まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

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第一部

047 プールサイド

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 雄吾さんは車に乗り込んでから、オーナーの子竜さんに直接予約の電話をしたみたいだった。

 今日教えてすぐだったことに揶揄われたのか、雄吾さんは珍しく大きな手で自分の髪の毛を乱すと、彼の様子が微笑ましくて笑顔になった私に向かって言った。

「あいつが用意してくれたのは、プライベートプール付きの部屋だそうだ」

「……え?」

「俺たちの水着も、用意してくれるらしい……嫌なら使わないで、構わないらしいが」

「え? すごい……プール付きの部屋なんて、嬉しいです! 私。プール、すごく好きなんです」

「……そうか? それなら、良かった」

 急に前のめりになった私に、雄吾さんは少し顔を赤くしてから頷いた。

 そう。海にはあまり行ったことはないけれど、夏には元の世界でもプールには良く行ってた。もっとも、異性と行くのは産まれて初めてだけど。

 心浮き立ちウキウキしている私を横目に、雄吾さんはなんだか浮かない顔だ。あまり見ないそんな様子に、私は不思議になって聞いた。

「え。雄吾さん。どうかしたんですか?」

「すぐにわかることだから、先に言っておくが……子どもの頃からなんだが、俺はあまり泳げないんだ」

 そんな話をしつつ、恥ずかしそうにする雄吾さんに私はなんだか面白くなって言った。

「雄吾さんにも苦手なもの……あるんですね」

「……子竜。あいつ、プール付きの部屋は絶対に故意だな」

 雄吾さんは、どこか悔しそうに言った。子竜さんは、きっと昔から知ってる幼馴染だからそんな弱点だって、心得てるんだ。

「ホテルのプールだと……泳ぐっていうより、遊ぶって感じになりそうですよね」

「……ああ」

「雄吾さん、大丈夫ですよ。私も本気で泳ごうとは、思っていませんから」

 私がふふっと笑うと、雄吾さんは逆光で眩しいのか、サングラスをかけた。

 春くんも昨日買い物に行くときに掛けていたオシャレなサングラスをかけると、同じサングラスなのに、ぜんぜん違う雰囲気の人になってしまった。

「海綺麗ですね。夕焼け見られるの、楽しみです」

「ああ」


◇◆◇


 私がなんとなく想像していたよりも、かなり高級な海辺のホテルに到着した。

 え。子竜さんって、実は物凄い人なんじゃ……だって、どう考えても高級ホテルだし、レストランのオーナーだし。こんな大きなホテルの、オーナーなんだ……。

「……子竜の会社には、俺も結構な額を出資しているんだ。だから、これからあいつと会う機会も、多くなると思う。レストランもこのホテルも、オーナーは子竜だ」

「すっ……すごいですね。驚きました。会うって、何かのパーティとかですか?」

 雄吾さんは、振り返って車の鍵を閉めつつ私の疑問に頷いた。

「まぁな……ただお金を出すだけでは、ダメな世界なんだ。そういう社交なんかも、一応情報収集も兼ねているから」

 バイトに明け暮れる一般庶民には理解出来ぬ上流階級というのはそんなところなんだと、思わず納得してしまった私の手を取って、彼と二人でホテルへと向かった。


◇◆◇


 彼が言っていたように用意されていた水着へと着替えると、部屋から繋がっているガラス張りのドームへと急いだ。

 ガラスの向こうに青い海は広がっていて、海面の波の模様も眩しいくらい。

「……透子」

 私は自分の名前を呼ぶ声に振り返って、思わずふふっと微笑んだ。

「雄吾さん……これって、水着ですよ?」

 そう、雄吾さんは顔が真っ赤になっているし、人狼が興奮すると出てしまう長くて黒い尻尾がお尻から伸びている。

 確かに私が今着ているのは隠す部分が少ないビキニなんだけど、昨日えっちなお仕置きをした人の反応とはとても思えない。

「……俺は、視覚からが弱いんだよ」

 手で鼻を押さえながら話すから、この前に遭った彼とのお風呂でのハプニングを思い出して私は吹き出した。

「もしかして、鼻血出ます?」

 水着を着た私が近寄って顔を覗き込むと、雄吾さんはますます顔を赤くしてしまった。

 ひとしきり、一人で水遊びした私は、プール際に用意されていた大きな防水ソファに寝そべったままの雄吾さんに声を掛けた。

「雄吾さん。せっかく水着を着てるのに、プールには入らないんですか?」

「……鼻血出るから、俺はプールには入らない」

 どうも揶揄い過ぎて、拗ねてしまったようだ。雄吾さんはそっぽ向いて、私が居る方を向いてくれない。

「もう、日が沈み始めますよ、ここだと足だって付きますし、せっかくだから見やすいこっちで見ましょうよ」

「……透子が迎えに来てくれたら、行っても良い」

 私は微笑んでからプールを上がると、差し出された雄吾さんの大きな右手を両手で引っ張った。彼はすぐにソファから立ち上がって私から顔は逸らしているけど、私がゆっくりと誘導する方に歩いて来てくれた。

「ほら……綺麗ですよ」

 海側は、繋ぎ目のない大きなガラス張りだ。あまりに綺麗に出来ていて、どういった技術かはわからないけれど、徐々に赤くなっていく夕焼けが見えて美しい。

 夕日を見てはしゃいだ私を愛おしそうに見つめると、雄吾さんは抱き上げて長いキスをくれた。陽が暮れて辺りが薄紫になってしまうまで、ずっと。
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