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41 海辺①
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気がつけば、海辺にまで辿り着いていた。
走り疲れた私は岩場に座って、月の光が映る波をただ見た。それを、綺麗だと思った。
落ち着いて考えてみて……わかっていた。このまま、こんな風に逃げ出したままではいけない。
どれだけ辛い事であったとしても、彼と結婚しているという事実がある限り、アーロンと向き合わなければならない。
ヒルデガードから私と結婚したのは爵位のためだと知らされてから、その事しか考えられなくなっていたけれど、これまでにアーロンがくれた優しさを思い出していた。
……結婚してからすぐに、死んだ振りをしていた事は責められない。
アーロンはこの国を守るために、それこそ手段を選ばなかっただけだ。
騙すなら身内からと言ったもので、妻の私が彼を生きていると知っていれば、そこから綻びが生まれて、連合軍に敗れていたかもしれない。
勝つか負けるか……生きるか死ぬか。そんな戦いを、指揮官である将軍として強いられていたのだから。
文字通りに死に物狂いで、アーロンは何倍もの軍勢相手にこのスレイデル王国を守ったのだ。
……妻の私ごと。アーロンはそう言ってくれた。それは、嘘ではないと思う。
アーロンは感情的で荒々しい部分はあるけれど、帰って来てから私には常に優しかった。
好きな色はなんだと聞いてくれて、怪我を見つければ良い薬を買ってくれた。ただ、その場限りの都合の良いことを言ってくれるだけではなくて、十分に態度で私への愛情を示してくれた。
偽物の優しさかもしれない。けれど、あんな風に話し合いもなく走り去ってしまって良い相手ではなかった。
……戻ろう。アーロンだって何か言いたいことはあったはずで、私はそれを聞かぬままに居てはいけない。
これまで一年間傍に居なかったとしても、夫アーロンが私のことを守り、安全な居場所を用意してくれた事には変わりなく、たとえ爵位を継ぐための道具であったとしても、この上なく大事にしてくれたのだから。
私は置いてきぼりにしてしまった夫の元へ戻ろうと決意して、立ち上がろうとした。
その瞬間に、誰かに背中を押された。
ドレスのスカートは水面にふわりと広がり浮くと、私は咄嗟にスカートの紐を解いた。
以前に何かの話のついでに、執事クウェンティンが話してくれた内容を覚えていたからだ。
ドレス姿で水に落ちれば大変だと言った私に対し、彼はスカートさえ外してしまえば助かるだろうと言ったのだ。
今は空気を含んでいて水面に浮いたとしても、水に濡れたスカートの重させいで引き摺り込まれるように沈んでしまう。
だから、スカートさえ先に外してしまえば、最悪の事態は避けられるだろうと。
クウェンティンは何故か私に、こういう危機があればこうすれば良いと話してくれる機会が多かった。それで助かることが出来たのだから、彼には感謝しなければ……。
身軽な格好になった私は、とにかく岸に上がろうと顔を上げると、とある人物の顔が見えた。
「あ……あなたは!」
沈みゆく様子を観察しようとしてか、その場に佇んでいた人物は、膨らんだドレスを着た私がなかなか沈まない事に気がつき、時間が掛かると踏んだのか、ふいっと顔を背けて去って行った。
走り疲れた私は岩場に座って、月の光が映る波をただ見た。それを、綺麗だと思った。
落ち着いて考えてみて……わかっていた。このまま、こんな風に逃げ出したままではいけない。
どれだけ辛い事であったとしても、彼と結婚しているという事実がある限り、アーロンと向き合わなければならない。
ヒルデガードから私と結婚したのは爵位のためだと知らされてから、その事しか考えられなくなっていたけれど、これまでにアーロンがくれた優しさを思い出していた。
……結婚してからすぐに、死んだ振りをしていた事は責められない。
アーロンはこの国を守るために、それこそ手段を選ばなかっただけだ。
騙すなら身内からと言ったもので、妻の私が彼を生きていると知っていれば、そこから綻びが生まれて、連合軍に敗れていたかもしれない。
勝つか負けるか……生きるか死ぬか。そんな戦いを、指揮官である将軍として強いられていたのだから。
文字通りに死に物狂いで、アーロンは何倍もの軍勢相手にこのスレイデル王国を守ったのだ。
……妻の私ごと。アーロンはそう言ってくれた。それは、嘘ではないと思う。
アーロンは感情的で荒々しい部分はあるけれど、帰って来てから私には常に優しかった。
好きな色はなんだと聞いてくれて、怪我を見つければ良い薬を買ってくれた。ただ、その場限りの都合の良いことを言ってくれるだけではなくて、十分に態度で私への愛情を示してくれた。
偽物の優しさかもしれない。けれど、あんな風に話し合いもなく走り去ってしまって良い相手ではなかった。
……戻ろう。アーロンだって何か言いたいことはあったはずで、私はそれを聞かぬままに居てはいけない。
これまで一年間傍に居なかったとしても、夫アーロンが私のことを守り、安全な居場所を用意してくれた事には変わりなく、たとえ爵位を継ぐための道具であったとしても、この上なく大事にしてくれたのだから。
私は置いてきぼりにしてしまった夫の元へ戻ろうと決意して、立ち上がろうとした。
その瞬間に、誰かに背中を押された。
ドレスのスカートは水面にふわりと広がり浮くと、私は咄嗟にスカートの紐を解いた。
以前に何かの話のついでに、執事クウェンティンが話してくれた内容を覚えていたからだ。
ドレス姿で水に落ちれば大変だと言った私に対し、彼はスカートさえ外してしまえば助かるだろうと言ったのだ。
今は空気を含んでいて水面に浮いたとしても、水に濡れたスカートの重させいで引き摺り込まれるように沈んでしまう。
だから、スカートさえ先に外してしまえば、最悪の事態は避けられるだろうと。
クウェンティンは何故か私に、こういう危機があればこうすれば良いと話してくれる機会が多かった。それで助かることが出来たのだから、彼には感謝しなければ……。
身軽な格好になった私は、とにかく岸に上がろうと顔を上げると、とある人物の顔が見えた。
「あ……あなたは!」
沈みゆく様子を観察しようとしてか、その場に佇んでいた人物は、膨らんだドレスを着た私がなかなか沈まない事に気がつき、時間が掛かると踏んだのか、ふいっと顔を背けて去って行った。
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