分岐ルート(仮)

魂の暇つぶし

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〜ハピネス編〜 最初は優しさ

雨の音

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「再生」
女の声が莉子の耳に届いたその瞬間。
女は砂に、時計の剣を刺した。
「私のために働きなさい?
その言葉と共に、女を守るように人の形が形成されていく。
「え?」
動揺した莉子の目の前に現れたのは、あの
あの女に死んだと言われた存在。
「あ、まき、さん?」
莉子は手を伸ばす。
だが...
「あ?」
天城は仲間ではなく、ゴミを見るような目で莉子を睨み、手首を掴んだ。
「...え?」
そして、勢いよくそのまま建物の外壁まで飛ばし、莉子は叩きつけられた。
「...」
莉子は動かない。
身体など今の状態なら一瞬で直せるのに、できない。
心の動揺が邪魔をする。
「...なんで」
莉子はそのまま気絶した。
「OKか?これで」
天城は女に言った。
「上出来よ。助かったわ。」
女は汗を拭いながらそう返した。
「了解、...だが」
天城は無表情で言葉を返す。
その瞬間女に向けて、強烈な一撃が放たれる。
「油断か?」
天城はその一撃を受け止めた。
「何をしてるの?禅!」
声を荒げ、もう一発今度は天城に向けて、攻撃が放たれる。
「よっ」
天城はそれをかわす。
「帰ってこないと思ったら、莉子ちゃんに何してるの?」
天城家のメイド、花札夏季が天城の前にいた。
「危ないなぁ、夏季ねぇ」
無表情の天城を前に、夏季は手に力を入れる。
「とりあえず連れて帰るわ...」
一瞬で、天城に向けて突き出した拳は、天城の顎を一直線に捉える。
「あっぶね」
天城はスレスレでその拳を避ける。
「やっぱ強いな。」
天城は少し息を切らす。

花札夏季の身体能力は並みの人間の限界を振り切っている。
天城家の防犯面を一人で担うメイド
能力など持たないが、一般人とはいえない、超人。
天城の脅威的な瞬発力を鍛えた張本人。
「いくよ」

天城が深く、な呼吸をしたその瞬間、
目の前から夏季が消え、顔面に鋭い拳が突き刺さっていた。
「...ッ!」
その一瞬
「っな⁉︎」
一瞬だった。
天城は地面へと叩きつけられ、意識を刈り取られた。
「まだまだね。」
背中に莉子を背負い、天城の服の襟を掴み、その場から立ち去ろうとする夏季は、目の前にいた女を見る。
「連れて帰るのは困るよ?花札夏季。」
女は夏季の胸を剣で刺す。
「⁉︎」
「返してもらおうか?」
女は、最後に剣を抜こうとする。
「え?」
…が、抜けない。
いくら力を入れてもびくともしない。
「まさか...能力のない一般人が...」
女は、剣から手を離す。
「能力?よくわからないけど、アンタが一番悪そうね。」
夏季は自らの身体に刺さっている剣を、抜こうとはせず、持ち手の部分を握り、刺さっている部分だけを残して、折ってちぎってしまった。
(10分ぐらいは全力で大丈夫かな?)
標的を目の前の女に絞る。
「どうなってるの?」
困惑した表情の女に向かって夏季は、拳を向ける。
「アンタも連れて帰って、禅と一緒に説教してあげるわ」
夏季は、女の腹に拳をぶつけて気絶させ、天城同様服の一部を掴み、安全な場所へと寝かせていた莉子と天城を一緒に、連れて帰ろうと帰路へと身を向けた。
その一瞬。
目の前の景色が変わった。
真っ暗な住宅街ではなく、
「...⁉︎ここは⁉︎」
夏季は身体を起き上がらせようとするが、思うように動かない。
「入りますよ。」
女性のような声が、壁を通して聞こえる。
ドアが、引かれその声の主が入ってくる。
「やっと起きましたね。」
医者なのだろう、真っ白な装いで、夏季へと近づく。
「あの!」
夏季は、困惑のうち、疑問を医者の女性へと問う。
「私はどうして、ここに?」
そんな質問に、医者は答える。
「病院の前に倒れていたんですよ。よかったですよ、退勤しようとしていた私の同僚があなたを見つけましてね。お腹に刃物が刺さっていて、大変でしたよ。」
女性の安心した顔が夏季の目に映る。
だが、もう一つ確認することがあった。
「あの、もう3人ほどいませんでしたか?」
夏季が最後の記憶で確かに運んでいた、禅と莉子と、あの女の状態を確かめる。
「はて?報告だと、そこにいたのは
「⁉︎」






















「まったく、なんだったんだあの女は。」
片腕に剣を持った女が、忌々しそうに呟く。
「花札夏季、俺の元師匠だよ。俺が勝てる見込みは少ないぐらいには、強い」
無表情な、天城禅が答える。
「だとしても強すぎる。フィジカルだけなら、に勝ってるんじゃないかしら?」
ヤレヤレと、女は首を振る。
「そのアイツって奴も気になるけど、その前に聞きたいことがある。」
「あぁ、分かっているわ。」
女は剣を地面に刺し、優しく答えた。
「私の名前は、レイン。」
よろしく、とレインは握手を天城に求める。
「あぁ、よろしくレイン」
レインの笑顔と天城の笑顔は口にしか現れない。
二人が願っていたものは違う。
だが、一人はそれを無理やり一方に合わせる。
そんな関係。
「莉子はどうする?」
横で、下を向いた莉子に天城は聞く。
「...付いていきます。」
「そうか」
天城は莉子を抱き寄せる。
「すまないな。」
「...いいえ」
莉子の顔は穏やかで優しい笑顔だった。
「いいか?レイン。」
「まぁ、その子の力は充分役に立つからねぇ...でも?」
レインは莉子の耳元で呟いた。
「...は、はい。」
レインは後ろを振り返り。
「よし、私の拠点へ行こうか。」
ペチンっと指を鳴らして、光と共に天城たちを包み、消えた。
残ったのは、何もない住宅街の道路。
遠くの山に朝日がかかり、暗かった町に光が灯されていく。
この日一人の少年と少女は表から去った。
ポツポツと雨が降る。
傘を差しながら、始発の電車に間に合うように駆け足で歩く人がいる。
その靴の音は雨に消されて響かない。




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