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08 寝耳に水の縁談②
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「ブランシュ……私はこれが君にとって、最善の身の振り方になるだろうと考えている。グレイスがあの調子では、お前をハンナよりも良い家には嫁がせたくないと思うだろう」
「……ええ。お父様。私もそう思います」
苦い顔をした父はそれを解りつつも、その時が来ても庇うつもりはないということよね。
仕方ないわ……この人には、娘よりも家が大事だもの。貴族の当主として正しいのは、父の方なのだから。
「今ならば、ハンナも社交デビュー前で、相手を比較しようにもまだ相手が居ない……だから、どうしてもお前をと縁談を持ち込んだキーブルク侯爵家に持参金を支払う訳でもなく、こちらがそれなりの金銭を要求し受け取りさえすれば、彼女だって納得するだろう」
……それって、私のこの縁談は身売り同然だということ?
決まり悪く言葉を詰まらせたお父様が、今の状況を冷静に見て、義妹が社交界デビューしてしまえば、ハンナの縁談相手よりも家格の高い男性からの縁談が来たとしても義母が勝手に断るだろうと。
だから、義母にうとまれている娘の私には、これ以上の相手とは結婚出来る見込みは無いのだと、暗にそう言いたいという訳ね。
本当に……悲しいくらいに、血の繋がる父含め、家族に大事にされていない。母が亡くなり三年間も続いていて仕方ないと割り切っていたことだけど、私は深くため息をついた。
母が生きていた頃から、父とは心が離れてしまっていた。けれど、貴族であるからには家の利益も大事だと、いつも自分に言い聞かせて来たというのに。
父にとっては、縁談をくれたキーブルク侯爵家に娘を体よく売りつけられるし、厄介払いみたいなものよね。
「あの、お父様……キーブルク侯爵は、どのような男性なのですか?」
これを今、父に聞いたところで、私はキーブルク侯爵との縁談に頷くしか出来ないのに……どうしても気になってしまい聞く事にした。
「キーブルク侯爵は、切れ者で若くして将軍まで上り詰めたお方だ。性格は軍人らしく荒いと聞いているが、容姿は良いらしい。きっと、お前を幸せにしてくれるだろう……」
我がエタンセル伯爵家の繁栄のために、義母の腹いせの犠牲になった私は、これまでに幸せだったとは言い難いものね。
それを実の父親から暗に示唆されて、情けなくなった私は、もう苦笑いするしかなかった。
……その時、私の名前を遠くから呼ぶ声が聞こえた。続いて、ガチャンと陶器が割れる音……また、始まったんだと思った。
いつものことなのだけど、背筋が冷えて、胃が誰かにぎゅっと握られたかのように痛い。
「私……行ってきます」
義母が不機嫌になり暴れることは、エタンセル伯爵家では良くあることだった。義理の娘の私一人が怒鳴られるだけで済めば、それは良い方だ。ただの使用人では公爵家の血を持つ義母に、殺されてしまっても何の文句は言えないのだから。
「ブランシュ……」
その時、父は娘の私に、初めて謝ろうとしたのかもしれない。けれど、ここで彼が出て行って娘の私を庇ってしまえば、また義母の態度が悪化してしまう。
それはもう既に何度か繰り返されて、私たち親子二人は疲れ果ててしまっていた。
私は父に向けて静かに首を横に振り、何かで機嫌を損ねたらしい義母の元へと急いで向かった。
「……ええ。お父様。私もそう思います」
苦い顔をした父はそれを解りつつも、その時が来ても庇うつもりはないということよね。
仕方ないわ……この人には、娘よりも家が大事だもの。貴族の当主として正しいのは、父の方なのだから。
「今ならば、ハンナも社交デビュー前で、相手を比較しようにもまだ相手が居ない……だから、どうしてもお前をと縁談を持ち込んだキーブルク侯爵家に持参金を支払う訳でもなく、こちらがそれなりの金銭を要求し受け取りさえすれば、彼女だって納得するだろう」
……それって、私のこの縁談は身売り同然だということ?
決まり悪く言葉を詰まらせたお父様が、今の状況を冷静に見て、義妹が社交界デビューしてしまえば、ハンナの縁談相手よりも家格の高い男性からの縁談が来たとしても義母が勝手に断るだろうと。
だから、義母にうとまれている娘の私には、これ以上の相手とは結婚出来る見込みは無いのだと、暗にそう言いたいという訳ね。
本当に……悲しいくらいに、血の繋がる父含め、家族に大事にされていない。母が亡くなり三年間も続いていて仕方ないと割り切っていたことだけど、私は深くため息をついた。
母が生きていた頃から、父とは心が離れてしまっていた。けれど、貴族であるからには家の利益も大事だと、いつも自分に言い聞かせて来たというのに。
父にとっては、縁談をくれたキーブルク侯爵家に娘を体よく売りつけられるし、厄介払いみたいなものよね。
「あの、お父様……キーブルク侯爵は、どのような男性なのですか?」
これを今、父に聞いたところで、私はキーブルク侯爵との縁談に頷くしか出来ないのに……どうしても気になってしまい聞く事にした。
「キーブルク侯爵は、切れ者で若くして将軍まで上り詰めたお方だ。性格は軍人らしく荒いと聞いているが、容姿は良いらしい。きっと、お前を幸せにしてくれるだろう……」
我がエタンセル伯爵家の繁栄のために、義母の腹いせの犠牲になった私は、これまでに幸せだったとは言い難いものね。
それを実の父親から暗に示唆されて、情けなくなった私は、もう苦笑いするしかなかった。
……その時、私の名前を遠くから呼ぶ声が聞こえた。続いて、ガチャンと陶器が割れる音……また、始まったんだと思った。
いつものことなのだけど、背筋が冷えて、胃が誰かにぎゅっと握られたかのように痛い。
「私……行ってきます」
義母が不機嫌になり暴れることは、エタンセル伯爵家では良くあることだった。義理の娘の私一人が怒鳴られるだけで済めば、それは良い方だ。ただの使用人では公爵家の血を持つ義母に、殺されてしまっても何の文句は言えないのだから。
「ブランシュ……」
その時、父は娘の私に、初めて謝ろうとしたのかもしれない。けれど、ここで彼が出て行って娘の私を庇ってしまえば、また義母の態度が悪化してしまう。
それはもう既に何度か繰り返されて、私たち親子二人は疲れ果ててしまっていた。
私は父に向けて静かに首を横に振り、何かで機嫌を損ねたらしい義母の元へと急いで向かった。
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