114 / 155
本編
その先に
しおりを挟む
「ガードルート、ガードルート」
呼ぶ声にハッとして目の前の人を見つめた。フードを被ったその下の蜂蜜色の目が心配そうに揺れている。店を出て、待たせている馬車に向かうだけなのにやけに遠く感じる。
「ノアさん…ごめんなさい…」
「いや、謝ることはない。…どうかしたのか?別室に行ってから急に様子がおかしくなったようだが…」
ぐっと唇を噛み締めた。ここで話すのは良くない。どこで誰が聞いているかわからないのだから。
「…あの、ここでは話したくありません」
「…そうか、わかった」
頷いて手を繋いで歩いてくれる。こんな時でもなければ、すごく嬉しくて、すごく幸せな気分になるのに。
馬車に入るとノアさんの胸に飛び込んだ。
「…ガードルート、何があったんだ、俺に話せるか?」
抱きしめてくれる腕にすがり私は涙ながらにさっきあったことを話した。ノアさんは頷いて何も言わずに聴いてくれた。
「そうか、フィースとイアンの義理の母か…」
深く考えるこむようにすると、フードを上げた。黒い短髪にクセがついていて、いつもとは違う雰囲気で格好良い。こんな時なのに小さくため息をついてしまう。
「あの人、私のこともあの2人や妹さんのことも、同じ人間だと思っていません。体の良い道具にしか思ってないんです」
「…イアンとフィースが、逆らえない理由はその妹か?」
「ええっと、産んでくれたお母さんの遺品のこともあるとは思いますけど…1番の理由はそれだと思います」
「なるほどな…貴族とはいえ、三男と四男だ。絶縁してしまえば済むという問題でもなさそうだな。あの双子には知られたくないんだな?ヴィンセントとミッキーに相談してみるよ。…そんなに泣くな。可愛い顔が台無しだ」
指の腹で私の頬を触ると涙を拭ってくれる。
「でも…フィースとイアンが、このままだと、…」
しゃくりをあげながら泣く私を包み込むように抱きしめると優しく囁いてくれる。
「心優しい俺の恋人。そんなに辛そうに泣かないでくれ。俺や他の奴等がなんとかするよ。その柔らかくて綺麗な心が傷つくのは俺も辛い。事態が許せば俺が切り捨ててやるのにな」
物騒なことを言い出してその魅力的な顔で微笑む。
「ノアさん…?」
びっくりして涙が一瞬止まってしまう。
「笑ってくれ、ガードルート。せっかくのデートだから、これからは楽しもう。悩み事は後から考えても間に合うだろう?」
「はい、はい、ノアさん。ありがとうございます」
ふふっと私が笑うとちゅっと触れるだけのキスをくれた。
呼ぶ声にハッとして目の前の人を見つめた。フードを被ったその下の蜂蜜色の目が心配そうに揺れている。店を出て、待たせている馬車に向かうだけなのにやけに遠く感じる。
「ノアさん…ごめんなさい…」
「いや、謝ることはない。…どうかしたのか?別室に行ってから急に様子がおかしくなったようだが…」
ぐっと唇を噛み締めた。ここで話すのは良くない。どこで誰が聞いているかわからないのだから。
「…あの、ここでは話したくありません」
「…そうか、わかった」
頷いて手を繋いで歩いてくれる。こんな時でもなければ、すごく嬉しくて、すごく幸せな気分になるのに。
馬車に入るとノアさんの胸に飛び込んだ。
「…ガードルート、何があったんだ、俺に話せるか?」
抱きしめてくれる腕にすがり私は涙ながらにさっきあったことを話した。ノアさんは頷いて何も言わずに聴いてくれた。
「そうか、フィースとイアンの義理の母か…」
深く考えるこむようにすると、フードを上げた。黒い短髪にクセがついていて、いつもとは違う雰囲気で格好良い。こんな時なのに小さくため息をついてしまう。
「あの人、私のこともあの2人や妹さんのことも、同じ人間だと思っていません。体の良い道具にしか思ってないんです」
「…イアンとフィースが、逆らえない理由はその妹か?」
「ええっと、産んでくれたお母さんの遺品のこともあるとは思いますけど…1番の理由はそれだと思います」
「なるほどな…貴族とはいえ、三男と四男だ。絶縁してしまえば済むという問題でもなさそうだな。あの双子には知られたくないんだな?ヴィンセントとミッキーに相談してみるよ。…そんなに泣くな。可愛い顔が台無しだ」
指の腹で私の頬を触ると涙を拭ってくれる。
「でも…フィースとイアンが、このままだと、…」
しゃくりをあげながら泣く私を包み込むように抱きしめると優しく囁いてくれる。
「心優しい俺の恋人。そんなに辛そうに泣かないでくれ。俺や他の奴等がなんとかするよ。その柔らかくて綺麗な心が傷つくのは俺も辛い。事態が許せば俺が切り捨ててやるのにな」
物騒なことを言い出してその魅力的な顔で微笑む。
「ノアさん…?」
びっくりして涙が一瞬止まってしまう。
「笑ってくれ、ガードルート。せっかくのデートだから、これからは楽しもう。悩み事は後から考えても間に合うだろう?」
「はい、はい、ノアさん。ありがとうございます」
ふふっと私が笑うとちゅっと触れるだけのキスをくれた。
22
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
【美醜逆転】ポジティブおばけヒナの勘違い家政婦生活(住み込み)
猫田
恋愛
『ここ、どこよ』
突然始まった宿なし、職なし、戸籍なし!?の異世界迷子生活!!
無いものじゃなく、有るものに目を向けるポジティブ地味子が選んだ生き方はーーーーまさかの、娼婦!?
ひょんなことから知り合ったハイスペお兄さんに狙いを定め……なんだかんだで最終的に、家政婦として(夜のお世話アリという名目で)、ちゃっかり住み込む事に成功☆
ヤル気があれば何でもできる!!を地で行く前向き女子と文句無しのハイスペ醜男(異世界基準)との、思い込み、勘違い山盛りの異文化交流が今、始まる……
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる