ない会話が胸に刺さる。


すると、バイオレットは、

「さてと、3階へ向かうわよ!

3階の花を刈るのよ!そうすれば、私やマリーベルちゃんの魔法やスキルが使えるわ!叔父さんも!」

「イヤ俺は、20歳で・・・。叔父さんでは・・・。」

「私たちから見れば、叔父さんよ!何がいけないの!」

「バイオレット!お兄さんって言ってあげようよ。可哀想だよ!」

何でだろう、
状況は、今も最悪なのに
こいつらと居ると、何とかなる気がする。
コレが本当の強さなのかな。
一緒にいると心強い。

皆んなの顔は笑顔が戻っている。
俺も、何気ない会話に笑ってしまった。


ボルドという高学年のお兄さんは、

「君達も、体力が戻ったら手伝ってもらっていいかな?君達は優勝するくらい剣が得意って聞いてるから、手伝ってくれたら助かるんだ。

怖かったら、内側に入って大丈夫だよ。
様子を見て、出来るって思ったら声をかけてくれる?」

俺たちは、うなづく!



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