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あったかもしれないしなかったかもしれない話
星占いは信じない
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あれははくちょう座、それはこと座、こっちは……形は覚えているけれど、何座かは忘れてしまいましたわ。もともとあまり興味もありませんでしたし。七夕に関係があったのだったかしら?
この世界には七夕もなければギリシャもないので当然ギリシャ神話はありません。なので同じ星座はないはずですけれど、見上げる空の星の並びは曖昧な記憶で見ると数こそ多いものの同じに思えます。そこまで設定しなかったのか、適当に処理したのか、あえて日本と同じ星並びにしたのかどれでしょう?
恐らくあえてなのでしょうね。設定資料集に太陽暦換算できる誕生日が設定されていましたし、ヒロインに誕生日を入力することが出来ましたもの。
それで何が出来るかというと神話がないからそのものではないものの要するに星占いです。ヒロインの誕生日によって相性のいいキャラと悪いキャラがいましたの。ほんの少しの差ですけど。
もちろんずるい大人だったわたくしは自分の誕生日ではなくネットで見た相性のいい誕生日を入れましたわ、サポートキャラとの。実は攻略対象と相性のいい誕生日を入れるより効率がいいらしいんですの、誰を攻略しても変えなくてもいいですし。
けどルーク様を攻略するときは、効率よりも彼との相性のいい日を選びましたけど。
……実際の誕生日に祝って欲しいと思うくらいのノリはありましたけど、ゲームはリアルタイムで進むものではないですし、親しくなる前に誕生日が終わってしまってはお祝いも何もないですもの。
「リーゼ?」
ゲームの事を思い出していたせいか、その声をほんの少し懐かしいと思いました。実際は半日も間をおいてませんけれど。
「お義兄さま」
そちらを向くと、バルコニーの手すり二つ分越しにお義兄さまがこちらに近づいてくる姿が見えます。
慌ててわたくしもそちらに向かいます。
こういうとお義兄さまの部屋がお隣のようですし、事実そうなのですけれど、棟が別だったりするので、話は辛うじて出来てもベタな幼なじみ物のマンガみたいに伝って移動出来るような距離ではありません。……もしかしたらお義兄さまは出来るかもしれませんけど、わたくしには無理です。
お義兄さまが引き取られる際に、ちょうど手狭になっていたしと増築し、そちらをお義兄さま用にしたとか。要するに二世帯住宅のようなものですわね。階下で繋がってますし、内装に差があるわけでも狭いわけでもないですし、食事とかは一緒に取ってますので、お義兄さまをないがしろにしているわけではなく将来を見越しての事かと。
順当に行けば成人後すぐにお義兄さまは子爵位を引き継ぎますけど、いくらお義兄さまでもすぐに一人で出来るわけでもないでしょうから即座にこのうちから独立する訳ではないはず。その時、対外的に別の家だとする必要があるときの為にこんなことにしているのでしょう。親戚でも線引きは必要ですもの。
お父様達はわたくしに甘いですけれど、結局お義兄さまにも甘いのです。そうして甘えてもしまう訳でしょうけれど。
「眠れないのかい?」
「少し、夜風に当たりたくなりましたの」
はくちょう座が空にある以上、今は夏です。じとっとした湿気はありませんが、四季はあるので少し暑かったのは事実です。ちなみに虫を媒介にした伝染病などはイベントでもありません。乙女ゲーム素晴らしいです。どうせなら蚊自体いなければいいのにと思わなくもないですけど、ベッドの天蓋のある理由がどうとか昔聞いた事があるような?
「あと、星を見たくなって」
星占いを思い出す出来事があったから。……まぁ、毎年あるんですけど。
今日はお義兄さまの誕生日でした。
乙女ゲームということで華やかなパーティーでもと思ってましたけれど、リーゼロッテの記憶にもその後にも誕生日にそんなことをした記憶はありません。わたくしがデビュタント前だからではなく、一般的に家族や恋人などと内輪で祝うものなのだとか。もっとも内輪の規模が前世と違いますし、必要ならば別の日に改めて席をもうけるそうですが。
貴族がここまでアットホームなのは乙女ゲームだからなのかしら? その分悲惨な攻略対象もいましたけど。あれは主観的にはわりと幸せなその後のルートもありましたわね。
お義兄さまがまた一つ年を取るということは、ゲームの始まりと終わりに少しずつ近づいているということ。
わたくしの存在はお義兄さまの幸せにすこしは役に立っているのでしょうか?
それともやはり邪魔しかしていないのでしょうか?
星占いならリーゼロッテとの相性はいいんですのよ。入力した日付は忘れておりませんわ。
もっともサポートキャラとの間でもよかったのですから恋愛に関する相性ではなかったのでしょう。
けれど義兄妹として相性がいいのなら、どうしてこんなに切ないのでしょう?
二本の手すりの間がディスプレイを挟むよりもよほど遠く思えます。
「気が済みましたから、わたくしは休みますね。お休みなさい、お義兄さま」
なんとなく居たたまれなくなり礼を取り背を向けます。
きっと眠いので余計にネガティブになっているのでしょう。
ギリシャ神話はないけれど、例えるならばわたくしはカサンドラかしら? 神話以外のところで一部有名になってましたけど。
もっともわたくしはここが乙女ゲームの世界だとか、前世の記憶があるとかいいませんから、信じてもらえないわけではないのですけど。
正確には未来が分かるわけでもないんですけど。
子爵家ルートの時のお義兄さまは既にこの場所を出ていたなと思い出す。いま考えると生家の方に移られましたのね。
その時わたくしは何を思ってどうしているのでしょう?
この世界には七夕もなければギリシャもないので当然ギリシャ神話はありません。なので同じ星座はないはずですけれど、見上げる空の星の並びは曖昧な記憶で見ると数こそ多いものの同じに思えます。そこまで設定しなかったのか、適当に処理したのか、あえて日本と同じ星並びにしたのかどれでしょう?
恐らくあえてなのでしょうね。設定資料集に太陽暦換算できる誕生日が設定されていましたし、ヒロインに誕生日を入力することが出来ましたもの。
それで何が出来るかというと神話がないからそのものではないものの要するに星占いです。ヒロインの誕生日によって相性のいいキャラと悪いキャラがいましたの。ほんの少しの差ですけど。
もちろんずるい大人だったわたくしは自分の誕生日ではなくネットで見た相性のいい誕生日を入れましたわ、サポートキャラとの。実は攻略対象と相性のいい誕生日を入れるより効率がいいらしいんですの、誰を攻略しても変えなくてもいいですし。
けどルーク様を攻略するときは、効率よりも彼との相性のいい日を選びましたけど。
……実際の誕生日に祝って欲しいと思うくらいのノリはありましたけど、ゲームはリアルタイムで進むものではないですし、親しくなる前に誕生日が終わってしまってはお祝いも何もないですもの。
「リーゼ?」
ゲームの事を思い出していたせいか、その声をほんの少し懐かしいと思いました。実際は半日も間をおいてませんけれど。
「お義兄さま」
そちらを向くと、バルコニーの手すり二つ分越しにお義兄さまがこちらに近づいてくる姿が見えます。
慌ててわたくしもそちらに向かいます。
こういうとお義兄さまの部屋がお隣のようですし、事実そうなのですけれど、棟が別だったりするので、話は辛うじて出来てもベタな幼なじみ物のマンガみたいに伝って移動出来るような距離ではありません。……もしかしたらお義兄さまは出来るかもしれませんけど、わたくしには無理です。
お義兄さまが引き取られる際に、ちょうど手狭になっていたしと増築し、そちらをお義兄さま用にしたとか。要するに二世帯住宅のようなものですわね。階下で繋がってますし、内装に差があるわけでも狭いわけでもないですし、食事とかは一緒に取ってますので、お義兄さまをないがしろにしているわけではなく将来を見越しての事かと。
順当に行けば成人後すぐにお義兄さまは子爵位を引き継ぎますけど、いくらお義兄さまでもすぐに一人で出来るわけでもないでしょうから即座にこのうちから独立する訳ではないはず。その時、対外的に別の家だとする必要があるときの為にこんなことにしているのでしょう。親戚でも線引きは必要ですもの。
お父様達はわたくしに甘いですけれど、結局お義兄さまにも甘いのです。そうして甘えてもしまう訳でしょうけれど。
「眠れないのかい?」
「少し、夜風に当たりたくなりましたの」
はくちょう座が空にある以上、今は夏です。じとっとした湿気はありませんが、四季はあるので少し暑かったのは事実です。ちなみに虫を媒介にした伝染病などはイベントでもありません。乙女ゲーム素晴らしいです。どうせなら蚊自体いなければいいのにと思わなくもないですけど、ベッドの天蓋のある理由がどうとか昔聞いた事があるような?
「あと、星を見たくなって」
星占いを思い出す出来事があったから。……まぁ、毎年あるんですけど。
今日はお義兄さまの誕生日でした。
乙女ゲームということで華やかなパーティーでもと思ってましたけれど、リーゼロッテの記憶にもその後にも誕生日にそんなことをした記憶はありません。わたくしがデビュタント前だからではなく、一般的に家族や恋人などと内輪で祝うものなのだとか。もっとも内輪の規模が前世と違いますし、必要ならば別の日に改めて席をもうけるそうですが。
貴族がここまでアットホームなのは乙女ゲームだからなのかしら? その分悲惨な攻略対象もいましたけど。あれは主観的にはわりと幸せなその後のルートもありましたわね。
お義兄さまがまた一つ年を取るということは、ゲームの始まりと終わりに少しずつ近づいているということ。
わたくしの存在はお義兄さまの幸せにすこしは役に立っているのでしょうか?
それともやはり邪魔しかしていないのでしょうか?
星占いならリーゼロッテとの相性はいいんですのよ。入力した日付は忘れておりませんわ。
もっともサポートキャラとの間でもよかったのですから恋愛に関する相性ではなかったのでしょう。
けれど義兄妹として相性がいいのなら、どうしてこんなに切ないのでしょう?
二本の手すりの間がディスプレイを挟むよりもよほど遠く思えます。
「気が済みましたから、わたくしは休みますね。お休みなさい、お義兄さま」
なんとなく居たたまれなくなり礼を取り背を向けます。
きっと眠いので余計にネガティブになっているのでしょう。
ギリシャ神話はないけれど、例えるならばわたくしはカサンドラかしら? 神話以外のところで一部有名になってましたけど。
もっともわたくしはここが乙女ゲームの世界だとか、前世の記憶があるとかいいませんから、信じてもらえないわけではないのですけど。
正確には未来が分かるわけでもないんですけど。
子爵家ルートの時のお義兄さまは既にこの場所を出ていたなと思い出す。いま考えると生家の方に移られましたのね。
その時わたくしは何を思ってどうしているのでしょう?
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