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23 約束
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結局、クラウディアは身分や父親からの陳情書、そして初犯の温情で牢には入らず、ブラント伯爵領にて当分の間は謹慎処分となった。
これまでのことが貴族の中で悪い噂として飛び回り、とても貴族令嬢としての優雅な生活は出来ない。すべてを知った王族のオルランド様は非常にお怒りのようで、それはそれで自分のしたことが、自分に返って来たとも言えるのかもしれない。
そんな中で噂の渦中にある私とイーサンは、とりあえず、ゴールセン王国へと向かうことになった。
……そうなのだ。彼らがヘイスターの地下迷宮で取得する予定だったSSランクの昇級試験については、一度中断することになった。
ヴァレリオとジョセフィンは、違う馬車に乗っている。なんでも、自分たちで馬車賃を出して良いから一緒の馬車は嫌だと言ったのだ。
「レティシア……そろそろ疲れましたか?」
「いいえ。大丈夫よ」
私はヘイスター王都のオブライエン侯爵邸でこれまでの生涯のほとんどを暮らし、旅行なんてしたこともなかった。
だから、荷造りをしたり長距離馬車に乗ったり、何もかもが新鮮な驚きに満ちていた。
イーサンはとても心配性で旅慣れない私が車酔いをしていないかが気になり、何度も尋ねてくれるのだ。
「ヘイスターの国境は越えた……あとは、なだらかな道になるから、大丈夫だよ。レティシア」
どうやらゴールデン王国に入ったらしい。それは、彼の父であるランチェスター辺境伯が治める領地へと帰ってきたということだ。
本当は、イーサンは既にSSランク冒険者になって、悠々と帰っていただろうに……私のことで、彼にはずいぶんと時間を使わせてしまった。
「……ごめんなさい。私のせいで」
ゴールデン王国へと向かう馬車の中で、隣に座るイーサンと見つめ合い、どうしても涙がこぼれてしまった。
私が何を言わんとしているかを悟ったイーサンは、微笑んで首を横に振った。
「いいえ。レティシアのおかげで、俺たちも助かりました……問題ないですよ。それに、事前に『セーブポイント』を作っていなかったしたら、俺もまだ足が折れたままかと思うので……まだ帰れてないでしょうね」
「ふふ……けれど、イーサンはその目の中に居る精霊が、治療してくれるのではないの?」
「あの時も言いましたけど、足が折れたり……致命的な損傷がある場合は、流石に神官のような、本職でないと完全治療は無理ですね……レティシアの傷ついた心も、この目が、治療出来れば良いんですけど……」
イーサンの緑の目から見る間にじんわりとした光が滲み出てきて、私はほうとため息をついた。
その中に精霊が居ることは一目瞭然なのだけれど、何度見ても、本当に不思議な気持ちになるのだ。
「これって……イーサンの子どもにも、受け継がれるんですか?」
「ああ。俺と君の子も、おそらくは緑の目で、中には精霊が棲むことになる」
私は心に浮かんだ疑問をそのまま聞いただけなのだけれど、イーサンは苦笑しながらそう言った。
……そうだった。
なんだか、まったく実感が湧かないけれど、私たち二人は近い未来、結婚するのだわ。そして、子どもだって生まれるだろう。
「……レティシアには男の子を、二人以上産んで貰うことになります。多ければ多いだけ良いです。俺のように風来坊に憧れる変わり者が混じっていると、親も子も大変なので」
「あら……私も、もしかしたら、実はそうかもしれません……今まで、出来なかっただけで……」
私は馬車の窓から、外を見た。
これまでに見た事のない世界で、流れていく景色を見ているだけで胸が高鳴った。
「レティシアは……今まで、やりたいことが出来なかっただけで、したいことがあればすれば良いと思います」
私の隣に座るイーサンは自分のやりたい事を勝ち取るために、多くの戦場で戦功を治め、ゴールセン王国では英雄騎士イーサンと呼ばれているらしい。
国王も彼の父親もイーサンを冒険者として自由にさせているのは、他国に取られるよりは自由にしたいようにさせてやろうと思っているのかもしれない。
「……いいえ。私は邸で帰りを待って居ます。貴方の『セーブポイント』で良いんです。だって、絶対に私の元に帰って来るでしょう?」
私はそう思った。だって、安全な場所に居る私に過去触れた時間に戻れるのなら、イーサンは安心して冒険することが出来る。
私はそういう役目で良い。どこに行くにも束縛されない、自由な冒険者でなくても。
彼が私の元に帰って来てくれるなら。
「……何があったとしても、絶対に君の元に戻ると約束します」
そう言って、イーサンは私に初めてのキスをした。
Fin
これまでのことが貴族の中で悪い噂として飛び回り、とても貴族令嬢としての優雅な生活は出来ない。すべてを知った王族のオルランド様は非常にお怒りのようで、それはそれで自分のしたことが、自分に返って来たとも言えるのかもしれない。
そんな中で噂の渦中にある私とイーサンは、とりあえず、ゴールセン王国へと向かうことになった。
……そうなのだ。彼らがヘイスターの地下迷宮で取得する予定だったSSランクの昇級試験については、一度中断することになった。
ヴァレリオとジョセフィンは、違う馬車に乗っている。なんでも、自分たちで馬車賃を出して良いから一緒の馬車は嫌だと言ったのだ。
「レティシア……そろそろ疲れましたか?」
「いいえ。大丈夫よ」
私はヘイスター王都のオブライエン侯爵邸でこれまでの生涯のほとんどを暮らし、旅行なんてしたこともなかった。
だから、荷造りをしたり長距離馬車に乗ったり、何もかもが新鮮な驚きに満ちていた。
イーサンはとても心配性で旅慣れない私が車酔いをしていないかが気になり、何度も尋ねてくれるのだ。
「ヘイスターの国境は越えた……あとは、なだらかな道になるから、大丈夫だよ。レティシア」
どうやらゴールデン王国に入ったらしい。それは、彼の父であるランチェスター辺境伯が治める領地へと帰ってきたということだ。
本当は、イーサンは既にSSランク冒険者になって、悠々と帰っていただろうに……私のことで、彼にはずいぶんと時間を使わせてしまった。
「……ごめんなさい。私のせいで」
ゴールデン王国へと向かう馬車の中で、隣に座るイーサンと見つめ合い、どうしても涙がこぼれてしまった。
私が何を言わんとしているかを悟ったイーサンは、微笑んで首を横に振った。
「いいえ。レティシアのおかげで、俺たちも助かりました……問題ないですよ。それに、事前に『セーブポイント』を作っていなかったしたら、俺もまだ足が折れたままかと思うので……まだ帰れてないでしょうね」
「ふふ……けれど、イーサンはその目の中に居る精霊が、治療してくれるのではないの?」
「あの時も言いましたけど、足が折れたり……致命的な損傷がある場合は、流石に神官のような、本職でないと完全治療は無理ですね……レティシアの傷ついた心も、この目が、治療出来れば良いんですけど……」
イーサンの緑の目から見る間にじんわりとした光が滲み出てきて、私はほうとため息をついた。
その中に精霊が居ることは一目瞭然なのだけれど、何度見ても、本当に不思議な気持ちになるのだ。
「これって……イーサンの子どもにも、受け継がれるんですか?」
「ああ。俺と君の子も、おそらくは緑の目で、中には精霊が棲むことになる」
私は心に浮かんだ疑問をそのまま聞いただけなのだけれど、イーサンは苦笑しながらそう言った。
……そうだった。
なんだか、まったく実感が湧かないけれど、私たち二人は近い未来、結婚するのだわ。そして、子どもだって生まれるだろう。
「……レティシアには男の子を、二人以上産んで貰うことになります。多ければ多いだけ良いです。俺のように風来坊に憧れる変わり者が混じっていると、親も子も大変なので」
「あら……私も、もしかしたら、実はそうかもしれません……今まで、出来なかっただけで……」
私は馬車の窓から、外を見た。
これまでに見た事のない世界で、流れていく景色を見ているだけで胸が高鳴った。
「レティシアは……今まで、やりたいことが出来なかっただけで、したいことがあればすれば良いと思います」
私の隣に座るイーサンは自分のやりたい事を勝ち取るために、多くの戦場で戦功を治め、ゴールセン王国では英雄騎士イーサンと呼ばれているらしい。
国王も彼の父親もイーサンを冒険者として自由にさせているのは、他国に取られるよりは自由にしたいようにさせてやろうと思っているのかもしれない。
「……いいえ。私は邸で帰りを待って居ます。貴方の『セーブポイント』で良いんです。だって、絶対に私の元に帰って来るでしょう?」
私はそう思った。だって、安全な場所に居る私に過去触れた時間に戻れるのなら、イーサンは安心して冒険することが出来る。
私はそういう役目で良い。どこに行くにも束縛されない、自由な冒険者でなくても。
彼が私の元に帰って来てくれるなら。
「……何があったとしても、絶対に君の元に戻ると約束します」
そう言って、イーサンは私に初めてのキスをした。
Fin
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感想ありがとうございます♡
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