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12 誰よりも
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真剣な彼の言葉が、なんとなく違和感があるように思えて私は彼の胸に頬を寄せつつ言った。
「私は、ユーウェインの婚約者だわ……どこにも行かないわよ……」
胸に当てた耳から聞こえるのは、速い速度でユーウェインの心臓は鼓動の音を刻む。
あの時、確かに彼に殺されてしまったと思っていたけど……あれは他でもない私を救うためだったと思えば、仕方ないものだったとも。
リチャードとルイーゼ嬢は、明日愛を誓い合う。そして、これがきっと……私とユーウェインのハッピーエンド。
◇◆◇
これから、城で立場上の仕事があるからとセシルには先に帰って貰った。
その言葉は、間違ってはいない。あの人には、出来るだけ嘘をつきたくない。誰よりも、愛しているから。
広い廊下を乱暴な足音をさせて走ってくる大きな音を聞いて、俺は目を細めつつ彼の到着を待った。
きっと、こうなるだろうと予測していた。この結婚式を以て、乙女ゲームはエンディングを迎えるからだ。
一番簡単なルートの、正ヒーローとのハッピーエンドだ。
セシルがなるはずだった悪役令嬢は、すぐに引き下がったのでいくつかの恋愛イベントがなくなってしまったのかもしれない。
だが、好感度が元々高い正ヒーローとは重要な選択肢さえ間違わなければ支障はない。イレギュラーはあったとしても、ここまでヒロインはエンディングまで辿り着けた訳だ。
楽しかったはずの恋愛イベントを起こせなかったヒロインは、あまり満足出来なかったかもしれない。それもこれも。セシルを手に入れた俺にとっては、どうでも良いことだが。
花婿用の豪華な衣装を着用し、パッケージに一番大きく描かれるメインヴィジュアルの王太子リチャード・ヴァイスキルヘンは、顔を大きく歪ませていた。彼を待っていた俺を、鋭く睨み付けた。
「ユーウェイン。お前。知っていたな?」
慌てて彼に付いて走って来た何人かの護衛は、同じく荒い息をして立ち止まった。儀礼用の重い鎧を着ているのに、大変だったことだろう。
「何のことですか?」
「僕があの女に……ルイーゼに、何か操られるような術を掛けられていたことだ」
「さぁ。どうでしょうか」
素知らぬ顔をして肩を竦めた俺に対し、リチャードは悔しそうにして、ますます顔を歪める。俺は過去の自分の立てていた仮説に、これで確信を得た。
「私は、ユーウェインの婚約者だわ……どこにも行かないわよ……」
胸に当てた耳から聞こえるのは、速い速度でユーウェインの心臓は鼓動の音を刻む。
あの時、確かに彼に殺されてしまったと思っていたけど……あれは他でもない私を救うためだったと思えば、仕方ないものだったとも。
リチャードとルイーゼ嬢は、明日愛を誓い合う。そして、これがきっと……私とユーウェインのハッピーエンド。
◇◆◇
これから、城で立場上の仕事があるからとセシルには先に帰って貰った。
その言葉は、間違ってはいない。あの人には、出来るだけ嘘をつきたくない。誰よりも、愛しているから。
広い廊下を乱暴な足音をさせて走ってくる大きな音を聞いて、俺は目を細めつつ彼の到着を待った。
きっと、こうなるだろうと予測していた。この結婚式を以て、乙女ゲームはエンディングを迎えるからだ。
一番簡単なルートの、正ヒーローとのハッピーエンドだ。
セシルがなるはずだった悪役令嬢は、すぐに引き下がったのでいくつかの恋愛イベントがなくなってしまったのかもしれない。
だが、好感度が元々高い正ヒーローとは重要な選択肢さえ間違わなければ支障はない。イレギュラーはあったとしても、ここまでヒロインはエンディングまで辿り着けた訳だ。
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慌てて彼に付いて走って来た何人かの護衛は、同じく荒い息をして立ち止まった。儀礼用の重い鎧を着ているのに、大変だったことだろう。
「何のことですか?」
「僕があの女に……ルイーゼに、何か操られるような術を掛けられていたことだ」
「さぁ。どうでしょうか」
素知らぬ顔をして肩を竦めた俺に対し、リチャードは悔しそうにして、ますます顔を歪める。俺は過去の自分の立てていた仮説に、これで確信を得た。
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