まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

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第一部

035 朝

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 目が覚めたらビックリした。

 すぐ隣に、理人さんが寝てたからだ。

 なんでもない黒いスウェットを着ている凄く美形な人が、私の顔の間近で規則正しい寝息をたてていて、長い睫毛が目元に影を落としている。

 仕事で疲れているのかな。熟睡しているみたいで、すぐ近くに居る私が身動ぎしても起きる気配はない。そっと頬に触れてみる。

 皮膚の感触は冷たくて、少し髭が生えてきているのかもしれない。ざらっとしてる。それが楽しくて、何度か頬を往復してしまった。

 ふ、と笑ってしまったところで、その手が掴まれた。

「おはようございます」

「あ、ごめんなさい……」

 いつの間にか瞼は開き透明のグレーの目に見つめられて、私は慌てて手を引き抜こうとするけど、逆にぎゅっと手を握られた。

「謝らないでください。僕こそベッドに勝手に入ってすみませんでした」

「えっと。それは……大丈夫です。昨日は遅かったんですか?」

「帰ったのは二時くらいかな。色々調べ物をしていたら、遅くなってしまいました」

 はっとして、壁に掛けられた時計を見ると七時になったところだった。

「あのっ……理人さんは、このまま寝ててくださいね。私、春くんの朝食の準備を手伝ってきます」

「……それは構わないで、僕と一緒に寝てください、と言いたいところなんですけど、透子さんの手料理を食べられるなら。朝は我慢しようかな……」

 そうふわっと小さく欠伸しながら言ったので、私は勇気を出して思い切ってその頬にキスをした。理人さんは目を見開いて固まっている。

「お仕事、遅くまでお疲れ様でした。朝ご飯が出来たら呼びにきますから、ゆっくりしててくださいね」


◇◆◇

「おっはよ~、透子、よく眠れた?」

「うん、おはよ。春くんは?」

「それが……すごく面白いドラマ観ちゃって、続きが気になって寝不足なんだ」

 私は春くんの顔を覗き込んだ。確かに目が赤い。

「……嘘でしょ」

「そんなことないよ」

「もしかして……私に言ったことを、反省してた?」

 春くんの頭にある大きな茶色い耳は、しゅんと垂れてしまっている。大きな茶色の両目も、うるうると涙を浮かべているようだ。やっぱり。

「……うん」

「昨日も、私には嘘つかないように言われたんじゃなかった?」

「……ごめん」

「後悔して眠れなかったんだね。そうだったのなら、私に言ってくれたら良かったのに」

「うん……でも、もう遅かったし……」

 私はへたっと寝ている耳を、人差し指で弾いた。春くんは、驚いた顔で私を見た。

「今度から眠れなかったら、起こして良いよ」

「え?」

「私が原因だったら、話し合って解決しよ? もし、解決出来ないことだったら、一緒に起きてる。出来るだけ……だけど」

「透子」

「ごめんね。私が気がつけば良かった。朝ご飯を食べたら、もう寝て良いよ。私たち結婚したんだし、これからずっと一緒に居るんだから、遠慮はなしにしよ?」

「うん、ありがとう」

「私も、朝ご飯作るよ。何手伝ったら良い?」

 そう言えば、春くんは耳をピンと立てて嬉しそうに笑った。


◇◆◇


「ご機嫌だな」

 雄吾さんは、ブラックで無糖のコーヒーを苦そうな顔で飲んだ。私と春くんはミルクと砂糖たっぷりのカフェオレ。理人さんは、何故かコーヒーが嫌いらしくて新聞を読みながら優雅に紅茶を飲んでいる。

「そうかな~? わかる?」

「尻尾出てるぞ。仕舞え」

 人狼って尻尾は出し入れ自由で人化している時は通常は出ていないんだけど、興奮したりびっくりすると出てしまうみたい。ちなみに現在の春くんの尻尾は、千切れんばかりに左右に振られている。

「……雄吾。大目に見てやってくれ。仕事に行ってくる。今日は早めに帰ります」

 理人さんは新聞を畳みながらゆっくりと立ち上がると、足早に玄関から出て行った。

「車もそろそろ、また買わなきゃね……森の番人やってる時はほとんど必要なかったけど、これからは透子も居るし。俺たちだって、別々に移動する時も増えるだろうし」

 車を買いたいと言った春くんに対し、雄吾さんは首を傾げながらなんでもないことのように言った。

「そうだな。一台買ってくるか」

「え? 良いの? 車種は?」

「お前の好きにしろ」

「やったー!」

 あっさりと決まった車の購入に驚いた私は、雄吾さんがニュースに気を取られている内に、隣に居る春くんに耳打ちをした。

「ねえねえ。春くん。雄吾さんて、もしかして……」

「うん。多分、透子の想像している通りに金持ちだよ。株って当たったら、凄いから」

「すごい」

「けど、だから身内がお金の無心に来たりすることになるんだろうけどね、持ってないのも不便だろうけど、持ち過ぎてるのも考えものかもね」

 春くんは、そう小声で言うと器用に肩を竦めた。
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