花は風と共に散る【美醜逆転】

本編

叫び

「僕は、ガードルートと居られる道を選ぶ」
しんとした部屋の中、最初にイアンが声を出した。
「ガードルートが要らないのなら、取り分も要らない…騎士の仕事でも生活するだけなら十分稼げるし」
フィースもぽつりと声を出した。
「僕は取り分を受け取る。…お金は力だ。もしもの時にガードルートやノエルを守れる」
「フィース兄さん…私も、受け取ります。それに財産を管理する人間も要りますよね？私は閉じこもって勉強ばかりしていたので、その知識を活かしたいです」
「なるほどな、あとはイアンの取り分だけだが…ガードルート、君はどう思う？」
急に話が向けられて私はドキっとしてしまう。

「えっと…フィースの言ってることも最もだと思う。その、これから結婚したり、子供作ったりする時にお金要るでしょう？貰っても貰わなくても一緒なら、わたしは受け取った方が良いんじゃないかなって思う」
内容が内容なだけにもじもじしながら言うと、イアンが泣きながら抱きついて来た。
「ガードルート、嬉しい」
「うん、イアン。これで良い？」
「うん。僕も2人と一緒にするよ」

「それでは決まったな」
眼鏡を上げながらヴィンセントさんは言った。
「これで、君達に付き纏う悪い縁は切られるだろう。…だがこれで終わったと思わないことだ。バーンスタインの血は望むと望まざるとに関わらず繋がっているからな。それでも絶対に縁を切るという強い意志を持て。これからはここにいる全員で力を合わせて生きていくんだ」
私も、その言葉に皆も頷いた。


「ヴィンセントさん」
私は2人きりになった部屋で彼に抱きついた。
「ありがとう。これでフィースとイアンのこと、上手くいくと思う」
「言っただろう？君を悩ませるものは排除すると」
「…これで義理の母であるあの人は関わって来ない？」
ヴィンセントさんは肩を竦めた。
「彼等に関して何の権利もないからな。諦めるしかないだろう。もし無理強いすれば、犯罪だ。届け出ることももちろん可能だな」

「嬉しい。ヴィンセントさん、ありがとう」
私は背伸びしてキスをした。くすぐったそうにヴィンセントさんは目を細める。
「お礼ならたくさんして貰おうかな。明日は休みだ。ガードルート」
ふふっと、笑った。
「…この書類出しに行ったら、ね」
机の上に置かれた書類を見て、私は下手なウインクした。