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04 会ったばかり

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 むうっと私が彼を見上げれば、彼は簡易的な鎧の金具を手慣れた様子で外していた。お風呂の中に入って行くけど……良いのかな。革製品でしょう?

「俺は好きだよ。さっさと、素直になれよ」

 俺たち二人はお互いに好きなんだからと言う、断定的な口調。彼がそう言うのならそれはその通りなんだけど、なんだか態度が癪に触った。

「私たち……さっき、会ったばかりなのに?」

 そうだ。出会ってから時間にしたら、多分十分も経ってない。経ってないのに、こんなとんでもない提案に惹かれてしまう私がそこに居た。

「大体の人間は恋愛対象だと誰かを定めるのに、そんなには時間を掛けない。恋に落ちる時は、一瞬だよ。自分にとって、相手がありかなしか。ただ、それだけだ」

 彼は肩を竦めて余裕な顔で笑った。そう言うところも、なんとなく好きだ。良くわからないけど、理由もわからずに良いなって思ってしまう。

 呼びかけようとして、二人で同じ湯船に浸かっていると言うのに、彼の名前も知らないことを思い出した。

「私は、浮田美冬。そっちの名前は?」

「ノエル・ラッパースヴィル。返事は? ミフユ」

 やっぱり二人の間には、何か不思議な翻訳機能のようなものが間にはあるのかもしれない。彼が私の名前を呼ぶ時にだけ、妙なイントネーションになってしまっていた。

 返事はひとつしかない。

 だって、ノエルは私の理想のような男性だし、私は今この現実に未練と言えるものはないし、彼が異世界帰るって言うのなら私も付いて行きたいし。

「付き合っても良いけど……」

「じゃあ、触りたい」

 私が彼の提案に頷こうとしたら、ノエルが間髪入れずにこう言った。

「え? 待って……触りたい? 私の体に?」

「触りたい。俺は本当に、良く我慢している。ミフユとこんな状況で、ちゃんと付き合うまで持って言った。すごい。とても偉いと思っている」

 何度か頷きながらノエルは上に着ていた黒いシャツを脱ぎ、白い泡で見えないけど水面下でベルトを外し始めた……?

「え。待って。何するの?」

 もしかして、襲いかからなかっただけ良かったと言いたいのかな? けど、私は別に嫌な気はしなかった。何でだろう。ノエルとは初対面なのに。

 まだ名前だって、さっき教え合ったところなのに。

「ミフユ……これまでに、彼氏がいた事ある?」

 ノエルが胸がドキッとしてしまうくらいに真剣な眼差しで聞くので、私は慌てて首を横に振った。

「え。居たことないけど……なんでそんなこと聞くの?」

 なんとなくこれまで機会を全部逃して、この年齢までお一人様だ。

 それを答えた時に良くされるように揶揄われるかと思ったけど、ノエルはすんなりと頷いた。

「……初めてとそれ以外で対応が変わるから。別に意味は無いから。単なる確認だよ」
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