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10 恩恵①
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カタンとバルコニーから音がして、反射的にパッとそちらの方向を見たけれど、しんと静まり返り何かが風で動いただけのようだった。
今夜もここへと、やって来るはずの……イーサンでは、なかった。
そう思ってガッカリしてしまっている自分に気が付き、はあと大きくため息をついた。
イーサンは、素敵な男性だ。彼は聖騎士で精悍で凜々しく整った容姿を持っているし、誠実で泣いている私を放っておけないほどに心優しい人だ。
これで、心惹かれるなと言う方が難しい。
……けれど、私は彼とは結婚することは出来ない。これは、決定事項だった。
道楽で冒険者をしている彼が、どこかの国に仕える優秀な騎士だとしても、ヘイスター王国でオブライエン侯爵家を継いでくれる男性でなくてはいけないから、恋に落ちても結婚は出来ないのだからどうしようもない。
私自身がそこをわきまえていたなら、素敵な男性に憧れているだけで終われるはずよ。きっと。
必要以上に意識することは、避けなければ。
「……それにしても、遅いわ。何かあったのかしら」
壁掛け時計の針が差す数字を見て、まだここに来ない彼を不思議に思った。
就寝前の私に気を使ってか、イーサンはこれまで、あまり遅くならない時間に来てくれていた。
私たちの住んでいる王都の地下にある『ヘイスターの地下迷宮』は、どうやら彼らの話を聞くところによると、最下層50階までの階層があり1階1階攻略しては下の階層へ下がっていくという手順(システム)らしい。
だから、彼ら三人はそろそろ帰ろうかという時間になると、適当なところで切り上げて帰って来るらしい。
何故、冒険者たちが『ヘイスターの地下迷宮』に集まるかというと、初心者は比較的浅い場所で経験値を積めるし、中級者も自分たちのレベルに合った階層で、新しく組んだパーティのチームワークの確認などをしたりするらしい。
もちろん、イーサンたち三人が受けるSSランク昇級試験にも使用されるくらい強い魔獣も棲んでいるけれど、下の階層まで降りなければ出会うことがない。
つまり、|強くなる鍛錬(レベルアップ)に丁度良く、かつ各階にあるワープゾーンに入れば、すぐに王都の街へと転送されるのだった。
そして、どんな構造でそうなっているのかわからないけれど、攻略した階については、いつでもワープゾーンを使用して行くことが出来るらしい。
私は行くこともないし必要のないことだったから、全く内部の様子などを知らなかった。
けれど、こんなにも便利に設備の整ったダンジョンならば、世界中から冒険者が集まって来るというのも頷ける。
だから、ヘイスター王国王都には冒険者の姿をよく見かけたわけだった。
Sランク保持冒険者であるイーサンたちパーティは、気ままにクエストを受注してこなしていて『ヘイスターの地下迷宮』には、これまで来たことがなかったらしい。
だから、彼ら三人がとても強いとは言っても、1階から順にクリアをして階層を降りて行く必要があるそうだ。
とても時間が掛かるから、SSランク昇級試験をこれまでは避けていたのだけど、せっかくならば昇級したいと特別に時間を取ってからヘイスター王国へとやって来たらしい。
そんな訳で、彼ら三人はまだ余裕あるダンジョンを攻略をしているし、夜は私に会う予定もあるから帰って来ているという訳だった。
……けれど、こういった彼らの詳しい事情を私が聞いた時に思ったのは、まだ『セーブポイント』を使用しないといけないくらいに、危険な場所には行かないのではないかということだ。
つまりは、まだイーサンは私の所に来る必要はないのではないかと……もしかしたら。
私は頭に浮かんだ浮かれた幻想を振り払うように、頭を横に振った。いけないいけない。何を考えているのかしら。
イーサンは『あの時、何故私が泣いていたか』を知りたがっていたし……彼は優しいから気になったのだわ。
今夜もここへと、やって来るはずの……イーサンでは、なかった。
そう思ってガッカリしてしまっている自分に気が付き、はあと大きくため息をついた。
イーサンは、素敵な男性だ。彼は聖騎士で精悍で凜々しく整った容姿を持っているし、誠実で泣いている私を放っておけないほどに心優しい人だ。
これで、心惹かれるなと言う方が難しい。
……けれど、私は彼とは結婚することは出来ない。これは、決定事項だった。
道楽で冒険者をしている彼が、どこかの国に仕える優秀な騎士だとしても、ヘイスター王国でオブライエン侯爵家を継いでくれる男性でなくてはいけないから、恋に落ちても結婚は出来ないのだからどうしようもない。
私自身がそこをわきまえていたなら、素敵な男性に憧れているだけで終われるはずよ。きっと。
必要以上に意識することは、避けなければ。
「……それにしても、遅いわ。何かあったのかしら」
壁掛け時計の針が差す数字を見て、まだここに来ない彼を不思議に思った。
就寝前の私に気を使ってか、イーサンはこれまで、あまり遅くならない時間に来てくれていた。
私たちの住んでいる王都の地下にある『ヘイスターの地下迷宮』は、どうやら彼らの話を聞くところによると、最下層50階までの階層があり1階1階攻略しては下の階層へ下がっていくという手順(システム)らしい。
だから、彼ら三人はそろそろ帰ろうかという時間になると、適当なところで切り上げて帰って来るらしい。
何故、冒険者たちが『ヘイスターの地下迷宮』に集まるかというと、初心者は比較的浅い場所で経験値を積めるし、中級者も自分たちのレベルに合った階層で、新しく組んだパーティのチームワークの確認などをしたりするらしい。
もちろん、イーサンたち三人が受けるSSランク昇級試験にも使用されるくらい強い魔獣も棲んでいるけれど、下の階層まで降りなければ出会うことがない。
つまり、|強くなる鍛錬(レベルアップ)に丁度良く、かつ各階にあるワープゾーンに入れば、すぐに王都の街へと転送されるのだった。
そして、どんな構造でそうなっているのかわからないけれど、攻略した階については、いつでもワープゾーンを使用して行くことが出来るらしい。
私は行くこともないし必要のないことだったから、全く内部の様子などを知らなかった。
けれど、こんなにも便利に設備の整ったダンジョンならば、世界中から冒険者が集まって来るというのも頷ける。
だから、ヘイスター王国王都には冒険者の姿をよく見かけたわけだった。
Sランク保持冒険者であるイーサンたちパーティは、気ままにクエストを受注してこなしていて『ヘイスターの地下迷宮』には、これまで来たことがなかったらしい。
だから、彼ら三人がとても強いとは言っても、1階から順にクリアをして階層を降りて行く必要があるそうだ。
とても時間が掛かるから、SSランク昇級試験をこれまでは避けていたのだけど、せっかくならば昇級したいと特別に時間を取ってからヘイスター王国へとやって来たらしい。
そんな訳で、彼ら三人はまだ余裕あるダンジョンを攻略をしているし、夜は私に会う予定もあるから帰って来ているという訳だった。
……けれど、こういった彼らの詳しい事情を私が聞いた時に思ったのは、まだ『セーブポイント』を使用しないといけないくらいに、危険な場所には行かないのではないかということだ。
つまりは、まだイーサンは私の所に来る必要はないのではないかと……もしかしたら。
私は頭に浮かんだ浮かれた幻想を振り払うように、頭を横に振った。いけないいけない。何を考えているのかしら。
イーサンは『あの時、何故私が泣いていたか』を知りたがっていたし……彼は優しいから気になったのだわ。
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