分岐ルート(仮)

魂の暇つぶし

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〜ハピネス編〜 最初は優しさ

咳に紛れ、悲惨

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「コレは...なんですか?」
「禅の好きな料理のレシピよ?莉子ちゃん料理の練習してるらしいじゃん?」
 麻也がグッと拳を握り、満面の笑みを見せる。
「あ、ありがとうございます!」
 莉子はまるで、宝を見つけた冒険家のように目を輝かせている。
あのこの反応が楽しみねぇ~...あら?」
 何かに気付いた麻也の視界には...
 (アイツの好物⁉︎き、気になる!)
 そんな感情が隠しきれていない張華の顔があった。
「あらぁ~禅ったら、幸せ者ねぇ」
 そんな光景を見て、麻也のニヤニヤが止まらない。
 

















「さて、どうしたものか...」
 手に天城の心臓のカケラを持ちながら、アビゲイルは、夕方の鉄橋に立っていた。
 目に曇りが出る。
 一人の恩人に夢を見せれなかった。
 頭の中には、思い出が、私を受け入れてくれた少女との記憶が、何度も再生される。
 夢を見せれなかったのは、自分にも責任があったのだと、アビゲイルは自認している。
 だけど、どうしてもあの少年が許せなかった。
 あの少女の夢の中の最重要人物であった少年は、酷いことに少女の記憶がカケラ以下も残ってなかった。
 それどころか、少女よりも大事な記憶が上書きしていたらしい。
 元々、アビゲイルの本来の目的は、少女の夢とは全く違う道の未来を描いていた。
 だけど、アビゲイルは少女の夢を叶えることにした。
 恩人のためには投げることに躊躇わず、少女の夢を自分の夢とした。
 でも、夢は散った。
 今の少女の体から、元の少女の意識はもうない。
「だから、あなたのもとへ送ったわ」
 アビゲイルは心臓を天に掲げる。
「そうしたら、そっちで一緒にいられるからね。」
 心臓が砂になり、風に流れる。
「...さて」
 何も無くなった手に、一つの槍が現れる。
本体あなたなら、どうするのが正解だったか、わかる?」
 問いかけるは、夕闇の中...
「この槍の飛ぶ方に本体はいる。」
 アビゲイルは少し目を閉じ、考える。
 (いや...今は違うかな...)
 まだ、自分の夢を叶えるときではない。
 (あと少しだけ、少しだけ...あの少女の夢を見よう。)
 そんな決意を胸に抱き、魔女は槍を天に向け、砂に返した。
 夕闇はもう少しで、闇へと変わる最中だった。

















「いくらなんでも遅すぎるわ!」
 夜の22時、いつも健康な天城家は、体力お化けの母親、天城麻也以外は就寝している時間。
「電話にもでませんね。」
 二人の少女が窓際で、しびれを切らしていた。
天城アイツ...まさか...あの艶美おんなと...?」 
 張華の額に汗が流れる。
「いや、まさかそんなわけないよね。」
 天城と腕を組んでいる艶美が頭の中にフラッシュバックする。まるで(天城くんは頂いました。)といった顔で、記憶に鎮座している。
 張華は拳を握る。
「よ、よし!行くわよ莉子。」
「今からですか⁉︎...て、え?」
 莉子は張華の方へと視線を向けた。
 その張華の姿は、髪は虹色へ、身体には虹の衣を纏っているかのように、莉子には見えていた。 
天城アイツを最後に見たのが、艶美優樹菜と一緒だったっていうのが気に入らないわ」
 張華の口からドクドクと悪口が飛ぶ。
「艶美は 。 教室にいる人達と話すときは、楽しそうにしていたけど、天城と一緒にいる時には、何故か...」 
 張華達は玄関から飛び出し、天城を見つけるため深く悲しい闇へと駆け出した。








「天城禅が死んだ、か」
 とある研究室にて、試験管を覗く白衣を着た少女がいた。
 その少女が覗く試験管の中には、赤く鼓動する何かのカケラが透明な液体に沈んでいた。
 そして、その横のモニターには、食べかけの果実を運ぶ、ドローンの映像が流れていた。
「やれやれ、もう嗅ぎつけてきていたのか。」
 少女がモニターに映るドローンに触れる。
「命令、私のところに来い。」
 その言葉が、部屋に響いた瞬間モニターに映るドローンが動きを止め、今までと全く別の方向に飛び去ろうとする。
「よーしこのまま、私のところに...」
 だが、その先に刀を持った少年がいた。
「あれか、...よぉ、オグル・ジャック。その食いかけの果実、俺に渡してくれよ」
 少年、矢中はどはそう言いながら、ドローンのカメラを凝視する。
「いやだね!」
「...そうか」
 少年は、鞘から刀を抜き、ドローンを無力化するために、刀を振る。
 しかしその瞬間、ジャックは邪悪な笑みを浮かべもう一度モニターに触った。
「...あ」
 その瞬間、矢中の視界の中からドローンの姿が消える。
「バイバーイ、矢中くーん!今の君だけには、渡したくないだよねー!」
 そんなジャックのバカにするような笑い声だけが、広い町に響いていた。
「チッ声は可愛くなっても、性格は相変わらずか...」
 刀を鞘に入れ、頭を手で押さえながら、矢中は少しだけ切れた果実の皮を手にとった。
「こんなもんで良いのか?」
 こっちに向かって、ゆっくりと歩いてくる古い懐中時計を持った女に向かって言った。
「...くるわ」
 女は矢中の後ろを見ながら、呟いた。
「矢中、なんでここにいるの?」
 聞いたことのある、友人の友人の棚橋の声がする。
天城アイツに何かあったの?」
 声はとても震えている。
 恐怖ではなく、怒り、明らかに攻撃性のある感情が乗った言葉が矢中と女にかけられている。
 矢中は次に自分が口に出す言葉で、この少女は暴走する、それが分かった。
 だけど、止めれなかった。
 さっきの憂さ晴らしぐらいになるだろう、とそう思っていた。
「天城は死んだよ。」
 完全に的中した。
 虹が、暗い町中に架かる。
「...」
 矢中は刀を今まさに、暴走を始めた少女に振り翳そうとしていたその時、虹が、希望の象徴が、身体を貫いていた。が、それは矢中にではない、 
 に虹を作り出した張本人に
 刺さっていた。
 天城が抑えた化け物が、天城の消失により、自我を取り戻した。
「...矢中アンタが殺したの?」
 身体が貫かれている状況の中、張華はまるで、気にせず声を出す。
「さ、さぁ、どうかな」
 矢中の額に汗が滴る。
 殺気がヤバい。

 棚橋張華、虹の使用者。

 あらゆる媒体から、虹の記憶を具現化して使用する。
 使用方法は多岐に渡り、武器、防御、移動、ましては飛行まで。
 彼女の思考能力があるまで、無限に使えるはずの能力である

 しかし、彼女は自らの攻撃を好まなかった。
 戦うことが怖いからではない。

 あるものを起こさないように...
 いつからか存在に気づいていた、自分の能力の奥に眠る化け物に...今が、今が!起きる時だ!、と気づかせないために...

 だが...(やっと)


 彼女はキレてしまった。(外に...)

 暴走の蓋が今、完全に開かれた。


 張華を虹が包み込む。
 そのまま、虹は一人の人間の形を保ったまま、彼女の身体に溶け込む。

「これ以上はまずそうだな!」
 額に汗をたらした矢中が張華に向けて刀を振る。
 だが...
「まじか...」
 刀はスッパリと消えてなくなっていた。
 切る対象に当たった部分だけが、そのまま消えていた。
 数秒遅れて刀身の先だけが落ちる音が響く。
 その音が消えて無くなる。そして矢中の目の前で笑う張華の手から虹色の閃光が輝く。
「おっと流石にそれ食らったら、タダじゃ済まねぇ。」
 矢中は切れた刀を捨て、新しい刀を鞘から取り出す。
 童子切安綱どうじきりやすつな六ツ胴を誇った切れ味をもつ妖刀だ。妖怪みたいな今のアンタにはピッタリだな。まぁ、レプリカだけど」
 その刀も張華の虹に負けず輝く。
「必殺技...なんてもんわねぇけど、」
 刀を虚空へと8回振る。
 刀からは空気を切る音が聞こえ、ちょうど降ってきた葉っぱが切れる。
 矢中は刀を構える。
「最高の一振りぐらいは見せてやるよ。」















「天城禅の周りはすごいわね。」
 懐中時計を持った女が、矢中から離れて歩いていた。
「自分を知らない子ばっかり。」
 そんなため息をつく女に向かって、歩いてくる少女がいた。
「あ、あの!今...天城って言いましたか?」
 蒲谷莉子
 もう一人の天城とは違う憑依経験者。
 か弱い少女の目にも、相手を敵だと認識しているように見える。
「えぇ、言ったわ、だから?」
 女の拳が莉子の体に向けられる。
「天城さんに危害を加えたのなら、」
「なら?」
「私が倒します!」
 莉子のぎこちない握り拳が女に向けて放たれた。
 だが、少女の拳は届かない。
 代わりに自身の身体に女の拳が刺さり、穴を開けた。心臓のあるはずの胸に穴が開く。
「ギャャ⁉︎」
 女の目が曇る。
「やっぱり...あなたは攻撃には向いていない。」
 女が口を開く...
「ちょっと矢中がやった張華ちがう娘と同じ方法を試してあげるわ。」
 倒れそうな女の頭を掴み、「天城禅は死んだ」
 この一言で棚橋張華は覚醒した。
 なら、この莉子ならどうなる? 
 女はそう言って少女を投げ捨て、その場を立ち去ろうとしていた。
 地面へ落ちた少女は自身の身体に触る。
 手が薄く光り、自身の治癒能力を使って療そうとするが、途中で力尽き腕は落ちた。
 莉子の目は薄く、覇気のないものへと変わってしまい、意識も同時に薄れていた。
 (天城さん...)
 かろうじて再生させた心臓も稼働せずに血を循環させはしない。
「君には無理か...」
 女はため息を吐き、その場所を後にする...はずだった...
  落ちていく視界のなか、少女は一枚の赤い皮のようなものを見つけた。
 (これは...)
 皮を手に取り、少女は握った。
 (天城さん?)
 莉子はギリギリの能力のタンクの中から、微かに残った力をその皮に注ぎ込んだ。
「?何を...」
 視界が真っ黒になる直前に、一枚の皮は、赤い本来の木の実へと姿を戻した。
「!あれは⁉︎」
 女は驚き、困惑し、走り出した。
 (完璧な状態のLife⁉︎、何故だ?確かあの時、ジャックに取られて...⁉︎私が持っていた皮がない!)女は木の実へと走る。
 (まずい!アレを莉子あの子が摂取してしまうのは...!)
「...これは...」
 莉子は考えるよりも先にその果実を、口にした。
 一口の天城の一口よりも小さい、口の跡が木の実に現れる。
「まだ...まだを取り込んでいない!」
 莉子と女の距離は10m
 その距離がさらに縮まる直前。
 8が迫った。
「な...」
 女の伸ばした腕を切り取り、莉子へと向かう。
「...天城さん」
 莉子は木の実を持ったまま手を上に上げていた。
 斬撃は木の実を切り刻んだ。
 サラサラの砂のようになった木の実が、莉子の無くなった腕、穴の空いた胴体に降り注ぐ。
「...矢中がやったか。」
 女は自分の無くなった腕を見ながら、つぶやく。
「私に最大限のダメージを与えて、妹を助ける時間を設けるために...」
女は莉子の近くへと歩く。
「せめて、私の身体に保存を...」
そのまま、莉子に積もった、砂のようになったLifeの山に顔を突っ込んだ。
(ひとくちだけ...私なら影響はない...矢中は、ほっといていいかな。妹の方はとっくににげてるだろうしね。)
女は顔を出すと、上を見上げた。
「さぁ、めんどくさいね。」
その無くなった手は片腕だけが復活していた。
莉子の体に積もっていた粉微塵のLifeは、淡い輝きを放ちながら、砂時計のように、中心から窪んで、少しずつすくなくなっている。
それと同期して切り刻まれた腕が、光を伴って形を取り戻している。
莉子の髪は
対して女の目は暗く、闇を灯していた。
結局は他人の力を使っての覚醒。
女はそれが、気に食わない。
天城禅や棚橋張華は、自分の中にある可能性に直接触れた。
対して莉子このこは、その可能性に、人の手を使って触れた。
その違いが嫌だ。もしかしたら、ただのかもしれない。
「だから、今ここで...」
女は手を上に上げる。
「君を殺す」 
女の手には時計の長針と、短針を模した剣が握られ、背には1m程の時計が憑いていた。


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