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39 解決①
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「それで……レニエラ様は、どんな仕事をするつもりだったの?」
ひとしきり私たちは話して給仕が持って来たお茶を飲んだオフィーリア様は、婚約破棄された私がどんな仕事をしようとしていたのか、気になったらしい。
彼女もこれからは恋仲の豪商の妻として生きて行くみたいだし、貴族の身で仕事をしようとしている私の話が気になったのかもしれない。
「あ……そうなんです。実は色々とあった時に、旅行をしていて……遠方の異国から来た商人から、果実の花から出来る精油の精製方法を買い取ったんです。それをこの国で売ろうと思っています。香りも良くて美容にも良いし、心身の安定を助けるんですよ」
私の始めようとしている商売の話を聞いて、オフィーリア様は心配そうな表情になった。
「ねえ。それって……大丈夫な話なの? 商人が全員が全員、悪どいとは言わないけど、利にさといことには間違いないわ。貴女みたいな貴族令嬢って、騙しやすいと思われてしまいそうだけど……」
「ふふっ……大丈夫です。その時の一緒に居た私の弟は、本当に頭の良い子で頼りになるんですよ。だから、精製方法を買い取った商人に気に入られたのは、実は私ではなく弟なんです」
実はあの時にアメデオが私が気に入った精油を見て、遠方ではなかなか買えないのならと、商人が話を持ちかけてくるように言葉巧みに誘導したのだ。
本当に頼りになる弟で、私はいつも助けて貰っている。
「貴族令嬢なのに……家庭教師ではなくて、商品を開発して商売を始めようとするなんて、物凄く珍しいわね」
確かにどんな理由があれど、結婚出来ず未婚のままになった貴族令嬢は、礼儀作法などを教える家庭教師になったりする。そして、仕事振りでは仕えた家の紹介で、結婚出来たりもするのだ。
けれど、あの時の私はもう結婚する気はなかった。
「私はもう、結婚するつもりがなかったんです。だから、ジョサイアにも一年後に別れようと言っていました……けど……」
そうだ……そういう……今まで考えていた、すべての前提が崩れてしまった今、私はどんな顔をして彼と会えば良いの?
戸惑った私が中途半端に言葉を止めてしまったことには触れず、オフィーリア様は肩を竦めて言った。
「その精油、気になるわ……私も使ってみたい。良かったら、またそれを持って会いに来てくれる?」
「はい! もちろんです。試作品をお持ちするようにします。少量しかないので、小瓶になってしまいますが……」
試作品はまだまだ改良の余地があり、他の香油と合わせる配合なども、商品化を見据えて試している段階だ。
だから、十分な量は持って来れないと伝えた私に、オフィーリア様は笑って首を横に振った。
「別に、それで構わないわ……その時に、帰ってからジョサイアと何を話したか教えてくれる? 誤解が解ければ、きっと上手くいくとは思うけど、もしあの意気地なしがそれでも何も言わなかったら、私がホールケーキをあの綺麗な顔にぶつけてあげるわ」
私が以前にしたことを、彼女はジョサイアにしようと言う。
「まあ……ふふっ。けど、オフィーリア様はそれをする権利はあると思います」
彼女がこれまでにしたことは、全部ジョサイアのためだったと思えば、オフィーリア様にはその権利があると頷いた。
「そうでしょう? そもそもジョサイアが、僕は好きな女性と結婚したいからと、自己主張すれば良かったのに、変な自己犠牲の道を進んだから、こんなことになったのよ! まあ、私は今幸せだし結果が良かったから、別に恨んでもないわ。幸せになれば良いと思う……性格的に合わなくて嫌いだけど、憎い訳でもないから」
そう言ってあっけらかんとオフィーリア様は笑ったので、私はつられて笑顔になった。
ひとしきり私たちは話して給仕が持って来たお茶を飲んだオフィーリア様は、婚約破棄された私がどんな仕事をしようとしていたのか、気になったらしい。
彼女もこれからは恋仲の豪商の妻として生きて行くみたいだし、貴族の身で仕事をしようとしている私の話が気になったのかもしれない。
「あ……そうなんです。実は色々とあった時に、旅行をしていて……遠方の異国から来た商人から、果実の花から出来る精油の精製方法を買い取ったんです。それをこの国で売ろうと思っています。香りも良くて美容にも良いし、心身の安定を助けるんですよ」
私の始めようとしている商売の話を聞いて、オフィーリア様は心配そうな表情になった。
「ねえ。それって……大丈夫な話なの? 商人が全員が全員、悪どいとは言わないけど、利にさといことには間違いないわ。貴女みたいな貴族令嬢って、騙しやすいと思われてしまいそうだけど……」
「ふふっ……大丈夫です。その時の一緒に居た私の弟は、本当に頭の良い子で頼りになるんですよ。だから、精製方法を買い取った商人に気に入られたのは、実は私ではなく弟なんです」
実はあの時にアメデオが私が気に入った精油を見て、遠方ではなかなか買えないのならと、商人が話を持ちかけてくるように言葉巧みに誘導したのだ。
本当に頼りになる弟で、私はいつも助けて貰っている。
「貴族令嬢なのに……家庭教師ではなくて、商品を開発して商売を始めようとするなんて、物凄く珍しいわね」
確かにどんな理由があれど、結婚出来ず未婚のままになった貴族令嬢は、礼儀作法などを教える家庭教師になったりする。そして、仕事振りでは仕えた家の紹介で、結婚出来たりもするのだ。
けれど、あの時の私はもう結婚する気はなかった。
「私はもう、結婚するつもりがなかったんです。だから、ジョサイアにも一年後に別れようと言っていました……けど……」
そうだ……そういう……今まで考えていた、すべての前提が崩れてしまった今、私はどんな顔をして彼と会えば良いの?
戸惑った私が中途半端に言葉を止めてしまったことには触れず、オフィーリア様は肩を竦めて言った。
「その精油、気になるわ……私も使ってみたい。良かったら、またそれを持って会いに来てくれる?」
「はい! もちろんです。試作品をお持ちするようにします。少量しかないので、小瓶になってしまいますが……」
試作品はまだまだ改良の余地があり、他の香油と合わせる配合なども、商品化を見据えて試している段階だ。
だから、十分な量は持って来れないと伝えた私に、オフィーリア様は笑って首を横に振った。
「別に、それで構わないわ……その時に、帰ってからジョサイアと何を話したか教えてくれる? 誤解が解ければ、きっと上手くいくとは思うけど、もしあの意気地なしがそれでも何も言わなかったら、私がホールケーキをあの綺麗な顔にぶつけてあげるわ」
私が以前にしたことを、彼女はジョサイアにしようと言う。
「まあ……ふふっ。けど、オフィーリア様はそれをする権利はあると思います」
彼女がこれまでにしたことは、全部ジョサイアのためだったと思えば、オフィーリア様にはその権利があると頷いた。
「そうでしょう? そもそもジョサイアが、僕は好きな女性と結婚したいからと、自己主張すれば良かったのに、変な自己犠牲の道を進んだから、こんなことになったのよ! まあ、私は今幸せだし結果が良かったから、別に恨んでもないわ。幸せになれば良いと思う……性格的に合わなくて嫌いだけど、憎い訳でもないから」
そう言ってあっけらかんとオフィーリア様は笑ったので、私はつられて笑顔になった。
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