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後編
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「あれ? シャドっち?」
「その名で呼ぶなぁ!!」
反射的に叫ぶ。
シャドっちというのは小学校の時のあだ名で、件のゲームでプレイヤーキャラの名前を「シャドウ」にして、その後違うゲームをやるときも名前を変えられるものは全部それで通したせいでついた。ちなみにキャラメイク出来るシロモノは全部そのキャラに似せた。……いやどこまで似てたか正確にはわかんないけど脳内補完の方に寄せた。
それをなんですれ違ったNPCが振り返って呼ぶ?
「お前このゲーム好きだったもんなー。同窓会で酒が入るといっつもこの話に……」
いやなんでそんなゲームというかファンタジーに似合わない話に。てか同窓会って。
「もしや矢部か?」
小学校の同窓会といえどいい年なので酒が入るといっても一次会では大人のたしなみとしてそこまでは飲まない。が、二次会はちょっと羽目を外すわけで、当時やってたゲームの話をしたことはある。
「ああそうか、お前はいつもそんな感じの格好にキャラメイクするから反射的にそうだと思ったけど、普通はどんな格好か分からないよな?」
いつもというほど同窓会はしていないと思うが、二次会に一緒に参加して、酒が入ると昔のあだ名で呼ぶ知り合いはそいつくらいしか知らない。
「高木もいたぞ。村越も。会ってはないが多田もいるそうだ」
なぜそれ俺だけシャドっちと呼ぶ!?
いや問題はそこじゃない。
転生した先に他にも転生者がいたというパターンはたまにある。
バス事故飛行機事故で集団で転生とか教室まるごと召喚されて転移とか知り合い複数と一緒に異世界というパターンもある。
けど知り合いとはいえ一緒にいた訳でもないヤツらと同時期に集団転生? それ、よくあることか?
「他にもあと……って、警告出まくってるぞ!? 大丈夫かシャドっち」
「だからシャドっちと――」
「――呼ぶなーっ!!」
そう叫んでいる途中で強制ログアウトされた。
イメージが崩れるのが嫌だ嫌だと思っていたが、とうとう件のゲームがVRMMO化すると聞いて好奇心の方が勝った。
それで一式買いそろえ初めてのVRゲームを始めた。
ディスプレイと向かい合うゲームと違いVRは脳に働きかけ作り物をあたかも本物のように認識させる。
ようにであって、本物と認識されては困る。
いままでプログラマが悪意を持ってログアウト不可能にしたり現実と誤認させるような仕様にしたりなんて展開はなかった。
けれどプレイヤー当人がそれを切っ掛けに自分の殻に閉じこもる、あるいは現実との区別がつかなくなるなどという事象は起こったらしい。
元から疲れていたり悩んでいたり精神に問題を抱えていたりした人がほとんどで、ある意味自ら望んでともいえなくないらしいが、狂ってからそれが分かっても遅い。
それで脳の健常度が落ちると……大概はゲームだと認識できなくなっているという兆候の脳波を捉えると、手遅れになる前に強制ログアウトという処置が取られることになったらしい。
そんな注意書きに書かれていた事を思い出した。斜め読みしたせいで細部が怪しい。
このゲームを心置きなく満喫するために有休の前に仕事をできる限り終わらせようと無理をした。
それくらい大丈夫だと思っていたが、もう若くはないらしい。
ゲームをやっている最中に寝ぼけてしまうくらいなのだから。
……明晰夢は見ない質なんだよなー。
そして、一度それで強制ログアウトを喰らうと一週間は再ログインさせてはもらえない。
やれやれ、どうやらせっかくの有休は本当に休むために費やさなければならないようだ。
「その名で呼ぶなぁ!!」
反射的に叫ぶ。
シャドっちというのは小学校の時のあだ名で、件のゲームでプレイヤーキャラの名前を「シャドウ」にして、その後違うゲームをやるときも名前を変えられるものは全部それで通したせいでついた。ちなみにキャラメイク出来るシロモノは全部そのキャラに似せた。……いやどこまで似てたか正確にはわかんないけど脳内補完の方に寄せた。
それをなんですれ違ったNPCが振り返って呼ぶ?
「お前このゲーム好きだったもんなー。同窓会で酒が入るといっつもこの話に……」
いやなんでそんなゲームというかファンタジーに似合わない話に。てか同窓会って。
「もしや矢部か?」
小学校の同窓会といえどいい年なので酒が入るといっても一次会では大人のたしなみとしてそこまでは飲まない。が、二次会はちょっと羽目を外すわけで、当時やってたゲームの話をしたことはある。
「ああそうか、お前はいつもそんな感じの格好にキャラメイクするから反射的にそうだと思ったけど、普通はどんな格好か分からないよな?」
いつもというほど同窓会はしていないと思うが、二次会に一緒に参加して、酒が入ると昔のあだ名で呼ぶ知り合いはそいつくらいしか知らない。
「高木もいたぞ。村越も。会ってはないが多田もいるそうだ」
なぜそれ俺だけシャドっちと呼ぶ!?
いや問題はそこじゃない。
転生した先に他にも転生者がいたというパターンはたまにある。
バス事故飛行機事故で集団で転生とか教室まるごと召喚されて転移とか知り合い複数と一緒に異世界というパターンもある。
けど知り合いとはいえ一緒にいた訳でもないヤツらと同時期に集団転生? それ、よくあることか?
「他にもあと……って、警告出まくってるぞ!? 大丈夫かシャドっち」
「だからシャドっちと――」
「――呼ぶなーっ!!」
そう叫んでいる途中で強制ログアウトされた。
イメージが崩れるのが嫌だ嫌だと思っていたが、とうとう件のゲームがVRMMO化すると聞いて好奇心の方が勝った。
それで一式買いそろえ初めてのVRゲームを始めた。
ディスプレイと向かい合うゲームと違いVRは脳に働きかけ作り物をあたかも本物のように認識させる。
ようにであって、本物と認識されては困る。
いままでプログラマが悪意を持ってログアウト不可能にしたり現実と誤認させるような仕様にしたりなんて展開はなかった。
けれどプレイヤー当人がそれを切っ掛けに自分の殻に閉じこもる、あるいは現実との区別がつかなくなるなどという事象は起こったらしい。
元から疲れていたり悩んでいたり精神に問題を抱えていたりした人がほとんどで、ある意味自ら望んでともいえなくないらしいが、狂ってからそれが分かっても遅い。
それで脳の健常度が落ちると……大概はゲームだと認識できなくなっているという兆候の脳波を捉えると、手遅れになる前に強制ログアウトという処置が取られることになったらしい。
そんな注意書きに書かれていた事を思い出した。斜め読みしたせいで細部が怪しい。
このゲームを心置きなく満喫するために有休の前に仕事をできる限り終わらせようと無理をした。
それくらい大丈夫だと思っていたが、もう若くはないらしい。
ゲームをやっている最中に寝ぼけてしまうくらいなのだから。
……明晰夢は見ない質なんだよなー。
そして、一度それで強制ログアウトを喰らうと一週間は再ログインさせてはもらえない。
やれやれ、どうやらせっかくの有休は本当に休むために費やさなければならないようだ。
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