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第二部

早乙女、徳山をゲーセンに誘う

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 初デートからしばらくたったある日のこと。
 授業が終わるなり早乙女は徳山に声をかけた。
「徳山、今日暇?」
「暇」
「ゲーセン行かない?」
「いいよ」
 返事をすると徳山は机の上にあったものを通学カバンに入れ始めた。
「早乙女さんってゲームセンターとか行くんだね」
「そんなに行くわけでもないけど」
「じゃあなんで」
「別に、たまたまゲーセン行きたくなっただけ」
「あー、そういう日もあるよねー」
 徳山は頷き、カバンを肩にかけると
「じゃあ行こうか」
 と言って歩き出した。

 数分で二人は目的地に到着した。
 すぐに早乙女は徳山に尋ねる。
「あんた、何かやりたいゲームある?」
「特にないよ」
「じゃあこっちから提案していい?」
「うん」
「私あれやってみたい」
 彼女が指をさした方向にはあるゲームがあった。
「何これ、音ゲー?」
「そう」
「へー」
「徳山は音ゲーやったことある?」
「僕はないよ」
「私も」
「じゃあ初めて同士だね」
 徳山は笑った。
 早乙女も笑い返し、ゲームセンター用のコインを筐体に入れた。
 そして彼女は思い出したかのように言った。
「せっかくだから点数を競うっていうのはどう?」
「いいよ。受けてたとう」
「よし」
 早乙女はゲームを開始した。

 早乙女のターンが終了した。
 画面に彼女の得点が表示される。
「この点数って高いの?」
 徳山が疑問を口に出す。
「さぁ…」
 彼女は曖昧な返事をした。
「まあいいや。次は僕の番だね」
 そう言って今度は徳山が筐体の前に立った。

 そして徳山のターンも終了した。結果は早乙女の勝ちだった。
「やった、勝った!」
「あー、負けちゃったー」
 それぞれ結果に反応する二人。
 その時だった。
「あ! 冬美ちゃん! 徳山君!」
 いきなり二人は声をかけられた。中条である。偶然同じゲームセンターにいたのである。
 思わぬ人物の登場に焦りだす早乙女。
 あのことは言うなよ、中条!
 そう心の中で叫んだが思いは届かなかった。
 中条はあっけなく言ってしまったのである。
「冬美ちゃん、このゲームすごい練習してたもんね。勝ててよかったね!」
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