花は風と共に散る【美醜逆転】

待鳥園子

文字の大きさ
119 / 155
本編

意地悪

しおりを挟む
ノエルさんは結局、ヴィンセントさんの実家である大きな商会で働くことを決めたようだ。彼の提示したいくつかの選択肢の中で彼女のしたかった財産の運用を1番覚えられる、と踏んだのだと思う。
私はちょっと残念だ。提示した一つの選択肢にこの寮に入って働く、というのもあったから、今度こそ可愛い後輩と働けるという気持ちもあった。
フィースとイアンはバーンスタインの名を捨てて便宜的には母方の姓であるバンチャットを名乗ることにしたみたい。どちらにしても完全実力主義の黒竜騎士団では関係ない話みたいだけど。

「ガードルート、今帰り?」
食堂からの帰り道、後ろから声をかけられた。フィースだ。今日は彼とのデートだから早く帰って支度したくて、急いでたんだけど仕方ない。
「何、フィース。私急いでたんだけど」
「この後は僕とデートだろ?他に何か用事があったの?」
女の子には色々支度とかあるんだけど、フィースにはなんとなく言いたくない。出会った頃に比べたらだいぶ甘くなってきたとはいえ、フィースは基本的な性格は意地悪。

「…ううん。なんでもないけど…」
「じゃあ、良いだろう?このまま一緒に部屋に行こうよ」
「えっと…時間通りに来てくれる?その、色々準備もあるし」
「準備?」
「…もうっ、フィース鈍感だよっ。色々あるの」
「何、言ってくれなきゃわからない」
「その、お風呂も入らなきゃだし…」
「一緒に入ったら良いだろう」
なんかさらりとすごい事言わなかった?この人。
「ぜったい。いや」
一言一言言い切るように言った。

「なんでだよ。もう恥ずかしがるようなこともないだろう?もっと恥ずかしいこと、色々してるんだから」
私は顔が赤くなるのを感じた。人通りが少ない通路だけど、全くないわけでもない。
「もうっ、フィース!誰かに聞かれたらどうするの?」
フィースは爽やかな笑顔を作ると私を見下ろしながら言った。
「いや?なんとも。別に良いだろ?恋人同士だし、皆知ってるよ」
「フィース!もう、それ以上言うなら今夜のデートなしにする!」
すこし驚いた顔をするとにこっと笑って言った。
「ごめんごめん。ガードルート。怒ってる君が可愛くて、ついいじめた。…許して?」
「ダメっ。もうフィース。どうしてそんな風に意地悪なの?」
「前にも言っただろう?好きな子はいじめちゃうんだよ。男の悲しい性だな」
「そんなことないよ。フィース以外は皆私に優しいもん」
「じゃあ、僕の勝手な性格だ。好きだよ。ガードルート。怒らないで」
結局、廊下で言い争うのは嫌で、2人で部屋に戻ったけど、納得したくなかった。
フィースは、ほんと意地悪だ。
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

【美醜逆転】ポジティブおばけヒナの勘違い家政婦生活(住み込み)

猫田
恋愛
 『ここ、どこよ』 突然始まった宿なし、職なし、戸籍なし!?の異世界迷子生活!! 無いものじゃなく、有るものに目を向けるポジティブ地味子が選んだ生き方はーーーーまさかの、娼婦!? ひょんなことから知り合ったハイスペお兄さんに狙いを定め……なんだかんだで最終的に、家政婦として(夜のお世話アリという名目で)、ちゃっかり住み込む事に成功☆ ヤル気があれば何でもできる!!を地で行く前向き女子と文句無しのハイスペ醜男(異世界基準)との、思い込み、勘違い山盛りの異文化交流が今、始まる……

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...