まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

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第一部

011急停止

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「透子さん……まず人狼たちは、女性をすごく大事に扱います。数が少ないこともありますが、か弱く守らねばならない存在なので」

 理人さんは、赤くなった顔のまま彼らからすれば、とんでもない事を言った私にそう言った。

「ですから、そういうこと……交尾を録画したものを観てどうこうするなんて、聞いたことはありません。もちろん、記憶媒体はありますので夫婦などで個人的には楽しむためのものはあると思うんですが……公的に売買されるというのは、聞いたことがありません。非公式だとしても、商品としてそんな物を扱った者は、厳しく罰せられるでしょう」

 自分の住んでいた世界との常識のあまりの違いに、私はすごく驚いてしまった。触れている事が事だけに仕方ないけれど、理人さんもとっても言い難そうだ。なんだか、申し訳なくなってしまう。

「そうだったんですね……理人さんに、変なことを言わせてしまって本当にごめんなさい。私の世界とはあまりに常識が違うから……なんだか、驚いてしまって」

「無理もありません。同じ日本でもここは違う日本ですから。人狼の常識とは、違うでしょうね」

 苦笑しつつ理人さんはそう言って、息をついた。

「……そうなんですね。私……匂いでわかっているとは思うんですけど、こういう事は初めてで。どうしていたら、良いですか?」

「……そうですね。先ずは口づけから、でしょうか?」

 私は理人さんの形の良い唇を、じっと見た。彼は色素が薄いから、本当に綺麗なピンク色だ。

「えと、はい。どうぞ。してください」

 彼の方を向いて、私は両目をぎゅっと閉じた。キスの時に目を開いているのはマナー違反と聞いたことがあるような気がする。なんだか、唇もふるふる震えてしまっているような気もするけど、気にしない。女は度胸だ。

 この後はきっと、理人さんがどうにかしてくれる……はず!

 自分の心臓の鼓動の音だけがやけに耳についてどくどくと聞こえる中、何か温かなものが頬に触れた。

 くんくんと鼻を動かしている音がする。もしかして、何かの匂いが気になるんだろうか?

 私は、ぱっと目を開いた。理人さんの透き通るようなグレーの目が間近にあって、慌てて移動してしまった。

「あの、あの……もしかして、何か匂います?」

 とても聞きづらいけれど、聞くしかない。くさいと言われてしまったらどうしようと思いつつ。

「……透子さん。もしかして。今、怪我をしていないですか?」

「え?」

 私は思ってもみない彼の言葉を聞いて、呆気に取られた。

「透子さんの血の匂いがします。僕の鼻と耳は、巣に居る間はリラックス出来るようにある程度までしか機能しないよう調節しているんです。今まで気が付かずに、すみませんでした。すぐに、治療しましょう」

 その時、体の中心からどろりと何かが流れ出た気がした。

 覚えのある感覚に、なんだか戸惑ってしまう。今は時期ではないはずだった。予定では……もっと先のはずなのに。ストレスのかかるような、色んなことがあって。それは、早まってしまったようだ。

「あの、ごめんなさい……えっと……私、月のものになってしまったみたいで」

 身体に異変があるという心配のためか、さっきのように照れることもなくまだ近づいて来ていた理人さんはその綺麗な顔を顰めた。

「月のもの……?」

「えっと……生理って言えば、わかりますか? 私、まだ時期的に先だと思っていたから……ぜんぜん用意をしていなかったんです……」

 向こうの世界から持って来た荷物の中にもポーチに緊急用の生理用品が何枚か入っているだけ。どうしようと考えて、しゅんとしてしまった私に理人さんが優しく微笑んだ。

「大丈夫です。心配しないでくださいね。そういった女性に必要なものは、全部春に用意させています。すぐに持って来させます」

 そう言って理人さんは窓へと近寄り、がらりと音をさせて開けると静かな声で言った。

「春、緊急だ。戻ってこい」

「え?」
 とても静かな、声だった。すると数秒の間を置いた後で、オーーンと遠くから狼の遠吠えが聞こえる。

「すぐに帰るそうです……こういう時は体を温めた方が良いんでしたね。適当な膝掛けか何かを、探してきます」

 理人さんはそう言ってからサッと窓を閉め、軽い足取りで部屋を出て行った。

 あ、さっきの遠吠え、春くんなんだ。

 大きな獣耳をいつも目にしていたはずなのに、私が夫にした人達は本当に人狼なんだって、その時ようやく自覚をした。
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