まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

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第一部

016その前に

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「う、はい……」

 理人さんのような人にそんな事を、されてしまえば……私は決して、嫌じゃない。そんな気持ちに戸惑ってどうしても、赤くなってしまう。

 こちらを見てくる薄いグレーの目は透き通っていて、すごく綺麗。じっと見ていると、そのまま吸い込まれてしまいそうな程。

 彼はゆっくりとした動きで赤い舌で丹念に私の左手を指の股まで舐めあげると、腕まくりしてむき出しになっていた私の腕に視線を落とした。

「あのっ……ちょっと待ってください。そこは……春くんに、舐められてなくて」

 意味ありげな視線にこれからの行為を予感して、慌てて止めた私に理人さんは薄く微笑んだ。彼の持つ綺麗な顔も、少しだけだけ紅潮しているようだった。

「こちらに来るまでに……雄吾に、言われたんです。一週間後の本番までに、少しでも透子さんに慣れておくようにって……僕にこうされるのは、嫌ですか? それとも……今は何か理由があってやめてほしい?」

 未だかつて経験したことなどない美形の上目遣いに、私はすごく同様してしまった。

「そっ……そんな、そんなことは……ないですけど……」

 今の気持ちをどう表せば良いかと、言い淀んだ私の顔を彼は覗き込むようにしてから、耳元に近づき静かな低い声で諭すように言った。

「……お互いに、緊張しますね。すみません。僕がリードすべきだとは、わかっているんですけど。なかなか……知識だけでは、難しくて」

「そのっ……理人さんって……どういうことまで、知ってます?」

 とにかくこの場から逃げ出したくなるほどの恥ずかしさを、押して言った。

 私も理人さんも、そういうことを多分あまりわかっていない。とりあえず、一週間の猶予が出来たのだから、本番までに二人の意見を擦り合わせするべきではないだろうか?

「どういう……とは?」

 理人さんは、不思議そうに軽く首を傾げた。その目をじっと見て、私は意を決して言った。

「あの。私も正直に言うから。理人さんも、ちゃんと正直に言ってくださいね」

「良いですよ」

 彼はどこか面白そうに、ふっと軽く笑った。

「あの……色々そういうことをしてから。私に、理人さんの……を入れて……また色々するんだと思うんです。けど……そういった色々って、きっと経験したことが、沢山ないと、上手く出来ないように……思うんです。だから。本番までに、その……練習! 練習をします?」

「色々……ですか?」

 理人さんも私が言わんとしている事を色々と察してはいるのか、少しだけ顔が赤い。

「そうです。えっと……お互いの体を舐めたり……その、キスしたり……色々! するんだと! 思います……私も……そういうことを経験したことがないんで……知識だけあるんですけど……こうしてするまでに、時間があるなら……上手くいくように……練習したいです……」

 私は、勢いに任せて彼に言った。本当に、すごく……恥ずかしい。

 顔は鏡で確認するまでもなく、絶対に真っ赤だと思う。けれど、これは今日私が生理にならなければ、もう既に終わっていたことかもしれないけれど……出来れば、練習が出来るものなら、したい。

「……良いですね」

 理人さんは薄く笑うと、私の方へと身体を少しだけ近付けた。

「透子さんが、どうしたら気持ち良いか……僕に良く教えてくれますか? その通りにしますから……隠さずに、教えて下さいね」

「ふはっ……」

 色っぽい表情と言葉に、なんだか我慢出来なくなって私は大きく息を吐いた。

「……どうしました?」

「その緊張して……すごく……」

「僕も緊張しているから、二人ともお互い様ですよ」

 確かに私から見ると余裕のあるように見えた理人さんも緊張はしているのか、いつもと違って動きがぎこちない。

「それじゃあ……えっと、まずキスをします?」

 とりあえずキスをしようと、私は提案した。まずそれが出来ないと、二人とも身体を舐めたりとかどうかしたり……絶対に無理だと思う。

「……そうですね。こうやって向かい合っているだけなのも……恥ずかしいですよね」

 理人さんはキスからはじめようと提案した事に対して納得したように、頷いてくれた。

「恥ずかしい同士じゃ、ずーっと進まないんで……もう私からします……よ?」

「してくれるんですか?」

 私のとんでもない勘違いでなければ、理人さんのグレーの目に期待の光が灯っている。

「う……はい」

「どうしたら良いですか?」

「えっと、目を閉じてもらって良いですか?」

 理人さんは私が指示した通りに、目を伏せた。

 目が閉じると、作り物を思わせるような綺麗な彫刻めいた顔がそこにあった。なんだか気後れしてしまう……でも……このまま二人で、まごついていたら。

 ずーっと出来ないままになるような、気がする!

 私はベッドの上に膝をついて、理人さんの肩に両手をかけて一度止まった。ふーっと息をつき、徐々に顔をゆっくりと近づける。

「……透子さん」

 まさか、この期に及んで彼に話しかけられると思っていなかった私は、唇と唇が三センチくらいの距離を空けて私は固まる。

「えっと、はい。なんですか?」

 まったく予想していない動きだったので、あわあわとして慌ててしまう。唇も声も震えてしまって、身体中に恥ずかしさがこみ上げてきた。

「いえ。直前になって、すみません。キスをする前に、これだけは言っておかないといけないと思って」

 私はその形の良い唇が、ゆっくりと動くのをただ見ていた。

「僕は透子さんが好きです。あの森で見つけた時から、僕のものにならないかとずっと望んでいました……これからは、この身を捧げ貴女だけを愛します」

 そのまま彼にぐっと引き寄せられて、私は驚きに目を開けたままで理人さんとキスをした。

 初めてのキスは冷たくて柔らかな、不思議で気持ち良い感触だった。
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