まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え~もふもふ人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~

待鳥園子

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第一部

056 ぎくしゃく

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 自分の感情を完全に持て余してしまった私は巣に帰ってから、自分の部屋に閉じこもった。

 何度か心配した様子の春くんが、声を掛けてくれてノックしていたのが聞こえたけど、ベッドの上に蹲ったままで聞こえない振りをした。

「……透子?」

 春くんとは違う、雄吾さんの声が聞こえた。私は慌てて、扉へと向かう。

「……雄吾さん」

 何か立て込んでいる仕事中だったのか、細いフレームのメガネを掛けたままだ。

 今は理人さんと雄吾さんの二人は忙しいから、なるべくこの巣の中に居るように言われている。

 昼間のパン屋さんはここから近いし、人もいっぱい居るだろうからって特別に許してもらっていたのだ。

「透子。どうした。夕食にも出てこなかったし……体調でも、悪いのか?」

 私は俯いたままで、雄吾さんの大きな胸に飛び込んだ。

「やっぱり、何かあったのか?」

「なんでもないです」

 ぎゅっと抱きついたまま離れない私の頭を、彼はポンポンと優しく叩いた。

「そうか。まあ、言いたくないことなんだな……まだ仕事があるけど、俺の部屋で寝るか?」

「……今日は……やめておきます」

 私はその優しい言葉に心惹かれながらも、もう一度だけぎゅっと強く抱きついた。

 春くんへ感じたやきもちを消化するのに、雄吾さんのところに行くのはなんだか、違う気がしたのだ。


◇◆◇


 私は夕ご飯を終えたら、リビングの大きなテレビの前でごろごろするのを日課にしていた。

 けど、ご飯を食べて自分の後片付けを済ませると、急いで自分の部屋へと帰るようになってしまった。

 春くんの大きなお耳は、このところずっと寝たまんまだし、理人さんと雄吾さんは理由を知っているのかいないのか。私には何も言わない。

 彼らは素知らぬ様子で多忙の中にも顔を合わせるご飯時は、いつも当たり障りのない話題だけだ。

 あえて私に理由を聞いてくることもない。ただただ、春くんと私二人の間がぎくしゃくしているだけ。

「?」

 私はリビングの様子を何気なく見た時、茶色いもふもふの塊を見つけた。くしゅくしゅの毛を持つ茶色の大きな狼、あれは春くんだ。

 私がよく使っていた大きな赤いクッションに鼻面を突っ込んで、もふもふは微動だにしない。

 恐る恐るそっと近づくと、目の下には涙のあとがあった。どうやら、春くんは泣きながら寝てしまったみたいだった。

 私は近くにあった大きなひざ掛けを上から掛けてあげて、お耳のあたりを撫でてあげた。

「透子……」

 ぽつりと聞こえた声に、私はビクッとした。ぱっと手を離すけど、ぱくっと大きな口で右手を甘噛みされた。

「ごめん……真理亜のことは本当に。俺また……油断をしてて、あんな風にされるなんて思ってなくて。透子を不快な思いにさせて、本当にごめん……」

 悲しそうに声を振り絞るようにして、春くんは謝った。

 私が言葉を探して黙ったままいると、嘆願するようにして大きな茶色の目から涙をぽろぽろ零しながら言った。

「透子、何でもするから、嫌いにならないでっ、お願い」

 とても可愛いらしいその顔に、私はどうしても甘くなるし、ほだされてしまいそうになる。ううん、ダメだよね。このおおかみさんはいけないことしたんだから、何か罰を与えないと……。

 うんと、後悔したくなるような罰。

「ねえ。春くん、人化して?」

「……え? うん。良いよ。でもちょっとだけ待ってて。俺、部屋で服着てくるから」

「だめ。そのままで、人化して?」

 茶色の狼は困惑したようにして、首を振った。

「透子? でも俺このままだと裸になるよ?」

「良いよ。それから……春くんは私に触れちゃダメ。これから当分良いって言うまで触って良いのは、私だけ。そうしたら、私の前で違う女の子とキスしたこと、許す」

 真剣な目の私を見て、こくっと春くんが喉を鳴らしたのがわかった。
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