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本編
新しい傷
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「ノアさん」
私は、病室のベッドに寝ている彼に声をかけた。上半身の多くを包帯で巻かれ、横たわっていた。
「ガードルート…心配をかけてすまなかった」
寝たまま顔だけこちらに向けて笑ってくれる。とろける蜂蜜色の目にも生気が灯っている。
「心配っ、しました。本当に本当に、良かった」
私はベッドの脇に跪いて顔を近づけた。
「すまない、バカをして皆に迷惑をかけたな、生きてガードルートに会えて嬉しいよ」
「生きて帰ってくれただけで私は何も要りません」
「そうか、じゃあ俺に処女くれるか?」
軽口を叩くノアさんに目が丸くなる。
「もうっ、すごい元気じゃないですか」
私はむくれた。心配したのに。
「冗談だ、キスしてくれ、ガードルート。捕まってからも今までもずっと君のことだけを考えていた」
顔を近づけて触れるだけのキスを繰り返す。
「すまない。…すこし痩せたようだな。ちゃんと飯は食ってたか?」
「フィースとイアンが無理やり食べさせるんですよ。あの子たち容赦ないです」
「そうか」
ひとしきり彼は笑うと、はあ、と息をついた。
「ようやく帰って来た気になるよ。君が俺の帰る場所だ。もしまたこういうことがあっても、絶対に体を壊さないようにしてくれ。心配でそのことしか考えられなくなるからな。無事で居させるために安心させてくれ」
私ははい、と一言だけ言った。
「ミッキー君はまだなんですか?」
「ああ、彼は潜入班だったからな、奪還してきた強襲班とは別に行動していた。じきに戻るだろう」
それより、とヴィンセントさんは言った。
「ノアに決めたか?」
「なんのことですか?」
「いや…まぁこんなことがあった後だからな。別に私は気にしない、ということが言いたかった」
「あのことですか」
私はふうっと息をついた。こんな事態だったのに2人とも気にするとこそこなんだ…!
「ヴィンセントさんはもう要らないんですか?」
私はすこし意地悪したくなって言った。
「そんなことは言っていない」
驚いた顔をしたヴィンセントさんに舌を出した。
「もう遅いです」
「ガードルートっ」
珍しく慌てたように追いかけてくる。そんな姿を見て久しぶりに笑った。
私は、病室のベッドに寝ている彼に声をかけた。上半身の多くを包帯で巻かれ、横たわっていた。
「ガードルート…心配をかけてすまなかった」
寝たまま顔だけこちらに向けて笑ってくれる。とろける蜂蜜色の目にも生気が灯っている。
「心配っ、しました。本当に本当に、良かった」
私はベッドの脇に跪いて顔を近づけた。
「すまない、バカをして皆に迷惑をかけたな、生きてガードルートに会えて嬉しいよ」
「生きて帰ってくれただけで私は何も要りません」
「そうか、じゃあ俺に処女くれるか?」
軽口を叩くノアさんに目が丸くなる。
「もうっ、すごい元気じゃないですか」
私はむくれた。心配したのに。
「冗談だ、キスしてくれ、ガードルート。捕まってからも今までもずっと君のことだけを考えていた」
顔を近づけて触れるだけのキスを繰り返す。
「すまない。…すこし痩せたようだな。ちゃんと飯は食ってたか?」
「フィースとイアンが無理やり食べさせるんですよ。あの子たち容赦ないです」
「そうか」
ひとしきり彼は笑うと、はあ、と息をついた。
「ようやく帰って来た気になるよ。君が俺の帰る場所だ。もしまたこういうことがあっても、絶対に体を壊さないようにしてくれ。心配でそのことしか考えられなくなるからな。無事で居させるために安心させてくれ」
私ははい、と一言だけ言った。
「ミッキー君はまだなんですか?」
「ああ、彼は潜入班だったからな、奪還してきた強襲班とは別に行動していた。じきに戻るだろう」
それより、とヴィンセントさんは言った。
「ノアに決めたか?」
「なんのことですか?」
「いや…まぁこんなことがあった後だからな。別に私は気にしない、ということが言いたかった」
「あのことですか」
私はふうっと息をついた。こんな事態だったのに2人とも気にするとこそこなんだ…!
「ヴィンセントさんはもう要らないんですか?」
私はすこし意地悪したくなって言った。
「そんなことは言っていない」
驚いた顔をしたヴィンセントさんに舌を出した。
「もう遅いです」
「ガードルートっ」
珍しく慌てたように追いかけてくる。そんな姿を見て久しぶりに笑った。
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