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後編
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「病気や怪我は治癒魔法やポーションで何とかなるものが多いです」
確かに小難しい理屈や、制約がつくものもあるが、案外と曖昧にいろいろ使えることも多い。
「近視や遠視もメガネは普通に出てくるので何とかなるんでしょう」
確かにごく普通に出てきて、庶民でも使っている事は多い。レンズの歴史は案外と古いが、それでも世界観に照らし合わせると進みすぎている事もある。
メガネに限らすそんな風にある意味ご都合主義なまでにそんな感じで片付くことは多い。
「身を守れる能力や生計を立てられる方法にも心引かれはしますが、説明を聞いた限り大きな街があって、何か一つ突出した能力があれば実力者として過ごせる世界となれば、最低限健康な肉体があり、街に引きこもって雑用でもこなしていれば危険は少なく、すぐに飢え死ぬ可能性は低いでしょう?」
確かにそこに間違いはない。特に最初の街は異世界人が受け入れやすい環境に作ってある。
「それで健康な肉体を維持するのになにが足りないかと考えて、虫歯を治せることに行き着きました」
確かに食事に支障がでれば体力も落ちるし、痛みを抱えた状態では集中しづらいし、夜もよく眠れない。力を入れるときに歯を食いしばることも出来ない。
「それはそうだろうが……」
だが実のところこの世界に虫歯を治療するという概念はない。
強いて言えば痛くなった歯を抜くことがそうだろうか? 体質の差なのか、現地の人はかなり雑に抜いてもそこまでの痛みもなく、抜くことそのものにもそこまで苦労しなかった。
そして抜いてさえしまえばポーションで新たに生やすこともできる。
それは今の状況に限らずフィクションでも描写されていないだけでそうなっているものはある。
戦いで歯の折れた戦士が次に出てきたときには普通に歯が生えている事をギャグや省略等フィクションだからと流した事はないだろうか?
歯がボロボロになっているキャラクターは、それを属性としていなかっただろうか?
ポーションが買えないほど貧乏である事は表しても歯自体を治せないとは明記されていなかったのではないだろうか?
しばし考えた後、神はそれでも了承した。
皆と合流した少年を待っていたのは一部を除き嘲笑と無関心だった。
元から仲のいいもの同士や、お互いに利用出来そうと思う能力を持つ者同士がグループを組んでいく中、少年は取り残された。
一部、恐らく歯医者に最近縁のあったであろうものが様子を伺っていたが、既に治療が済んでいたのか、目先の役に立ちそうなグループに合流していく。
クラスが変わってしまったために友情や同情で入れてくれるグループはなかった。
それば異世界に降り立った後も変わらなかった。
残りが世界に散らばり華々しく活躍する中、少年は一人街の中で雑用と付随した道具を他のことに利用したり、自分の歯の手入れなどをしながら細々と暮らしていた。
そしてある日賽に選ばれた神が。
異世界人に虫歯をばらまいた。
現地の人ならわりと簡単に虫歯は抜く。
けれど移転してきた者達におなじ感覚を持てなかった。
乳歯が抜けた記憶も既に遠く、親知らずはまだ生えていない。
そして最近は相当酷い虫歯になって歯科にかかっても抜くことは少ない。
生えてくると言われても、信じ切れない。
自分や素人が抜くことに対しても恐怖を覚える。
そして歯科技能を持っているのはこの世界、いや遊戯をしている神々の世界をすべて合わせてもあの少年だけだった。
歯が誤魔化しきれないほど痛み出した者から、最初の街に戻り少年を探したが、既にそこにはいなかった。
野垂れ死んだのかもしれないし、引っ越したのかもしれない。
誰も気にしていなかったので、連絡を取っていた者はいなかった。
地味に痛み続ける歯と、それにともなう心身の不調。
時には何もかも放り出したいほど苛まれることもあるだろう。
彼らはそれをいつまで耐えるだろうか?
耐えられなくなったときなにを選ぶのだろう?
そして少年は自分の虫歯をどうしたのだろうか?
対策は編み出せていたのだろうか?
---------------------------------
そして現在謎の痛みで歯医者に通う羽目になってしまっているわけだが(爆)。
神社かどっかお参りしてきた方がいいか、コレ。
確かに小難しい理屈や、制約がつくものもあるが、案外と曖昧にいろいろ使えることも多い。
「近視や遠視もメガネは普通に出てくるので何とかなるんでしょう」
確かにごく普通に出てきて、庶民でも使っている事は多い。レンズの歴史は案外と古いが、それでも世界観に照らし合わせると進みすぎている事もある。
メガネに限らすそんな風にある意味ご都合主義なまでにそんな感じで片付くことは多い。
「身を守れる能力や生計を立てられる方法にも心引かれはしますが、説明を聞いた限り大きな街があって、何か一つ突出した能力があれば実力者として過ごせる世界となれば、最低限健康な肉体があり、街に引きこもって雑用でもこなしていれば危険は少なく、すぐに飢え死ぬ可能性は低いでしょう?」
確かにそこに間違いはない。特に最初の街は異世界人が受け入れやすい環境に作ってある。
「それで健康な肉体を維持するのになにが足りないかと考えて、虫歯を治せることに行き着きました」
確かに食事に支障がでれば体力も落ちるし、痛みを抱えた状態では集中しづらいし、夜もよく眠れない。力を入れるときに歯を食いしばることも出来ない。
「それはそうだろうが……」
だが実のところこの世界に虫歯を治療するという概念はない。
強いて言えば痛くなった歯を抜くことがそうだろうか? 体質の差なのか、現地の人はかなり雑に抜いてもそこまでの痛みもなく、抜くことそのものにもそこまで苦労しなかった。
そして抜いてさえしまえばポーションで新たに生やすこともできる。
それは今の状況に限らずフィクションでも描写されていないだけでそうなっているものはある。
戦いで歯の折れた戦士が次に出てきたときには普通に歯が生えている事をギャグや省略等フィクションだからと流した事はないだろうか?
歯がボロボロになっているキャラクターは、それを属性としていなかっただろうか?
ポーションが買えないほど貧乏である事は表しても歯自体を治せないとは明記されていなかったのではないだろうか?
しばし考えた後、神はそれでも了承した。
皆と合流した少年を待っていたのは一部を除き嘲笑と無関心だった。
元から仲のいいもの同士や、お互いに利用出来そうと思う能力を持つ者同士がグループを組んでいく中、少年は取り残された。
一部、恐らく歯医者に最近縁のあったであろうものが様子を伺っていたが、既に治療が済んでいたのか、目先の役に立ちそうなグループに合流していく。
クラスが変わってしまったために友情や同情で入れてくれるグループはなかった。
それば異世界に降り立った後も変わらなかった。
残りが世界に散らばり華々しく活躍する中、少年は一人街の中で雑用と付随した道具を他のことに利用したり、自分の歯の手入れなどをしながら細々と暮らしていた。
そしてある日賽に選ばれた神が。
異世界人に虫歯をばらまいた。
現地の人ならわりと簡単に虫歯は抜く。
けれど移転してきた者達におなじ感覚を持てなかった。
乳歯が抜けた記憶も既に遠く、親知らずはまだ生えていない。
そして最近は相当酷い虫歯になって歯科にかかっても抜くことは少ない。
生えてくると言われても、信じ切れない。
自分や素人が抜くことに対しても恐怖を覚える。
そして歯科技能を持っているのはこの世界、いや遊戯をしている神々の世界をすべて合わせてもあの少年だけだった。
歯が誤魔化しきれないほど痛み出した者から、最初の街に戻り少年を探したが、既にそこにはいなかった。
野垂れ死んだのかもしれないし、引っ越したのかもしれない。
誰も気にしていなかったので、連絡を取っていた者はいなかった。
地味に痛み続ける歯と、それにともなう心身の不調。
時には何もかも放り出したいほど苛まれることもあるだろう。
彼らはそれをいつまで耐えるだろうか?
耐えられなくなったときなにを選ぶのだろう?
そして少年は自分の虫歯をどうしたのだろうか?
対策は編み出せていたのだろうか?
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そして現在謎の痛みで歯医者に通う羽目になってしまっているわけだが(爆)。
神社かどっかお参りしてきた方がいいか、コレ。
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