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第一部
029 スープ
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私がシャワーを浴びて着替え終わると部屋まで戻ると、大きなソファの前にあるローテーブルに、春くんが肉や野菜を細かく刻んだスープを並べてくれていた。
「美味しそう。春くんありがとう」
「いきなり、固形の物はしんどいと思うし……煮込んでおいたから消化に良いと思う。どうせ心配で眠れなかったから、作っといて良かったよ」
「……寝てないの?」
「透子が目覚めないのに……寝れる訳ないよね?」
逆に真面目な顔で聞き返されて、私はうっと言葉に詰まってしまう。
「……理人さんと雄吾さんは、何処に行ったの?」
私は気を取り直してスープに口をつけながら、疑問に思っていたことを聞いた。美味しそうな匂いの通り、期待を裏切らない味。
「んー……透子を夢の世界に閉じ込めた奴を、ぶっ飛ばしに行ったんじゃない?」
私は飲んでいたスープを、吹き出しそうになった。すんでのところで止めて、慌てて飲み込む。
「あれって、誰のせいか……もう、わかってるの?」
「自分から、言ってきたからね」
「……え?」
思わぬ話の展開に、口をぽかんと開けてしまう。そんな顔を見た春くんは、ふっと可愛い顔で一度笑ってから急に真面目な顔になる。
「……透子は、あまり気分の良い話じゃないかもしれないけど、実は理人には婚約者が居たんだ」
「……うん。それは理人さんから、聞いたことある」
「そっか……んでその女が、眠ってしまった透子を、無事に助けたかったら離婚して自分と結婚するように理人に迫ってきた。はぐれていたのが群れに帰ったから、権力を持つ父の居る自分の思い通りになると思ったんだよ。本当に……大間違いだけどね」
「そんな」
「目覚めることなく夢の中に閉じ込められるなんて、殺すのとほぼ一緒だ。理人に夢使いの兄さんが居たから、良かったけど……そうじゃなかったら、今頃あいつが住んでるあの辺り一面焼け野原になっていてもおかしくないよ」
「言い過ぎだよ」
物騒な言葉に、私はこくりと喉を鳴らした。春くんは、にやっと笑う。
「透子は、なんで理人の能力が俺達の中で最強なのかは……まだわからないからね。あいつを怒らせたら、深青の里は一夜で無くなるかもね?」
「……すごく、強いんだね」
「そうだね。若くして、族長候補になるくらいにはね」
春くんは素早くウインクをすると、手早く食べ終わったスープの皿を片付けた。
「春くん、寝る?」
「わあ。透子に誘われると嬉しいけど、群れの順番守らないと……まじで俺は殺されるから」
わざとらしく大袈裟に体を震わせる春くんを、ねめつけた。
「もうっ、違うよ。二日寝てないんでしょ。私はもう大丈夫だから、寝て?」
「うーん……そうしたいとこだけど、透子と巣に一人しか居ない状態で、無防備にはなれない」
春くんは、真面目な顔で伸びをする。そっか、そんなものなのかな。
「じゃあ。どうする?」
「んー、どうしようか。映画でも観る?」
「春くん、映画好きだよね」
「映画も音楽も、本も好きだよ。面白いのは、なんでも取り入れたい派」
「春くんが本好きなの、意外だったな」
「本読むの、好きだよ。本を開くだけで、世界が変わるんだよ? わくわくする」
「ふふっ。そうだよね。私も好き」
春くんは一瞬、動きを止てるとぶわぁっと顔を赤くした。可愛い顔が、一気に染まる。
「……ん? 何か変なこと言った?」
「……透子が好きとか……言うから」
「ふふっ。本を読むのが、だよ?」
「じゃあ、俺のことは?」
「……好きだけど」
春くんは深呼吸すると、なぜかストレッチを始めた。
「やばい。透子からの好きはやばい」
「ふふ。なんか、大袈裟だよ。もう結婚もしてるのに」
「でも、俺達のこと……好きだから選んだ訳じゃないだろ?」
「……どうかな」
探るような彼の言葉を曖昧な言い方で誤魔化すと、春くんはくしゃくしゃの髪をもっと乱した。
「そこ気になるんだけど、俺自慢じゃないけど……女の子とこんな風に親密に話すのなんか、透子が初めてだからね!」
「春くん……女の子の扱いが慣れてそうなのに」
「一応、夫になるために夫コース取ってたから。ちゃんと勉強してたし、女の子のして欲しそうなことがわかるだけ。慣れてそうに見えるのは、必死で照れを隠してるから。納得した?」
「ふふ、わかった。納得」
くすくす笑うと、春くんは真っ赤な顔したままむくれた。
「美味しそう。春くんありがとう」
「いきなり、固形の物はしんどいと思うし……煮込んでおいたから消化に良いと思う。どうせ心配で眠れなかったから、作っといて良かったよ」
「……寝てないの?」
「透子が目覚めないのに……寝れる訳ないよね?」
逆に真面目な顔で聞き返されて、私はうっと言葉に詰まってしまう。
「……理人さんと雄吾さんは、何処に行ったの?」
私は気を取り直してスープに口をつけながら、疑問に思っていたことを聞いた。美味しそうな匂いの通り、期待を裏切らない味。
「んー……透子を夢の世界に閉じ込めた奴を、ぶっ飛ばしに行ったんじゃない?」
私は飲んでいたスープを、吹き出しそうになった。すんでのところで止めて、慌てて飲み込む。
「あれって、誰のせいか……もう、わかってるの?」
「自分から、言ってきたからね」
「……え?」
思わぬ話の展開に、口をぽかんと開けてしまう。そんな顔を見た春くんは、ふっと可愛い顔で一度笑ってから急に真面目な顔になる。
「……透子は、あまり気分の良い話じゃないかもしれないけど、実は理人には婚約者が居たんだ」
「……うん。それは理人さんから、聞いたことある」
「そっか……んでその女が、眠ってしまった透子を、無事に助けたかったら離婚して自分と結婚するように理人に迫ってきた。はぐれていたのが群れに帰ったから、権力を持つ父の居る自分の思い通りになると思ったんだよ。本当に……大間違いだけどね」
「そんな」
「目覚めることなく夢の中に閉じ込められるなんて、殺すのとほぼ一緒だ。理人に夢使いの兄さんが居たから、良かったけど……そうじゃなかったら、今頃あいつが住んでるあの辺り一面焼け野原になっていてもおかしくないよ」
「言い過ぎだよ」
物騒な言葉に、私はこくりと喉を鳴らした。春くんは、にやっと笑う。
「透子は、なんで理人の能力が俺達の中で最強なのかは……まだわからないからね。あいつを怒らせたら、深青の里は一夜で無くなるかもね?」
「……すごく、強いんだね」
「そうだね。若くして、族長候補になるくらいにはね」
春くんは素早くウインクをすると、手早く食べ終わったスープの皿を片付けた。
「春くん、寝る?」
「わあ。透子に誘われると嬉しいけど、群れの順番守らないと……まじで俺は殺されるから」
わざとらしく大袈裟に体を震わせる春くんを、ねめつけた。
「もうっ、違うよ。二日寝てないんでしょ。私はもう大丈夫だから、寝て?」
「うーん……そうしたいとこだけど、透子と巣に一人しか居ない状態で、無防備にはなれない」
春くんは、真面目な顔で伸びをする。そっか、そんなものなのかな。
「じゃあ。どうする?」
「んー、どうしようか。映画でも観る?」
「春くん、映画好きだよね」
「映画も音楽も、本も好きだよ。面白いのは、なんでも取り入れたい派」
「春くんが本好きなの、意外だったな」
「本読むの、好きだよ。本を開くだけで、世界が変わるんだよ? わくわくする」
「ふふっ。そうだよね。私も好き」
春くんは一瞬、動きを止てるとぶわぁっと顔を赤くした。可愛い顔が、一気に染まる。
「……ん? 何か変なこと言った?」
「……透子が好きとか……言うから」
「ふふっ。本を読むのが、だよ?」
「じゃあ、俺のことは?」
「……好きだけど」
春くんは深呼吸すると、なぜかストレッチを始めた。
「やばい。透子からの好きはやばい」
「ふふ。なんか、大袈裟だよ。もう結婚もしてるのに」
「でも、俺達のこと……好きだから選んだ訳じゃないだろ?」
「……どうかな」
探るような彼の言葉を曖昧な言い方で誤魔化すと、春くんはくしゃくしゃの髪をもっと乱した。
「そこ気になるんだけど、俺自慢じゃないけど……女の子とこんな風に親密に話すのなんか、透子が初めてだからね!」
「春くん……女の子の扱いが慣れてそうなのに」
「一応、夫になるために夫コース取ってたから。ちゃんと勉強してたし、女の子のして欲しそうなことがわかるだけ。慣れてそうに見えるのは、必死で照れを隠してるから。納得した?」
「ふふ、わかった。納得」
くすくす笑うと、春くんは真っ赤な顔したままむくれた。
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