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05 任せて
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「ねえ。もしかして……慣れてるの?」
私はノエルにそれを聞いてから、後悔した。今付き合うばかりになった人のそういった過去を知って、何になると言うのだろうか。
敢えて言うなら、ノエルの過去の女関係なんて知りたくもない。やきもちを妬いてしまうこと請け合いだから。
ノエルは苦笑して泡の中にある私の手を手探りで掴むと、自分の心臓の上へと導いた。ドクドクと言う力強い鼓動。彼が今生きているという証拠。
「そんなことないよ。ほら。ミフユと一緒に居ると、こんなにドキドキしてる……な?」
不安そうにみえたのか私を安心させるように、ゆっくりとした速度でノエルは言った。安心する。温かい人肌。私が今まで知らなかったぬくもり。
「……ほんとだ。生きてるね」
「生きてるよ」
私は気取ってホテルの用意したシャンパンも飲んでいたしあり得ない事態に気持ちは昂っていて、その時に思わず声を出して笑ってしまった。
「……触る? 先にミフユが俺を触ってよ。安心して。動かないようにするから」
どうぞと言わんばかりにノエルが両腕を開いたので、私はそろりと近づいた……なんでだろう。彼から感じる、この妙な安心感は。
ノエルに触れていると、なんだかすごく安心する。
「あったかい」
「……まあ、風呂に入ってるしな」
ゆっくりと筋肉の張り出した胸を触って、太い腕を触る。続けてノエルの頬を触ると、彼はくすぐったそうな顔を見せた。
「カッコ良いね」
どんな表情も様になっていて、とっても素敵な人。私はノエルの顔を見て自然と出てきた感想を言っただけなんだけど、彼は目を細めて揶揄うように頷いた。
「良く言われる」
「……言うんじゃなかった」
ナルシストっていうんでもなく、ノエルはあくまで自然体。
これまで数を数えきれないほどに、私ではない女性に言われてきたんだろうなって思ってしまった。
だから、若干イラッとしてしまった。出会ってもいない過去なのに。彼は何も悪くないのに。
「どうして。ミフユに褒められて、嬉しかった」
ノエルは、顔が赤くなっているように見える。さっき服を脱いだ時に、濡れた服が薄紫色の髪を濡らして、やけに色っぽい。
「……私のことも触って。ノエル。どうして良いか、わからないの」
そうだ。彼の体をペタペタと触ったけど、これからどうすれば良いのかわからない。
この先を知っていれば、自然とそういう動きが出来るのかもしれないけど、全くわからないから仕方ない。初心者すぎて、未知すぎる。
「……うん。わかった。俺に任せて」
ノエルは慎重に私の腰に手を置いて、自分の方へと引き寄せた。滑らかな人肌、体を取り巻く泡風呂の濃密な白い泡を押し除けるように、彼は私の体をなぞった。
「ふあっ……」
私はノエルにそれを聞いてから、後悔した。今付き合うばかりになった人のそういった過去を知って、何になると言うのだろうか。
敢えて言うなら、ノエルの過去の女関係なんて知りたくもない。やきもちを妬いてしまうこと請け合いだから。
ノエルは苦笑して泡の中にある私の手を手探りで掴むと、自分の心臓の上へと導いた。ドクドクと言う力強い鼓動。彼が今生きているという証拠。
「そんなことないよ。ほら。ミフユと一緒に居ると、こんなにドキドキしてる……な?」
不安そうにみえたのか私を安心させるように、ゆっくりとした速度でノエルは言った。安心する。温かい人肌。私が今まで知らなかったぬくもり。
「……ほんとだ。生きてるね」
「生きてるよ」
私は気取ってホテルの用意したシャンパンも飲んでいたしあり得ない事態に気持ちは昂っていて、その時に思わず声を出して笑ってしまった。
「……触る? 先にミフユが俺を触ってよ。安心して。動かないようにするから」
どうぞと言わんばかりにノエルが両腕を開いたので、私はそろりと近づいた……なんでだろう。彼から感じる、この妙な安心感は。
ノエルに触れていると、なんだかすごく安心する。
「あったかい」
「……まあ、風呂に入ってるしな」
ゆっくりと筋肉の張り出した胸を触って、太い腕を触る。続けてノエルの頬を触ると、彼はくすぐったそうな顔を見せた。
「カッコ良いね」
どんな表情も様になっていて、とっても素敵な人。私はノエルの顔を見て自然と出てきた感想を言っただけなんだけど、彼は目を細めて揶揄うように頷いた。
「良く言われる」
「……言うんじゃなかった」
ナルシストっていうんでもなく、ノエルはあくまで自然体。
これまで数を数えきれないほどに、私ではない女性に言われてきたんだろうなって思ってしまった。
だから、若干イラッとしてしまった。出会ってもいない過去なのに。彼は何も悪くないのに。
「どうして。ミフユに褒められて、嬉しかった」
ノエルは、顔が赤くなっているように見える。さっき服を脱いだ時に、濡れた服が薄紫色の髪を濡らして、やけに色っぽい。
「……私のことも触って。ノエル。どうして良いか、わからないの」
そうだ。彼の体をペタペタと触ったけど、これからどうすれば良いのかわからない。
この先を知っていれば、自然とそういう動きが出来るのかもしれないけど、全くわからないから仕方ない。初心者すぎて、未知すぎる。
「……うん。わかった。俺に任せて」
ノエルは慎重に私の腰に手を置いて、自分の方へと引き寄せた。滑らかな人肌、体を取り巻く泡風呂の濃密な白い泡を押し除けるように、彼は私の体をなぞった。
「ふあっ……」
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