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38 誤解③
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「ジョサイアは貴女には、優しいと思うわ。ちゃんと話したら、理解しようとしてくれると思う。せっかく二人は結婚したんだから、そうするべきだと思うわ」
オフィーリア様は苛烈な性質の持ち主のようだけど、私には優しく諭すように言ってくれた。
元婚約者の想い人が私だとしたなら、嫌な印象を抱いていてもおかしくないのに、胸の大きさだけを先に言ったということは、それ以外は気にしてないってことを暗に伝えたかったのだと思う。
「けど、私たち……契約結婚なんです。一年後に離婚しようって言っていて……」
「え? ……どういうことなの?」
これは彼女には言っておかなくてはと私が言えば、オフィーリア様はとても驚いた表情になった。
「私……二人が愛し合っていたのに、何か誤解があったから、直前に逃げてしまったと思って居たんです。だから、ジョサイアは傷心したばかりだし、私を彼の結婚相手に選んだのも、急遽の間に合わせだったから……彼には、誰にも選べたのにと思って……私からそうしようと伝えたんです」
「あきれた……結婚した妻に、自分の気持ちもはっきりと伝えていないなんて……いいえ。そんな器用な人なら、私ももっと穏便な方法で婚約解消しているわね。今日は帰ってから私から話を聞いたと、ジョサイアへ確認しなさい。きっと、二人の誤解は綺麗に解けてしまうはずよ」
オフィーリア様は、大きくため息をつきながらそう言った。彼女のように大胆で直接的な物言いをする人とは、ジョサイアの真面目で慎重な性格があまり合わなかったのかもしれない。
こうして彼女と面と向かってみれば、私はそれを良く理解出来た。
別にそれは、どちらが悪いと言う訳でもない。家柄と年齢と色々な条件が合わさって婚約したものの、相性が合わないことだってあると思う。
「あの……オフィーリア様。お聞きしたいのですが、結婚式前に逃げた理由は、ジョサイアから逃げたかっただけですか?」
素直に疑問に思っていたことを聞けば、オフィーリア様は面白そうに笑った。
「ふふ。違うわよ。今付き合っている大富豪の彼とは、元々恋仲だったの。一旦騎士との駆け落ちに見せたのは、表向きよ!」
「え……どういうことですか?」
「もちろん先方も了承済みで、口止め料を含めて報酬だって十分あげているわ……私が外国の大富豪と逃げたことになると、それと比較されることになるジョサイアの名誉が一層ね。だから、私が一介の騎士と逃げ出したけど別れて、大富豪と恋に落ちた移り気な女を演じれば、これからもあの国に残るジョサイアは、誰からも同情されると思ったの」
「オフィーリア様は、全部……彼のために?」
嘘でしょう。残るジョサイアのことまで考えて、結婚式直前に逃げたの?
「ええ。だから、私は結婚式前に逃げてやったの。あれだけ大事にされていて、その上で恥を上塗りされて……まあ、移り気な女は憎まれるけど、ジョサイアには可哀想だと同情が集まるでしょうね。私はもうすぐこの国を出て行くから、別に誰になんと言われようが、どうでも良いもの」
「あの……ごめんなさい。私はオフィーリア様を誤解していました」
私が謝ると、彼女は肩を竦めて微笑んだ。
「ここまで来たら……ついでだから言うけど、私が結婚式直前に逃げ出したのは、あれだけ切羽詰まった状況なら、前々から好きな女性にすぐに告白をしに行くと思ったのよ……うじうじと別の女性が好きな癖に、何の行動も起こせずに悩むイラついていた男がね」
「なんだか、私、オフィーリア様のこと……大好きになりました」
だって、こんなの……何も言わずに自分と結婚しようとしたジョサイアのために、私と結婚するように全部計画したってことでしょう?
すごく優しいと思うの。
「あら。ありがとう。私も私のこと、大好きなの。相性も良くなくてずーっとイライラしていた元婚約者の恋路も心配する女なんて、きっと私くらいしかいないわよ」
オフィーリア様がおどけてにっこり笑ったので、私も思わず彼女に満面の笑顔を向けた。
夫の元婚約者の人にこんなこと思うの、おかしいかもしれないけど……頭が良くて性格もすごくさっぱりしてて、出来れば友達になりたいって。
オフィーリア様は苛烈な性質の持ち主のようだけど、私には優しく諭すように言ってくれた。
元婚約者の想い人が私だとしたなら、嫌な印象を抱いていてもおかしくないのに、胸の大きさだけを先に言ったということは、それ以外は気にしてないってことを暗に伝えたかったのだと思う。
「けど、私たち……契約結婚なんです。一年後に離婚しようって言っていて……」
「え? ……どういうことなの?」
これは彼女には言っておかなくてはと私が言えば、オフィーリア様はとても驚いた表情になった。
「私……二人が愛し合っていたのに、何か誤解があったから、直前に逃げてしまったと思って居たんです。だから、ジョサイアは傷心したばかりだし、私を彼の結婚相手に選んだのも、急遽の間に合わせだったから……彼には、誰にも選べたのにと思って……私からそうしようと伝えたんです」
「あきれた……結婚した妻に、自分の気持ちもはっきりと伝えていないなんて……いいえ。そんな器用な人なら、私ももっと穏便な方法で婚約解消しているわね。今日は帰ってから私から話を聞いたと、ジョサイアへ確認しなさい。きっと、二人の誤解は綺麗に解けてしまうはずよ」
オフィーリア様は、大きくため息をつきながらそう言った。彼女のように大胆で直接的な物言いをする人とは、ジョサイアの真面目で慎重な性格があまり合わなかったのかもしれない。
こうして彼女と面と向かってみれば、私はそれを良く理解出来た。
別にそれは、どちらが悪いと言う訳でもない。家柄と年齢と色々な条件が合わさって婚約したものの、相性が合わないことだってあると思う。
「あの……オフィーリア様。お聞きしたいのですが、結婚式前に逃げた理由は、ジョサイアから逃げたかっただけですか?」
素直に疑問に思っていたことを聞けば、オフィーリア様は面白そうに笑った。
「ふふ。違うわよ。今付き合っている大富豪の彼とは、元々恋仲だったの。一旦騎士との駆け落ちに見せたのは、表向きよ!」
「え……どういうことですか?」
「もちろん先方も了承済みで、口止め料を含めて報酬だって十分あげているわ……私が外国の大富豪と逃げたことになると、それと比較されることになるジョサイアの名誉が一層ね。だから、私が一介の騎士と逃げ出したけど別れて、大富豪と恋に落ちた移り気な女を演じれば、これからもあの国に残るジョサイアは、誰からも同情されると思ったの」
「オフィーリア様は、全部……彼のために?」
嘘でしょう。残るジョサイアのことまで考えて、結婚式直前に逃げたの?
「ええ。だから、私は結婚式前に逃げてやったの。あれだけ大事にされていて、その上で恥を上塗りされて……まあ、移り気な女は憎まれるけど、ジョサイアには可哀想だと同情が集まるでしょうね。私はもうすぐこの国を出て行くから、別に誰になんと言われようが、どうでも良いもの」
「あの……ごめんなさい。私はオフィーリア様を誤解していました」
私が謝ると、彼女は肩を竦めて微笑んだ。
「ここまで来たら……ついでだから言うけど、私が結婚式直前に逃げ出したのは、あれだけ切羽詰まった状況なら、前々から好きな女性にすぐに告白をしに行くと思ったのよ……うじうじと別の女性が好きな癖に、何の行動も起こせずに悩むイラついていた男がね」
「なんだか、私、オフィーリア様のこと……大好きになりました」
だって、こんなの……何も言わずに自分と結婚しようとしたジョサイアのために、私と結婚するように全部計画したってことでしょう?
すごく優しいと思うの。
「あら。ありがとう。私も私のこと、大好きなの。相性も良くなくてずーっとイライラしていた元婚約者の恋路も心配する女なんて、きっと私くらいしかいないわよ」
オフィーリア様がおどけてにっこり笑ったので、私も思わず彼女に満面の笑顔を向けた。
夫の元婚約者の人にこんなこと思うの、おかしいかもしれないけど……頭が良くて性格もすごくさっぱりしてて、出来れば友達になりたいって。
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