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23 相談
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◇◆◇
「……聖女様?」
目を開けると至近距離にあった整った顔に、私はすぐに口から出てきそうな悲鳴を手で押さえて押し殺した。
「……わっ……! びっくりした。ジュリアス……?」
「驚いたのは、こちらです。買い物から戻られたと聞けば、何度扉を叩いても返事がない。既に今は深夜です。心配になって合鍵を借りれば、部屋の中で昏睡状態ではないですか」
え。ジュリアス、何故か怒ってる? どうして?
……あ! 私、そうだ。あの木の小箱に……?」
そうだった。あれを封印がかかる前に元に戻そうとして、キスをしたはずだった。
私の手の中には、綺麗な若木の色に戻ったあの小箱があり、さっきまでどんなに力を入れても開かなかったはずなのに、簡単に開けることが出来た。
「わ! 綺麗!」
小箱の中には、綺麗な緑色の宝石が嵌まった指輪が鎮座していた。私はすぐ近くに居たジュリアスにそれを見せた。
「聖女様……これは?」
いぶかしげに聞いたジュリアスに、私は何度か頷いた。
「強い護りの魔法が掛けられた指輪で……ジュリアスにあげます。十分強いし何回も倒していると思うけど」
照れながら、私は指輪を渡した。受け取った彼は一瞬嬉しそうな顔になった後で、すぐ真面目な表情になった。
「聖女様……もしかして、そのために祝福を使ったんですか?」
「そうです。けど、こんな風に寝落ちてしまうとは、思わなくて……この前の花だって、全然何もなかったし……」
そうなのだ。だから、私はほんの軽い気持ちで古い小箱にキスをした。
「……おそらく、戻す時間に比例して力を使っているのかと。そういえば、僕に最初祝福を使った時も、聖女様は意識を失って倒れました。この小箱はそれ以上……百年は経過していると思いますので」
状況から推理したジュリアスは言葉は淡々としていて、なんだか怖かった。
「あの……ジュリアス」
「聖女様の祝福の力に関しては、まだ謎が多過ぎます。僕以外の何かに使用する時は、相談して貰えませんか」
それは本来なら口を出せないはずの聖女への要望ではあったけど、命令出来るならしていたはずであろう強い口調だった。
「ごめんなさい……」
「それに、僕は……いえ。ありがとうございます。聖女様の気持ちは、大変有り難いのですが……」
ジュリアスは何かを言いかけたけど、言わない方が良いと判断したのかその後の言葉を濁した。これをすれば彼に喜んで貰えると思ったんだけど、これは大失敗してしまったのかもしれない。
「ジュリアスに喜んで貰えると思ったんですけど、ごめんなさい……」
そう言って、彼を見上げると顔は間近にまで迫っていた。あっという間に、私たち二人の唇は重なり合っていた。
ジュリアスの若さを保つために必要なキスなら、昨日何度もしたはずだった。けど、彼なら嫌でもないし、私は嬉しい……けど、これには理由がない。
私とジュリアスは、まだキスをする関係でもないはずだけど。
毅然としてこれを断るなんて、欲のない良い子のすることだから……私としてはそれを甘受する悪い子で居たい。
「聖女様は僕を守ろうとしなくて、大丈夫です。役目は逆なので。けど、ありがとうございます……お気持ちは、とても嬉しいです」
やがて、目を合わせたまま離れたジュリアスは照れくさそうにして、渡した指輪をその指に嵌めてから胸に手を当てて微笑んだ。
「……聖女様?」
目を開けると至近距離にあった整った顔に、私はすぐに口から出てきそうな悲鳴を手で押さえて押し殺した。
「……わっ……! びっくりした。ジュリアス……?」
「驚いたのは、こちらです。買い物から戻られたと聞けば、何度扉を叩いても返事がない。既に今は深夜です。心配になって合鍵を借りれば、部屋の中で昏睡状態ではないですか」
え。ジュリアス、何故か怒ってる? どうして?
……あ! 私、そうだ。あの木の小箱に……?」
そうだった。あれを封印がかかる前に元に戻そうとして、キスをしたはずだった。
私の手の中には、綺麗な若木の色に戻ったあの小箱があり、さっきまでどんなに力を入れても開かなかったはずなのに、簡単に開けることが出来た。
「わ! 綺麗!」
小箱の中には、綺麗な緑色の宝石が嵌まった指輪が鎮座していた。私はすぐ近くに居たジュリアスにそれを見せた。
「聖女様……これは?」
いぶかしげに聞いたジュリアスに、私は何度か頷いた。
「強い護りの魔法が掛けられた指輪で……ジュリアスにあげます。十分強いし何回も倒していると思うけど」
照れながら、私は指輪を渡した。受け取った彼は一瞬嬉しそうな顔になった後で、すぐ真面目な表情になった。
「聖女様……もしかして、そのために祝福を使ったんですか?」
「そうです。けど、こんな風に寝落ちてしまうとは、思わなくて……この前の花だって、全然何もなかったし……」
そうなのだ。だから、私はほんの軽い気持ちで古い小箱にキスをした。
「……おそらく、戻す時間に比例して力を使っているのかと。そういえば、僕に最初祝福を使った時も、聖女様は意識を失って倒れました。この小箱はそれ以上……百年は経過していると思いますので」
状況から推理したジュリアスは言葉は淡々としていて、なんだか怖かった。
「あの……ジュリアス」
「聖女様の祝福の力に関しては、まだ謎が多過ぎます。僕以外の何かに使用する時は、相談して貰えませんか」
それは本来なら口を出せないはずの聖女への要望ではあったけど、命令出来るならしていたはずであろう強い口調だった。
「ごめんなさい……」
「それに、僕は……いえ。ありがとうございます。聖女様の気持ちは、大変有り難いのですが……」
ジュリアスは何かを言いかけたけど、言わない方が良いと判断したのかその後の言葉を濁した。これをすれば彼に喜んで貰えると思ったんだけど、これは大失敗してしまったのかもしれない。
「ジュリアスに喜んで貰えると思ったんですけど、ごめんなさい……」
そう言って、彼を見上げると顔は間近にまで迫っていた。あっという間に、私たち二人の唇は重なり合っていた。
ジュリアスの若さを保つために必要なキスなら、昨日何度もしたはずだった。けど、彼なら嫌でもないし、私は嬉しい……けど、これには理由がない。
私とジュリアスは、まだキスをする関係でもないはずだけど。
毅然としてこれを断るなんて、欲のない良い子のすることだから……私としてはそれを甘受する悪い子で居たい。
「聖女様は僕を守ろうとしなくて、大丈夫です。役目は逆なので。けど、ありがとうございます……お気持ちは、とても嬉しいです」
やがて、目を合わせたまま離れたジュリアスは照れくさそうにして、渡した指輪をその指に嵌めてから胸に手を当てて微笑んだ。
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