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04 夜会会場へ
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「言って置くけれど、オルランド。私はもう、レスター殿下を好きではないことは確かよ。けれど、彼に近付く女性に嫉妬に駆られて怪我をさせようとしたり……ええ。とんでもないことをするような女なのよ。それでも良いの?」
「それは、俺が君以外を愛さないと誓えば、それで済む話ではないですか。クラウディア」
オルランドは余裕の笑みを浮かべた。ついさっきまで動揺していたけれど、あれは本当に突発的事態で驚いてしまっていただけらしい。
「そうね。世の男性はそれがわかっていない人が多すぎるわ。嫉妬は醜いと嫌悪するくせに、それを起こさせない努力を怠っている。私だって、彼に女性が近づかなければ、何もしなかったはずなのに」
オルランドは見上げる私の頬に触れて、優しく言った。
「俺はわかっています。クラウディア。君がとても愛情深い女の子で、レスター殿下のことを……本当に好きだったこともです」
その時、私の右目からぽろりと涙が落ちた。そうだった。クラウディアはレスターのことを本当に好きだった。好きだったから、蔑ろにされて悲しかった。
ずっと私のことだけを見ていて欲しかったのに、そうしてもらえなかったから。
「……オルランド。貴方は王族から、女性を奪ったことになるわよ」
「両陛下も向こうも相手が居るとわかっているので、そう問題にはなさらないかと……実は、今夜クラウディアが婚約破棄されることを教えてくれたのは、王妃陛下なのです」
「まあ! 王妃様が」
そうだった。レスター殿下と婚約が決まったのは、彼女の鶴の一声だった。私と結婚させたいと……彼女が望んだから。
「ご自分が無理矢理、クラウディアとレスター殿下と婚約させてしまったからだと……俺の元へ手紙を。だから、ここで待つことが出来たんです」
「それならば、何の問題もないわね。行きましょう。オルランド……レスター殿下より先に、私が彼を捨てることにするわ」
確かにマリアを害そうとしたことは事実だけれど、すべては未遂に終わっている。そして、王妃陛下がここにオルランドを待たせていたとするならば……レスター殿下との婚約を問題なく解消すれば、彼女がきっと、不問にしてくれるだろう。
「……良いと思います。俺はクラウディアのそういう勝ち気なところが好きだった。そういう君が見られて嬉しい」
その時、オルランドの顔に幼い男の子の顔が重なって見えた。クラウディアと幼い声で呼ばれたような気にも。
そうだ……私の初恋だった。けれど、臣下である公爵家が王族からの縁談を断ることなんて出来るわけがなくて……私は初恋を忘れることを選んだんだわ。
「ねえ。私たち初恋同士だったのね。オルランド……助けに来てくれてありがとう……」
正直に言えばすごく不安だったし、逃げ出したくて堪らなかった。けれど、いつかは受ける罰と言うのなら、早いほうが良いと覚悟を決めていたのだ。
そこに、一緒に行くと言ってくれたオルランドを、未来の伴侶として選ばないわけはなかった。
「行きましょう。クラウディア。婚約解消さえしてしまえば、自由の身です」
コツコツと石畳を歩く靴音が響いた。
そうだった。レスター殿下だってマリアだって、私のような悪役令嬢が居なくなれば嬉しいはず。
だから、全方面良い結末になるんだわ。
「そうね。オルランド。私……そうしたら、初恋をやり直しましょう」
私たちは既に、夜会が始まった大広間の扉へと向かった。貴族たちはもう踊り出していて、軽快な音楽が扉の向こうから聞こえて来る。
不思議なものだ。私はあの時、オルランドに呼び止められなければ、断罪されて地下牢へと収監されることになっただろうに。
あの時に立ち止まった、ただそれだけのことで、結末は大きく違うものになった。
Fin
「それは、俺が君以外を愛さないと誓えば、それで済む話ではないですか。クラウディア」
オルランドは余裕の笑みを浮かべた。ついさっきまで動揺していたけれど、あれは本当に突発的事態で驚いてしまっていただけらしい。
「そうね。世の男性はそれがわかっていない人が多すぎるわ。嫉妬は醜いと嫌悪するくせに、それを起こさせない努力を怠っている。私だって、彼に女性が近づかなければ、何もしなかったはずなのに」
オルランドは見上げる私の頬に触れて、優しく言った。
「俺はわかっています。クラウディア。君がとても愛情深い女の子で、レスター殿下のことを……本当に好きだったこともです」
その時、私の右目からぽろりと涙が落ちた。そうだった。クラウディアはレスターのことを本当に好きだった。好きだったから、蔑ろにされて悲しかった。
ずっと私のことだけを見ていて欲しかったのに、そうしてもらえなかったから。
「……オルランド。貴方は王族から、女性を奪ったことになるわよ」
「両陛下も向こうも相手が居るとわかっているので、そう問題にはなさらないかと……実は、今夜クラウディアが婚約破棄されることを教えてくれたのは、王妃陛下なのです」
「まあ! 王妃様が」
そうだった。レスター殿下と婚約が決まったのは、彼女の鶴の一声だった。私と結婚させたいと……彼女が望んだから。
「ご自分が無理矢理、クラウディアとレスター殿下と婚約させてしまったからだと……俺の元へ手紙を。だから、ここで待つことが出来たんです」
「それならば、何の問題もないわね。行きましょう。オルランド……レスター殿下より先に、私が彼を捨てることにするわ」
確かにマリアを害そうとしたことは事実だけれど、すべては未遂に終わっている。そして、王妃陛下がここにオルランドを待たせていたとするならば……レスター殿下との婚約を問題なく解消すれば、彼女がきっと、不問にしてくれるだろう。
「……良いと思います。俺はクラウディアのそういう勝ち気なところが好きだった。そういう君が見られて嬉しい」
その時、オルランドの顔に幼い男の子の顔が重なって見えた。クラウディアと幼い声で呼ばれたような気にも。
そうだ……私の初恋だった。けれど、臣下である公爵家が王族からの縁談を断ることなんて出来るわけがなくて……私は初恋を忘れることを選んだんだわ。
「ねえ。私たち初恋同士だったのね。オルランド……助けに来てくれてありがとう……」
正直に言えばすごく不安だったし、逃げ出したくて堪らなかった。けれど、いつかは受ける罰と言うのなら、早いほうが良いと覚悟を決めていたのだ。
そこに、一緒に行くと言ってくれたオルランドを、未来の伴侶として選ばないわけはなかった。
「行きましょう。クラウディア。婚約解消さえしてしまえば、自由の身です」
コツコツと石畳を歩く靴音が響いた。
そうだった。レスター殿下だってマリアだって、私のような悪役令嬢が居なくなれば嬉しいはず。
だから、全方面良い結末になるんだわ。
「そうね。オルランド。私……そうしたら、初恋をやり直しましょう」
私たちは既に、夜会が始まった大広間の扉へと向かった。貴族たちはもう踊り出していて、軽快な音楽が扉の向こうから聞こえて来る。
不思議なものだ。私はあの時、オルランドに呼び止められなければ、断罪されて地下牢へと収監されることになっただろうに。
あの時に立ち止まった、ただそれだけのことで、結末は大きく違うものになった。
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