転生するのが嫌で浮遊霊になりました

城戸©︎

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幸せと不幸せの形

少年との契約

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「おじさん!!」

聞き覚えのある声に俺は思わず振り向いた。

そこには通夜振りに会ったあの少年がいた。

あの通夜の記憶が蘇った。

俺が助けたあの少年だった。

何故ここに?!そう思ったが、よく考えてみたら死んだ後暫くこの街を避けていたのは俺だ。

元々俺も生きていた時はこの街に住んでいたし、この少年もそうだ。

たまたまこの近くを通ったのか?

しかし、見覚えのある制服を着ている。

この学園の小等部の制服…

「お前…ここの学生か?」

少年は頷く。

「ちょっと聞きたいんだけど、お前ここの中等部の学生が行方不明になったの知ってるか?」

少年は俺の言葉にビクッと体を震わせた。

「おじさん、何でその話知ってるの?知り合い?」

学園中で噂になっているようで、少年も知っていた

「知り合いとかじゃねぇけどよ…ちょっと気になってな」

少年は震えた声で言った。

「知らない人なのに探してるの?僕の事だって知らないのに助けて死んじゃったよね?」

悲しそうな目をするなよ、何なんだよ。

それにしてもこの少年にだけ何で俺が見えるんだ?
 
俺が助けたから?

「まぁ、それもあるな」

はっ?!何かどっかで聞いた声だな….

あぁ…俺が死んだ時、俺の意識の中で話しかけてきた奴。

名前何だっけ?聞いてねぇけど死者の使いだとか何とか言ってたな。

「お前に強い情や念を抱いている人間や死者の気配に敏感な人間。現世では霊感が強いなどと言うだろう?


だが、少年は後者ではなく前者のようだな」

使者の言葉に戸惑った、この少年が俺に強い情や念を抱いている??助けたからか?

「この少年はお前に感謝の気持ちと罪悪感を感じているのだ、お前からもそれは感じ取れるだろう。話せるのだから」

ああ、感じるよ痛いほどに。

考え込む俺に少年は言った。

「おじさん、僕…おじさんが助けてくれたように僕もおじさんを助けたいんだ」

少年の思わぬ言葉に驚いた。

確かに罪悪感を感じているのは態度や初めて話した時の言動でひしひしと感じていたが…

まだ小学生だ、幽霊である俺に怯えも感じている筈なのに俺を助けたいだなんて…

何か変な今までに味わった事のない感情が込み上げて来た。

俺は嬉しいのか?助けたいのはきっと罪悪感からだろう?

「罪悪感だけではない、少年の純粋にお前を想う気持ちだ」

人の心を読むな!!

「助けるなんて…お前まだ子供だろ?気持ちはありがたいが、お前を危ない目に合わせるかもしれねぇし駄目だ」

そう言った途端また少年の表情は曇った。

バツの悪そうな顔をしている俺に溜息をついて使者は悪態をついてきた。

「お前、人にも触れられないだろう?物も触れないだろう?少年が自らこう言っているのだ、少し助けてもらう位良いのではないか?」

うるさいなお前!!

「いっそ契約しろ…この少年と

 お前転生する気がないのだろう?」

契約??何だそれ

「契りを交わすのだ。
お前が命掛けて救ったんだ、その代償だ。

少年と契約を交わす事でお前は力を得る事が出来る。

物にも触れられる、人の姿に一時的にだがまた戻る事も可能だ。

当然他人にも見える。

人間より高い能力も得られる。

だが少年にそれに見合った対価を支払って貰う」

待てよ…対価って何だよ…まさか…

嫌な予感しかしない。

「察しの通りだ、命だ。だが、ほんの少しずつだ。この少年はまだ若い

本来はこの少年が死ぬ筈だったのだ、安い対価と言えよう」

「駄目だ絶対駄目だ!何の為に俺が助けたんだよ!」

少年は不思議そうにこちらを見ている。

「おじさん、誰かと話してるの?」

?!

声に出していないのに何故気付いた?!

「わしの気配も感じ取れるようだなこの少年…不思議な能力を持っているようだ、もしや…いや、まさかな。」

そうなのか?そういやこいつは幽霊じゃないし、俺の意識の中にいるようなモンなのに…
分かるのか??

「僕、おじさんが困っているなら何か手伝いたい。その行方不明の人探すの手伝う!」

「ちょっと待てよ!ヤバい奴らが絡んでるって中等部で噂してた話を聞いた、危険だ」

少年に契約の話は伏せる事にした。

この契約は交わすべきじゃない…

俺が勝手に助けたんだ、命をすり減らして契約なんて馬鹿げてる。

「お互いの承諾がなければ契約は不可能だが、少年本人が望むなら可能だぞ。
 お前も同意しなければ不可能だが」

「する訳ないだろ!」

少年が不思議そうな顔をしてこちらを見ている。

「おじさん、今の話本当なの?」

ちょっと待て待て!!まさか俺の意識の中でする使者の声こいつに聞こえてる?!

「いや、おじさんと重なって金髪の綺麗なお兄さんがうっすらだけど見えるよ、話してる事も聞こえてきたから」




「はっ?!俺逆にその使者見えてねぇんだけどっ!!金髪なのか?!

しかも一人称ワシって言ってるけど若いお兄さん?!こいつ一体いくつだよ!!」

「….この少年….やはりそうだったのだな」

何がだよ!!!

「いや、こちらの話だ。

 少年、聞こえていたのなら話は早い。
 どうだ?こやつと契約する気はあるか?」

少年は首を垂れて暫く考えこんでいる。

当然だ、寿命を削るんだ。
断るに決まってるし、俺もそんな事は望んでいない。

「やめろよ!!この話は無しだ!お前も聞いてたなら分かるだろ?!」

少年はスッと顔を上げて真っ直ぐな瞳で俺を(使者)を見て言った。

「僕、契約したい」

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