俺の職業、「剣」闘士じゃなくて「拳」闘士！？ ～誤字ってて気付かなかったけど、剣で最弱だった俺が拳では最強だった件～

始まる異世界での冒険

戦闘開始

「ミーサって大層なお金持ちなんだなぁ。」

感心しながら屋敷を見つめ、つぶやいた。

「そんなことはいいじゃない！さ、地下行くわよ。」

今のところ地下にいい思い出はないのだが。

地下には紛れもなく、陸上競技場が存在した。観客席まである。

「え、この世界にも陸上競技があるの！？」

「あら、陸上は知ってるのね。そうよ、試験にも陸上種目が採用されているわ。」

さすがに驚いたな。陸上と言えば、悟は元気にしているだろうか。
てか、現実世界での俺の体はどうなっているんだ？両親が心配してないといいが..

「ここで、基礎体力から魔法力、剣技まで全て鍛えるわ。試験までの2週間みっちりね！」

爽やかな笑顔でミーサが言う。
その笑顔に全身を寒気が襲った。あれ、俺死ぬ？

「さっそく、ウォーミングアップにこのグラウンド25周から行きましょうか！」

あごを殴られたように、ふらりと膝をつく。
一周400メートルだから、それって10キロってことだよな？ほとんど運動経験のない俺がいけるか？しかもウォーミングアップで？

「問題ないわ！たとえ意識が飛んでも私が回復呪文かけてあげるから！」

キラキラした瞳でこちらを向く。

はにゃ？この人は何を言ってるんだ？
ミーサの言葉に動揺しつつも、俺は歯を食いしばってグラウンドを走り始めた。

「はっはぁ、あが、うぐえげぇ、がっ」

情けない声を絞り出しながら、なんとか意識を保ったまま10キロ走り終えた。

「お疲れ様！少し回復呪文かけるわね！」

ミーサの手から出た光が体を包む。少し呼吸が楽になった。

「あ、あの、っはぁ、完全に回復はしていただけないんでしょ、でしょうかぁ。」

いまだ弾み続ける呼吸を抑えて尋ねた。

「回復呪文と言っても、その人の治癒能力を引き上げてるだけだから回復させすぎると死ぬわよ。」

厳しい目つきでミーサが言う。
なるほど、決して万能じゃないわけか。

「さ、時間ないし、剣術の特訓に移りましょう！」

「あの、もう少し休憩を..それに、魔法使いのミーサが剣術なんて教えられるの？」

「もちろん無理よ。だから今日は、」

ミーサがパチンと指を鳴らす。すると、ミーサの後ろから人影が見えた。

「アレクに剣術を教えてもらうわ。」

全身赤い甲冑に身を包んだ、黒髪の爽やかなイケメンが現れた。

「アレクは、ルデビト3剣士と言われるかなりの猛者！不足はないはずよ。」

「こんにちは、魁斗さん。剣術を教えさせていただくアレクと申します。よろしくお願いします。」

アレクが丁寧にお辞儀をする。
強そうなオーラがひしひしと伝わってくる。

「あ、は、はいぃ」

圧でうまく声が出ない。震えながらアレクから自分用の剣をもらった。

「では、さっそく勝負といきましょうか。いつでもいらしてください！」

は、え？いきなり勝負？どういうこと？なんで？

戸惑いが隠せない。でもアレクは既に剣を構えている。

「う、うわああぁぁぁ」

震える剣でアレクに剣を振りかざす。こうして人生初の戦闘が始まった。