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30 後悔②
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「よし、殺そう。罪状は、十分なはずだ。貴族の家での窃盗、貴族の子の母を騙る詐欺師への幇助。そして、兄の妻にまで手を出そうとした。万死に値する」
「御意」
アーロンとクウェンティンの間で、再度繰り返されたヒルデガード死刑宣告に、私は慌てて止めに入った。
「待ってください! 駄目です! 殺さないでください!」
「何故……殺してはいけないんだ。ブランシュ。兄の俺が言うのもなんだが、ヒルデガードは、これからも我が家の邪魔にしかならない。あれを生かしておけば、必ず俺たちに不利益を与えるはずだ」
これは、アーロンの言う通りだと、私だってそう思う。
けれど、両親を亡くしているアーロンにとって、ヒルデガードは唯一血の繋がった兄弟だと知っていた。
私だって……肉親のエタンセル伯爵である父に言いたいことは、沢山ある。
死んでしまえば、もう話すこともわかり合う事も二度と出来なくなってしまう。
「アーロン。お願いですから、たった一人の弟を殺さないでください。死んだ人は、もう二度と戻らないのですから。血の繋がった弟を殺してしまって、貴方に未来に後悔して欲しくありません」
言い終わってから食堂はしんとして静かになり、私はなんだか急に恥ずかしくなってしまった。
若い時からアーロンは軍人として生きていた訳だから、殺す殺されるの世界に生きていたと思うし、子どもじみた説教をしたと思われてしまったかも知れない。
「……わかった。ブランシュの言う通りにしよう。ありがとう。俺の今後も、考えてくれて」
アーロンは、大人だ。
私はこの時、そう思った。自分とは違うけれど、私の意見を受け入れ、肯定してくれる。
「いえ……差し出がましい真似をして、申し訳ありませんでした」
「謝らなくて良い。そろそろ城へ行く。ブランシュは、ゆっくり休んでいてくれ。クウェンティン。妻を頼んだぞ」
「かしこまりました」
時計を確認してからアーロンは慌ただしく出勤し、澄ました顔をしたクウェンティンに私は聞いた。
「あの……クウェンティン……仕事しては、駄目? 暇で暇で、死にそうなの」
これまでキーブルグ侯爵家の当主として忙しく書類仕事をしていたせいか、これからは貴婦人として優雅に生活しろと言われても無理があった。
あの案件がどうなっているか、その後が気になって堪らないものもあるのに……。
「駄目です。奥様。先ほどお聞きになったでしょう。旦那様のご指示です」
無表情でしらっと切り返され、私は珍しく食い下がった。
「黙っておけば、わからないでしょう。お願いだから、クウェンティン」
「奥様は僕を含め、何人かの使用人の仕事を奪われるおつもりのようですね」
真面目な執事の言い分には何も言い返せず、私は黙って朝食を食べるしかなかった。
「御意」
アーロンとクウェンティンの間で、再度繰り返されたヒルデガード死刑宣告に、私は慌てて止めに入った。
「待ってください! 駄目です! 殺さないでください!」
「何故……殺してはいけないんだ。ブランシュ。兄の俺が言うのもなんだが、ヒルデガードは、これからも我が家の邪魔にしかならない。あれを生かしておけば、必ず俺たちに不利益を与えるはずだ」
これは、アーロンの言う通りだと、私だってそう思う。
けれど、両親を亡くしているアーロンにとって、ヒルデガードは唯一血の繋がった兄弟だと知っていた。
私だって……肉親のエタンセル伯爵である父に言いたいことは、沢山ある。
死んでしまえば、もう話すこともわかり合う事も二度と出来なくなってしまう。
「アーロン。お願いですから、たった一人の弟を殺さないでください。死んだ人は、もう二度と戻らないのですから。血の繋がった弟を殺してしまって、貴方に未来に後悔して欲しくありません」
言い終わってから食堂はしんとして静かになり、私はなんだか急に恥ずかしくなってしまった。
若い時からアーロンは軍人として生きていた訳だから、殺す殺されるの世界に生きていたと思うし、子どもじみた説教をしたと思われてしまったかも知れない。
「……わかった。ブランシュの言う通りにしよう。ありがとう。俺の今後も、考えてくれて」
アーロンは、大人だ。
私はこの時、そう思った。自分とは違うけれど、私の意見を受け入れ、肯定してくれる。
「いえ……差し出がましい真似をして、申し訳ありませんでした」
「謝らなくて良い。そろそろ城へ行く。ブランシュは、ゆっくり休んでいてくれ。クウェンティン。妻を頼んだぞ」
「かしこまりました」
時計を確認してからアーロンは慌ただしく出勤し、澄ました顔をしたクウェンティンに私は聞いた。
「あの……クウェンティン……仕事しては、駄目? 暇で暇で、死にそうなの」
これまでキーブルグ侯爵家の当主として忙しく書類仕事をしていたせいか、これからは貴婦人として優雅に生活しろと言われても無理があった。
あの案件がどうなっているか、その後が気になって堪らないものもあるのに……。
「駄目です。奥様。先ほどお聞きになったでしょう。旦那様のご指示です」
無表情でしらっと切り返され、私は珍しく食い下がった。
「黙っておけば、わからないでしょう。お願いだから、クウェンティン」
「奥様は僕を含め、何人かの使用人の仕事を奪われるおつもりのようですね」
真面目な執事の言い分には何も言い返せず、私は黙って朝食を食べるしかなかった。
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