我が罪への供物

こうやさい

文字の大きさ
38 / 48

裏切りの在処

しおりを挟む
 海に沈むことに異論はない。
 ただ花嫁とされるのは嫌だった。

 わたしの血族には女性だけに伝わる役目がある。
 海神に血族の娘を嫁がせること。
 そしてその役目を子々孫々の女性だけに伝え、百年に一度ほど新たな花嫁を用意すること。
 それが何の意味を持つかも分からないまま、けれど頑なに続けられてきた。
 きっとただ死ぬだけだと分かっているだろうのに。
 遺体は揚がってこないけど、それでも。
 そして今、ちょうど花嫁が必要な時期となっている。

 姉妹のうち姉のわたしが残り伝える方となったのは昔は妹の体が弱かったからだ。成人するまで生きられないとまでは言われなかったが、子供が出来るかどうかは分からないと。伝えるべき子々孫々が居なくては役目を果たせるとは言えない。
 ところが何がどうなったのか今や体はすっかり元気で、そのくせ儚げな雰囲気を持っているものだから、少なくともあたしよりモテる。相手は選り取り見取りで子孫繁栄というか良い環境で子育てできるという意味なら妹の方に軍配は上がってしまう。
 とはいえ、すでにわたしに恋人がいて、そんな問題ある相手に引っ掛かったわけでもなかったので、花嫁を入れ換えようとまでは思われなかった。

 

 嘆き哀しみ後を追いたいなどと口走ったせいで、伝える方を失ってはいけないと、立場を入れ換えることとなってしまった。
 海に沈むことに異論はない。後を追いたいのは本当だから。
 ただ花嫁とされるのは嫌だった。
 実際はただ死ぬだけだとしても、あなた以外と結婚はしたくない。
 けれど生き続けるならば、結局他の誰かと結婚して子をなすことを求められるだろう。
 現状、そのどちらもしない女性に血族での居場所はない。結局無理矢理海に放り込まれてしまうかもしれない。

ここで生きても死んでも裏切りの在処が変わるだけ。
 あなたを裏切ることになるだけ。
 ならば……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...