花は風と共に散る【美醜逆転】

本編

忘れ物

私はワイルド系美形、赤毛のジョッシュ隊長を探していた。また忘れ物を届けるためだ。リプリ団長にも聞いたけどあの人割とおっちょこちょいでうっかり屋さんらしい。顔はワイルド系なのに可愛いよね。

「ガードルート」
「フィース、イアン」
いつもの双子だ。騎士服が凛々しい爽やかな美貌。いつも目の保養ありがとうございます。
「こんなところで何してる？」
「ジョッシュ隊長を探してる。また忘れ物したの」
私はリプリ団長に頼まれた書類袋を見せた。
「ジョッシュ隊長なら訓練場で見たよ」
届けようか、という手をパッと避ける。
「良い。自分で行く」
訓練場っていう私にとっての楽園のことですね。

「2人は訓練サボって何してるの」
私は2人の顔を代わる代わる見上げた。
「僕ら次の遠征に出るから手続きしてたんだ」
イアンもこくん、と頷く。いつもの無表情だ。
「え、初実戦てこと？」
「うん、いよいよだよ。近くに盗賊が出たからその対処らしいけど」
「気をつけてね」
うん、とフィースが頷くとイアンが言った。
「それだけ？」
ちょっとだけかすれたハスキーな声だ。
「え？」
相変わらずの無表情。どういうこと？
「なんでもない」
「なんでもない訳ないだろ、お前言いたいことあるならちゃんと言えよ」
フィースがイアンを肘で小突く。
イアンがフィース以外にちゃんと話すのは珍しいのだろう、彼もちょっと驚き顔だ。
「ほっぺたに、して欲しい」
少し赤くなりながら、イアンが言った。

私はようやく思い至った。なるほど、いってらっしゃいのキスが欲しいんだな。
でも私で良いのかな。こんなんだけど。それにそんなことする関係でもない気もするんだけど。表向き。
でもせっかくイアンが話してくれたのだ。
私はにこっと笑った。
「良いよ」

私はちょっと背伸びして屈んでくれたイアンのほっぺにキスした。
「ちょっ」
フィースが驚きの顔で私に言う。
「ぼ、僕は？」
「え、嫌」
クスクス笑って、しょんぼりと項垂れるフィースのほっぺにもキスだ。
パッと顔を上げて笑ってくれた。
「気をつけてね」