婚約者に婚約破棄かお飾りになるか選ばされました。ならばもちろん……。

こうやさい

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「既に知られていたようだが、こうなると近々わたしの病気は公表されて、それでも療養のために表舞台から消えるだろう。それに巻き込まれてもいいのか?」
 政略としては婚約者さまと別れるのが正しいと分かっていてもそれを感情的に納得出来ない方は一定数いらっしゃるでしょう、特に政略との縁が薄い市井には。
 直接的に話をする方は少なくとも領地には市井の方がたくさんいらしてますもの。
 そんな方々に利害のために死にゆく婚約者を切り捨てた冷たい女だと認識されれば、普段は大丈夫でも何かあったときに騒ぎの理由になりかねませんもの。
 かといって一緒に行っても社交がおろそかになれば違うところが不利になります。
 それを防ぐための婚約破棄だったのですね。確かに破棄されたことも問題ですけれど、罪はあくまで婚約者さまの方にあるとなればわたくしの傷はそれでも浅くなりますし、事実療養でも婚約者さまが引っ込められたとなると婚約者さまが罰を受けた――家はきちんと対応をしたということでこれまた傷は浅くなります。それに既に手遅れではありますが療養が名目だと思われれば病気の事も隠し切れたかもしれません。幼い色恋に狂った罪と病人を出したということと……残念ながら今回は後者の方が後々まで響くでしょう。
 本当に。今は自分の事だけを考えていればよろしいのに。

「空気のいいところはきっと過ごしやすいでしょうね」
 けれども結論が先にあるんですもの。後付けされた理由に意味はありませんわ。
 社交なんてお好きになれる方が見つかればそれでいいのです……というのはさすがに暴論ですけど。
「だから……」
「わたくしはあなたと居られれば幸せですし、修道院に入りますから……その後の事も心配する必要はありません」
 出来るならその後は遠い方がいいですけれど。
 それでも逃避せずに考えるなら、恐らく静養先は近くに修道院のあるあの辺りでしょうから、知り合いを早くから作れるだけいいのではないかしら? 追い出された場合もその修道院に身を寄せれば縁の場所近くにいることも叶いますし。

「それともどうしてもご迷惑でしょうか?」
 一緒にいたいのは事実ですけれど、それがどう考えても重荷にしかならないというのなら諦めますわ。
 近くで負担をかけるよりも遠くで少しでも安らかに暮らせるよう祈りたいと思うのはわがままかしら?

「君は――」
 思わずというように立ち上がりかけた婚約者さまがよろけて再び椅子に座ります。
 思わず駆け寄ったわたくしの腕を婚約者さまに掴まれました。
「本当にそれでも一緒にいてくれるのか?」
「それがわたくしの望みです」
 実際そうなってみれば違う考えも浮かぶかもしれませんけど。
 それでも今、その言葉に嘘はありません。

 腕が軽く引かれ、そして――。

 …………お義姉さま、扉を閉めていって下さってありがとうございます。
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