子鹿くんは狼

中山

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暖房がきいてきた部屋の中に、紗季の声だけが響いていた。ひんやりしていた正午の手のひらが熱をもってしばらく経つ。

「あ…ぁふ、あっ、あっ…」

服をずらしてあちこちに吸い跡をつけられて、胸の先端もさんざんなぶられて、紗季がまともに喋れなくなってからもしばらく経つ。

いつも正午は紗季をどろどろに溶かしてから入ってくる。たぶん彼にとってセックスはそういうものなのだろう、今も長い指を入れて、親指で敏感な突起を苛めながらじっと紗季を見つめている。

「み、見すぎ…っ、やぁ…」

「見たい」

彼の目元までは届かないからせめてと自分の顔を隠したのに、両手はあっさり退けられた。頭の上で手をまとめられて、素肌の胸が正午に向かって突き出されるようになる。優しいのにこういうところは強引だ。強引で、でも正午ならそうされても興奮を高めるものでしかない。

「やぁっ…」

下着はとっくに取り払われて、柔らかく濡れたそこはぐちぐちと音を立てた。視線はいたく満足そうだがこちらは恥ずかしさがなくならなくて、せめてと口元を手で隠した。その手の甲にキスされる。その距離でぼそりと言われた。

「すげえ締めてくる」

「や、ちょっ…!」

「ほら」

芽を優しくくりくりされて、入り口がきゅうっとなるのが自分でも分かる。

「あ、やだだめ、っ」

入れられた指がもっと深くまで入ってきて、一点を押し撫でてそれをゆっくりと繰り返す。気持ちのいいところをぐうっと押される度にお腹の奥の方が快感を思い出す。正午のもので激しく突かれているときのあの快楽を。

「だ…、あっあ…っ!」

細い指が抜かれていって、それからたぶん増やされてまた入れられた。さっきより圧迫感が増して、けれどそれがかえってもどかしい。黙って紗季のことを見ながら、正午は深いところで揺らすように同じ動きを繰り返す。時々乳首に唇が落ちてきて、尖らせた舌でつつかれても押し潰すように舐められてもそこはもう甘く疼くだけの器官になった。

「や、…ああぁん…」

指が入れられっぱなしなのにもっと欲しくて、平然としているくせに時々感じる激しい情動を全部ぶつけて欲しくて、お腹の奥がきゅうっとなる。

「紗季ちゃん」

腰が揺れとる、とにやりと笑って正午が言った。

「だって…ん、んっ」

「そうそう」

気持ちがいいところが一点あるのに、正午だって分かっているはずのそこを触ってほしいのに指を止められてしまってもどかしいのだ。いじわるだ。

「可愛いな」

頭を撫でられた。

いじわるで、大好きだ。

「…キスしたい」

高いところから唇が降りてきて、ついばむようなキスを甘噛みして引き止めた。引き止められた彼の唇がじれったいぐらいに紗季の唇を食んで、優しいキスの一方で指は紗季の中をぐりぐりと責め立て始める。今度は触ってほしかったところを。

待てなくなった胸苦しくなるほどの切なさは溶け切った声になった。

「しょ…正午くん…あ、やっ…ん…」

「んー?」

余裕たっぷりの正午に対して紗季の方はもういっぱいいっぱいで、もうだめと言っても分からないふりで愛撫が続く。

我慢できなくなって入れてとおねだりすると満足そうな笑みが返ってきた。指がずるりと抜けるのが喪失感のような物足りなさで、コンドームをつけるだけの間でも離れるのが淋しい。

手をとられ、硬くて温かい彼のものに紗季の指を添えられる。薄い笑みを浮かべたままの正午の唇が、それを紗季自身が入り口へ誘導すると嬉しそうに歪んだ。押し入られかける度に声が出る紗季の顔の横に両肘をついて囲い込んで見つめながら、ゆっくり入ってきて少し戻してを何度も繰り返してじらす。

「やだ、や…もっと…」

それには答えない、黙ったままの薄い唇がまた降りてくる。少しずつ角度を変えながら食べられるようなキスをしてくれて、唇を留めた姿勢で一気に奥まで突かれて背がのけぞった。塞がれた口から声は出なくて、喉が鳴る。

短い間隔で奥の方に何度も何度も当てられて、甘い痺れがつま先まで広がってじんじんする。前後に動く彼のものが時々深く抜き差しされて、その度に応えるようにお腹の奥に強い快感が巡った。

キスが解かれて、肩口に顔を埋められた。肘をついたままの腕に強く囲われて、荒い息遣いが耳のすぐそばで聞こえて、拘束の中で正午の欲情をただ受け止める。背に手を回して服の下へ潜り込ませれば彼の肌は汗ばんでいて、掴めなくて思わず爪を立てるともっと強く奥を突かれた。正午の動きたいように動く激しさが嬉しくて、切れ切れになる声で気持ちがいいと耳元でうわ言のように囁く。自分でも分かるぐらいに熱に浮かされた声に、同じぐらい熱い吐息混じりの声ともない声が返ってきた。



「明日起きれる?」

玄関でふらついた紗季に正午はそう言った。軽い冗談の口調だったから笑ってもう!と返して、けれどなんとなく離れがたくて抱きついた。

「正午くんこそ」

「俺は平気。あと二回ぐらいやれ」途中でツッコミを入れて遮っておいた。

キスしてほしくて腕の中で見上げると、期待どおりに唇が落ちてくる。煙草のにおいのキス。

「…あ」

ん?と目顔で促されて、慌ただしい気がするが忘れないうちにと切り出した。さっきベッドにいるうちに訊けば良かった。

「あのね、正午くんもうすぐお誕生日でしょ?プレゼントあげたいんだけど…何がいいかな」

「あー」

別に気にせんでええ、と言うがそう言われても、紗季があげたいのだ。

「何か欲しい物ない?ごめんね、サプライズしたかったんだけど好みとかまだよく分かんないし、訊いちゃえって思って…」

「特にないな」

「早いよ」

「ほんまにないもん俺」

まあなさそうではある、と言うのも失礼か。

「んーでもお祝いしたいの。…じゃお仕事のものとかでもいいよ、たぶん私分かんないけど型番?とか教えてくれたら調べれば買えると思う」

「じゃあなんかすげえエロい下着とか買って着て」

「もう!」

プレゼントは私、は最終手段だろう。

「何か考えといてほしいな」

「えー」

「えーってなんでそんな面倒そうに…」

いかにも興味なさそうにドアにもたれてポケットに手を突っ込んで、ああじゃあこれ、と正午が取り出したのは車のキーだった。

「これにつけるやつ」

「そんなのでいいの?!」

「ええ」きっぱり断言されてしまった。

「あの、こんなこと言うのもなんだけど、予算は財布や時計ぐらいは大丈夫なぐらいに見てて…」

キーホルダーとは。百個ぐらいは買えてしまうではないか。

「財布も時計もある」

「じゃ服とか、ええと靴とか…」

「ある」

それらはあるなしだけで判断するものだっただろうか。本当に物欲がないんだなと、むしろ感心する勢いだ。

「でもそれだとお手頃すぎるでしょ…」

「これはずっと持ち歩くけん」

ちょっと照れた。そう言われると肌身離さずのもので実用的であるキーホルダーはうってつけのような気もする。反駁する材料が見つからずにもごもごしていると、正午に頬を掴まれてあひるの口にされた。

「六月は好きなもん言えばええから」

「そんなこと気にしてないよ!」

笑ってああそうと言って、本当にキーホルダーでいいからと念押しをして彼は帰っていった。六月は紗季の誕生日がある。

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