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BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった3

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 困ったが、穂積を呼んでリュックを持ってきてもらうか、脱衣室に置いてあったタオルを借りるしかないと思いながら浴室の扉を開けると、穂積がまだそこにいた。腰にタオルを巻いただけの格好で。
 すでに出ていったものだと思っていたからぎょっとした。

「まだいたのか」
「歯磨きしていたんです」

 ほぼ全裸のまま腕を組み、いけしゃあしゃあとほざく。
 そして濡れた体を上から下まで、じっくりと見られた。私も肉体労働者であり、見られて困るような体ではないのだが、なんだかとてつもなく恥ずかしい。

「見るなよ。セクハラっぽいぞ」
「あなたと同じことをしているだけですよ」

 その通りなので言い返せない。
 穂積が組んでいた腕をおもむろに解き、私の背後の壁に左手をついた。そしてもう一方の手で浴室の扉を閉めた。私は彼の腕の中に囲まれた格好となる。壁ドンというやつだ。
 彼の顔が、ゆっくりと近づく。キスされる予感。

「久見さん……」

 色っぽく囁かれ、冷ましたはずの熱が蘇ってくる。胸の鼓動がせわしなくなる。

「ま、待て……」
「だめです。あなたが誘惑したんです。こんなに煽られて、我慢できるはずがないでしょう」

 見つめてくる男の瞳はひどく真剣で、熱を帯びていた。捕らえられ、逃げられない。
 男の体温を頬で感じる距離まで、唇が、近づく。

「そんなつもりじゃないなんて、言わせませんよ。こうなることは、わかっていたはずだ」

 云い終えるなり唇が重なる。柔らかく、しっとりとした感触。石鹸の香りと穂積の香りに、眩暈のような感覚を覚えた。
 唇が離れ、至近距離から顔を覗き込まれる。その目から逸らせなくて、見つめあった。見つめあったまま、もう一度、くちづけられた。同時に、両肩を掴まれる。その手がゆっくりと背後へまわされ、優しく抱きしめられた。
 もう一度唇が離れ、再び重ねられたとき、唇の隙間を舌で舐められた。その感触にびくりと震え、反射的に体を引こうとしたら、あやすように背を撫でられた。そして彼の一方の手が下へ降りてきて、私の中心に触れてきた。やんわりと刺激され、たちまちそこは硬くなる。

「あ……、穂積、くん…」

 どうしようという焦りから名を呼んだのだが、甘えた声になった。穂積が興奮した気配。

「向こうに行きましょうか」

 体を離され、腕を引かれた。

「体、濡れてる」
「かまいません」

 正直、こんな展開になることをまったく考えていなかったわけではない。宿泊しようと思いついたとき頭の片隅にチラリと、襲われる懸念は浮かんだ。もしかしたらとは思った。しかし楽観視し、その先を考えようとしなかった。VRのことで頭がいっぱいで、VRをしたくて、それ以外の思考を避けていたのだ。
 穂積の裸を見るという行為も、実行に移すまでは、そこまで彼を刺激すると思っていなかった。同性ならば銭湯や温泉、ジムの脱衣所等々、裸を見られることなど普通にあるからだ。男同士ならばおかしなことではない。しかし自分が彼の立場だったらと思うと、それはそうだよなとしか思えない。男女に変換して想像してみよう。風呂から上がったら好きな女子が待ち構えていて、自分の裸体を舐めるように見てきて、その後その女子は見られていると知りながら自ら服を脱いでシャワーを浴び、タオルで隠すでもなく裸体を晒して出てくる。うむ。これで手を出さなかったらその男は異常だ。
 どうしようと思っているうちにリビングにつき、ソファに押し倒された。あおむけに横たわる私の上に、穂積がのしかかる。

「あ、の、穂積くん……、あのな」

 穂積の言い分はもっともだし、この状況ですべてを拒むのは無理だとわかる。せめて妥協案を。

「私は、その、後ろは、まだ無理……だから、このあいだと同じくらいの塩梅で……」

 何をされるかと怯え、弱々しく伺いを立てた私に、穂積が頷いた。

「わかってます」

 優しく微笑み、顔を寄せて私の唇にキスを落とす。

「必ずしも後ろで繋がる必要はないです。一緒に気持ちよくなれたら、それでいいんですよ」
「きみは、アナル否定派なのか?」
「なんですそれ。いや、できるならしたいですよ。でも無理強いはしたくない」

 穂積は軽く笑い、からかうような口調で続ける。

「ところで、まだ無理、なんて言われると、じゃあいずれはいいのかな、なんて期待しちゃいますけど。いいんですか」

 赤面して目を泳がせる私の答えを待たず、穂積は愛撫をはじめた。腋窩から脇腹、そして乳首を舐め、いやらしく弄り、撫でていく。
 このあいだと同じ塩梅でと注文したのに、明らかに先日よりも濃厚で、限りなくセックスに近い。気持ちはうろたえるが、性欲が人一倍強く、エロい体にできている私は抗うことができない。期待で身体が熱くなり、鼓動が速まる。
 そして全身の熱を高められた状態で中心を口に咥えられたら、期待以上の快楽に見舞われた。腰が甘く蕩け、内腿が震え、息があがって喘ぎ声をとめられない。

「ん、ぁ……、は……」

 たっぷりと可愛がられ、もう限界に達しそうだと思った頃、口を離された。

「あ……、っん…、なんで」

 快感に潤んだ目で見ると、彼は甘く笑って、ソファの下からローションをとりだした。それを自分の手のひらにとって温めてから、私の中心と内腿に塗り広げた。そして私の両脚を持ちあげ、胸に膝がつくほど折りたたむ。自然と腰が浮きあがり、後ろのすぼまりが彼に見られてしまう姿勢となった。羞恥で頭が眩む。M字、というには、両脚の隙間が狭い。しかしまさに、挿入に適した体勢。入れないと云っていたが、この格好は、そういうことではないのかと不安がよぎる。
 見れば、穂積がすぼまりに熱い視線を注いでいた。やはり、入れたいのか。
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