分岐ルート(仮)

魂の暇つぶし

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宿主の物語。

化け物への通り道(それはHeç vaxt geri dönməyən birtərəfli bilet)

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虹が少しだけ濁る。
代わりに存在感を増し、透き通る透明性が無くなり、ひたすらに濃い虹が少女の身体に巻きつく。
少女の顔は、笑っていた。
巻きつく虹が形を鋭利に変えていく。
少女の顔は、笑っていた。
虹は少女に向かってくる
少女の顔は笑っていた。
刺さる
少女の顔は笑っていた。
次々と、少女のいたるところに
少女の顔は笑っていた。
際限なく、刺さる。
少女の顔は笑っていた。
刺さった虹が少女に融合していく。
少女の顔は笑っていた。
人の姿が歪む
少女の顔(?)は笑っていた。
ひたすらに、禍々しく神々しい虹という生命体が誕生した。
その顔は笑っていた。
全ての快楽が一斉に足らなくなる。
その顔は焦っていた。
虹でできた手が周りのビルを一掃する。
異形の命の糸は途切れた。
その顔は焦っていた。
すると、一つの小さな虹のドームがあった。
その顔は驚いていた。
虹の手が、そのドームを壊す。
その顔は笑っていた。
中には、ひとりの眠っている少年。
その顔は笑っていた。
虹の手がその少年を掴み、生命体の口と言える場所の前に運ぶ。
その顔は笑っていた。
今食べようとしたとき、その少年の顔を生命体が認識する。
その顔は笑っていた。
(やめて!)
その顔は笑っていた。
(やめてよ!お願いだから!)
その顔は笑っていた。
(やめて...お願い...)
その顔は泣いていた
涙の水滴が地面に落ちる。


虹は溶ける。



溶けて無くなるわけではなく、まだある片鱗に気づかないように、少女は少年を抱きしめる。
少女の顔は泣いていた。
ただ抱きしめたまま泣いていた。





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