6歳で死んでしまう少女は 精霊さんと共に生き延びる。

マキマキ

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救助隊-シリル-

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俺は王宮からの要請が届き、

弟が剣術大会で、事件に巻き込まれた事を知った。

全騎士団の、招集が行われた。

俺も王宮の第35騎士団団長として、招集されている。

俺の幼馴染のいる第2騎士団とタグを組むことになった。


「久しぶりだなシリル!シリルお前の弟も、中にいるらしいな。」

幼馴染の王太子アルベルトが聞いてくる。



「アア、毎年参加するよう親父から言われてるからな。リストを見てやっぱりと思ったよ。

会場に入ってからもう4時間が経っている。

ある程度は俺と同じで訓練されているから大丈夫だと思うが、

と言ってもまだ低学年で8歳だ。

体力と気力がどこまで持つかが鍵になるな。

早く助けないと。」

俺の弟ベリルは、俺が第一騎士団から追い出された日から俺と口を聞いてくれなくなった。

ベリルが、まだよちよち歩きの幼い頃は、

「ニイニ。」と言いながら俺の後をいつも付いてきた。

俺が剣を振っていれば、そばで枝を拾って剣を振る真似をする。

可愛い弟だった。

ベリルと話さなくなって、数年経つ。

今でも、可愛い弟だ。

親父に、

「お前は強い人間になれ。イエローなら強くないとな!」

そう言われるたびに、弟の苦しそうな顔を見るたび、心配になる。

クロードが俺に話しかける。

「俺の妹も居るみたいなんだ。
魔法は得意なんだけど、今回は使えない。
アイツが、剣を触ってるとこなんて見た事ないし。

早く助けないと。

お前とタグが組めてよかった。


お前の騎士団は、今では魔物狩りのプロフェッショナルだからな。

今回の魔物は俺たち経験がないんだ。」

「やっぱり、あのリストの名前はお前の妹だったんだな。ジークやソードは?」

アルベルトは

「俺たちの弟は、ゴールドマン公爵領の魔物狩りに慣れすぎて、つい魔法を使ってしまう様でね。

剣術の先生の先生に、「今は剣術の時間です。」って、しょっちゅう怒られてるよ。だから参加出来ないんだ。」

「弟は、昔のお前らそっくりだな。お前らの弟が被害に遭わなくてよかったよ。」


クロードは、

「もう、大丈夫みたいだな。お前が引きこもった時、みんな心配したんだ。」

「ああ、いい人に出会えたんだ。
いろいろ吹っ切れたよ。

第一騎士団にいた時は、
強くないと、切り込まないと、俺はトップに立たないとって、無駄に肩に力が入ってけど、

今は、いい意味で力が抜けてるよ。」



「あの頃のお前は鬼神のような顔してたからな。カッコよかったけど、なんか沢山の物を抱えてる感じだったな。痛々しかったぜ。」

アルベルトは言う。


話していると、


「シリル隊長!鎌部隊とスコップ部隊準備が整いました。」

「よし、指示があり次第直ぐに建物内部に入るぞ!」

「ハッ!」

隊員全員が俺に敬礼をしてくれる。

彼らは全員平民だ。

魔法が使えない者が多いから、
武器と体を駆使して闘う。

幼い頃から剣に触れることが出来なかった者が多数だ。
隊員になって、初めて触った奴も多く、
剣が手に馴染んでない者も多いのが現状だった。


それでも、配属直後に魔獣が出たら戦わないといけない。

だから、あの事件以降

35騎士団員は鎌とスコップなどの身近な物を武器にしている。

馬鹿にされることもある。

だが、剣よりスコップの方が耐久性が高く、接近戦では剣にも負けない技術を身につけている。

スコップの持つところは、
短くしている為、小型でコンパクトだ。
離れた場所から大勢で投げることで、魔物に重傷を負わせる事が出来る。


鎌は、剣よりリーチが少なく、狭い場所でも切り込みに行ける。

魔物は大抵、狭い場所に人間を誘い込む。
アイツらは俺たちが、狭いところでは剣で戦えない事を知っている。

そして、鎌はブーメランのように投げる事で弱い魔物を一度に沢山瞬殺する技術を身につけた。

俺たちはありとあらゆる身近な物を何でも武器にするよう訓練した。

体を動かすだけでは無い。魔物の知識を身につけ、どう闘うか日々皆で論文を読めるように読み書きの教育を設けた。

皆んな必死に食らいついて学んだ。

獣系、植物系、虫系、土系、ゴースト系、グループに分け論文や他の地域であった魔物の情報を纏めて訓練を自ら考え、実践している。

それを互いに教育し合っている為、皆どの魔物にも精通できている。

現在我が隊員の魔物退治での死者数は0だ。




俺はこの隊に来たきっかけを思い出す。

俺は、当時第一騎士団で自分が戦ったことのないS級ドラゴンと戦った。

今思えば知識不足。戦い方を知らなかったんだ。

訓練地付近の住民から助けを求められ、駆除と避難の援護を頼まれる。

ドラゴンの足を止める為に、皆んなでドラゴンに掛かっていった。

しかし、戦ったことのないドラゴンに火をふかれ丸焦げになる隊員。

腕をちぎられて、助けを求めてくる隊員。

踏み潰されて肉塊となった隊員。

俺たちはその光景に死を覚えた。

どうやって戦えば良いのか分からず、
住民を庇いながら、

俺は全員に、

「全軍撤退!逃げるんだ!逃げろー!!」

そう指示を出して、
逃げる事に集中した。

怖かったんだ。


家に帰ると親父に、殴られた。第一騎士団員からは、白い目で見られた。

「お前は、それでもイエロー公爵家の人間か?!なんて不様なんだ!怖くて逃げ出しただと!

第一騎士団は、魔物にも負けない強い部隊だ!お前のせいで、騎士団の面子は丸潰れだ。

お前は、我が騎士団には要らん!どこか他所で拾ってもらえ!」



第一騎士団員達には、

クスクスと笑われていた。

「いいキミだ。」

「俺アイツ同期だけど、昔から気に食わねーんだよな。」

「お前の彼女がシリル副隊長の顔が好みだからだろ。」

「ドラゴンに火を吹かれて、尻餅ついてたらしいぜ。」

「憧れの副隊長があんなんだったなんて幻滅だと思うぜ。」

「所詮、親の七光だろ!ちょっと顔がいいからって調子乗ってたんだろ!」

「お前、副隊長と一緒に討伐に行ったんだろ。」

「副隊長が撤退って言ってるからそれに従ったまでだ。俺はまだ戦えたぜ。」

「実力がない奴がいると迷惑なんだよ!」

そう噂されるようになった。

そして、俺の指示を聞かなくなった。

俺の居場所はだんだんと無くなっていった。

家に帰れば、使用人たちにまでみくびられた。

親父には顔を見せるなと言われた。

俺の心はさらに複雑になった。毎日毎日頭の中に、俺自身を弁護する言葉がいっぱいだった。

今思うと、この状態に陥る事が、生き方を間違えていたサインだったのだと思う。

自分を弁護しないと、生きられないのだ。

当時の俺の頭の中はうるさかった。

アイツらはドラゴンと戦って無いじゃないか。

戦った奴も、みんな命からがら逃げてたじゃないか。

アイツなんて、俺より弱い癖に、まだ戦えただと?ふざけるな!

なんで、俺ばっかり。

じゃあ、お前らはどう戦ったんだ。

アイツら俺に媚びてた癖に掌返しか?

アイツの昇格試験の練習に付き合ってやったのに。

そんなアイツは、最低だ。だから、俺は悪くない。

何なんだ。あの使用人達は。何様だ。親父の腰巾着が。俺を馬鹿にするな。

親父は強すぎるんだ。
部下も言っていた。ついていけないって。

そう言ってた癖に、ソイツも俺を無視した。

俺は悪くない。アイツらがおかしいんだ。

アイツらが腐ってるんだ。


日に日に、俺は体がだるくなって

頭が重くなっていった。
何もしなくてもヘトヘトだった。

医者からは、紙に言葉を聞き出すよう言われた。

俺はノートを見て、俺は何てやな奴なんだと自己嫌悪に陥った。

死にたい。

何冊書こうが変わらなかった。



俺は、そのうち部屋に引き篭もった。
そんな中、
俺に辞令が来た。
第35騎士団員
田舎の魔物を狩る部隊だった。

行かないのなら除籍になると言われた。

簡単に言えば、左遷だ。



家にいても、どこに居ても俺は居場所がなくて、死にたいと思った。

だから、どうせならここで死ねたらと思った。


35騎士団に行って隊長に挨拶すると。
隊長は俺を抱きしめた。

「話は聞いてるよ。
誰が何と言おうと、
お前は、よく頑張った!

あの状態で、お前は誰一人、住民に怪我を負わせなかったんだ。

俺は、お前は凄いと思うぞ!

よく、撤退しながら住民を守り抜いたな。

よく帰ってきた。

辛かったな!」

その言葉を聞いて、俺は涙が溢れだした。

ああ、俺は、親父にそう言って欲しかった事に気がついた。

なんで、お前が親父に言って欲しかった言葉を言うんだ。

何で、今更。

何で。俺は頑張った。毎日毎日物心ついた頃から頑張ったのに。

俺は隊長の前で子供のように大泣きした。


俺はあの時から、
あんなに頭の中にたくさんあった俺を弁護する言葉は消えた。

何でだろうな。いい意味で、親父や第一騎士団の事はどうでも良くなった。

今するべき事に集中できるようになった。

隊で暫く働いていると、第一騎士団の欠点を知ることとなった。

第一騎士団は魔物退治の成果は高いが、死傷病率が異常に高い事を知る。

隊長は資料を見ながら俺に言った。

「おそらく、撤退判断をしてないんだ。

彼らは、必ず魔物を狩っている。

実力者が多い上に、魔物を狩る事が慣習になって、プライドが撤退を許さない。

成果が高く、貴族が多いから、死傷病が多くても、誰も何も言えないんだ。


第一騎士団は、知識、経験不足を実力でカバーしている。

本来ならお前が戦った、ドラゴンは温厚な性格だ。

怒らす事がなければ人と共存が可能であり、闘う必要はない。

ドラゴンからすると人間は食っても腹の足しにはならないし、奴らからすると魔素が少ない生き物だから人間は不味いんだ。


ワイバーンは違う。
アイツは肉類なら何でも食い、襲いかかる。

人間が森の中に集落を立てると、
そう言った魔物は集団で襲いかかる時がある。


ドラゴンが居れば大型の魔物の天敵だから、逆にワイバーンのような魔物は寄り付かない。

スタンピードも置きにくい。

だから共存する方がメリットがある。

よその国では、ドラゴンは守神とされている。


資料を見る限り、お前が遭遇したドラゴンは時期的に近くに子か卵があった可能性が高い。

だから、ドラゴンの気が立っていた。

大体のパターンはそう言ったドラゴンを、村人が生態を知らずに攻撃をかけて、ドラゴンを怒らせる。そして村を潰されるケースだ。

そう言った場合は、村から離れるのが被害を最大限に抑える方法だ。」


ああ、やっと俺のあの時に取るべき答えを知る事が出来た。


俺はそれから、隊長の元で唯の騎士として、魔物退治について必死で食らいついていった。

迷宮蔦状ピンギキュラ。

俺たちが、最短攻略法を必死で学んだ魔物だ。

奴は、人を弱らせて殺す。

死ねば奴の養分となり、さらに強くするだけだ。

最も重要な事は、生きて出る事。

戦えなくても、養分にはなるなという事だ。

早く助けてあげたいが、
準備、連絡をしっかりしないと勝てない。

それにしても、なぜこの生き物が

こんなに短期間で育つんだ。

普段は環境文官が見回ってるはずだ。

あったとしても、魔物が小さい時に駆除されてるはずだ。

何かきな臭さを感じる。







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