花は風と共に散る【美醜逆転】

待鳥園子

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本編

ライバル

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今日も今日とてジョッシュ隊長を探していた。忘れ物を届けるためだ。あの人ちょっとうっかり屋さん過ぎない?今までどうしてたんだろ…。リプリ団長や部下の人の苦労が不思議と見えた気がする。

「ガードルート」
「ヴィンセントさん」
眼鏡を上げながら知的クール美形が近づいてきた。
「どうした」
「ジョッシュ隊長を探しているんです」
私は書類袋を目の位置に上げた。
「あいつは本当に忘れ物多いからな、会議で一緒なんだ。持って行こう」
時間的に訓練場(楽園)はもう出てしまっているみたいだ。私はちょっとしょんぼりしながら書類袋を渡した。

ヴィンセントさんは本当に不思議そうな顔で聞いてきた。
「君はジョッシュが好きなのか?」
「え?えええ?」
「残念そうな顔をしていただろう」
「全然違います。誤解しないでください」
確かに赤毛のワイルド系は格好良いと思うけど。
「そうか?」
私はうんうん、と力強く頷いた。

「ヴィンセントさんはジョッシュさんと仲が良いんですか?」
「…騎士学校の同期だ」
「あ、同い年なんですね。ヴィンセントさんっておいくつなんですが?」
「25だが」
ここも見た目通りなんだな。
「ジョッシュさんて昔から忘れ物多いんですか?」
「酷いな」
ヴィンセントさんは真顔になった。そんなに…。

あ、と私は思い出した。ジョッシュさんのこと言えない。
「ヴィンセントさん、本読めたのでお部屋まで届けに行って良いですか?」
「…良かったら私が夜に取りに行こう」
私は頷いた。


「すみません、遅くなってしまって」
「構わない」
「良かったらお茶でもどうですか?」
「良いのか」
「もちろんです。どうぞ」
私はヴィンセントさんを部屋に招き入れた。背が高いから扉の所ではちょっとしゃがんでいた。大変だよね。

「この本はどうだった?」
「えっと、すごく面白かったです」
「…騎士は魅力的だったか?」
「はい、とっても!姫を苦難の中何年も思い続けてすごく素敵でした」
「そうか、一途な男性が好きなのか?」
私はうーんとなった。
「物語では素敵ですけど、現実的に言うとそうでもないかもしれません」
ヴィンセントさんは首を傾げた。
「どういうことだ?」
「私はもし誰かに選んでもらえるなら、ちゃんと好きになって欲しいです。外見だけ見て雛鳥の擦り込みなんかじゃなくて、ちゃんと他と比べてでも、それでも私が一番って言って欲しいんです」
「…変わってるな」
ヴィンセントさんは楽しそうに笑った。

「…じゃあ、例えばだがジョッシュと私だとどっちが良い?」
「えっと、外見だけですか?」
「そうだ」
「ヴィンセントさんです」
ワイルド系騎士隊長よりクール美形眼鏡参謀が好き。
ヴィンセントさんはまた面白そうに笑った。
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