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本編

風邪

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「くしゅん」
くしゃみをするとブルッと震えた。まずい本格的に風邪ひいたみたい。
寒い倉庫の中で胸とお腹丸出しで居たせいかもしれないけど。結局ミッキー君は鼻血が止まらなくて上を向きながら帰って行った。大丈夫かな。


コンコン、とノックの音がした。
「はい」
ドアを開けるとヴィンセントさんが居た。相変わらずクールな印象の彫像みたいな顔してる。
今まで全然交流がなかったせいか身構えてしまう。何の用だろう?
「風邪をひいたと聞いたが」
「あ、はい。すみません、仕事のことですか?」
「…いや、リプリに風邪を引いたと聞いて、よく効く薬があってな。良かったらどうかと思って」
と、どピンクの派手な装飾がついた薬を取り出した。え、これ知ってるんですけど。
「え、ええとありがとうございます」

「…飲まないのか」
今ここで飲む感じですか?
私は迷った。薬屋で見かけたことを話すべきか。でも彼のプライドを傷つけてしまうかもしれない。
「…頂きます」
少しだけ飲む。甘くてとろりとしている。はちみつが入ってるのかな?
「…ゆっくり寝てくれ」
パタンと音がしてドアが閉まった。

「ふぅ」
体がちょっと熱くなってきた。どうしよう。解毒薬はあるけど、ヴィンセントさんの真意がわからない。戻ってくるのかな。その時何の反応もなかったら怪しまれるかもしれない。
私は悶々として悩んだ。実際悶々としているんだけど。

コンコンとノックの音がする。
「はい」
ヴィンセントさんだ。
「体は辛くないか」
「ええっと、ちょっと熱いです」
媚薬を飲まされているもので。
「入って良いか?」
「どうぞ」
パタン、とドアを閉める。

「…横になるか」
「そうさせてもらいます」
ヴィンセントさん、何考えているんだろう?
私は熱くなっていく思考の中何にも考えられなくなっていく。
「触っても大丈夫か?」
「良いですよ」
さわっと手の甲を撫でられる。ひんやりしてて気持ちの良い手だ。
「熱いな」
「ヴィンセントさん…」
そっとヴィンセントさんは私にキスをする。やわやわとして湿った唇だった。
「気持ち良いな」
私はなんだか気になって聞いてみた。
「はじめてですか?」
「…そうだ」
もう一度キスをすると微笑む。
「どうしても一度してみたかった。罰ならば受ける」

そう言うと出て行ってしまった。え?これって放置プレイっていうやつじゃ?と解毒剤をゴクゴク飲みながら思った。
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