Sorry Baby

ぴあす

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2.つながり

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後半になるとハルキは相手にマークされてファールをもらってでも倒されることが増えた。

攻撃の起点のハルキがマークされてチームは思うように連携が取れないように見えた。
モニターに10分おきに更新されるボール支配率も後半のほうが低い。

2点リードしてるのにモニターにふと映った
ハルキの顔が焦っているように見えた。

後半25分、相手チームマドリードHが3人目の選手交代。
マドリードHのサポーターが一気に歓声をあげる。

「うわー、ここでフェルナンド?」

「マジ?今日勝てると思ってたのに!」

周りの反応からすると、どうやらフェルナンドは相手チームのエースみたい。
でもなんでもう終わりみたいな言い方するの? 
同じレベルが集まるリーグで戦ってるならたった一人でそんなに変わることがあるんだろうか?

「フェルナンド、セカンドチーム半年じゃん。
そろそろトップチーム戻ってくれないかな。」

「怪我のリハビリっていってセカンドチームに来たけど動き見た限りもう治りきってるのにね。」

フェルナンドにボールが渡ると巧みなフェイントで相手を交わしすぐにゴール前。
ゴールにフェルナンドが近づくにつれて、マドリードHのサポーターのボルテージもどんどん上がっていった。

「あー!!フリーにしたらだめだって!!」

「相変わらず速すぎ…。」

1点返される、そう思ったときに…。
ボールはピッチの外に出て笛が鳴らされた。

ピーッ!

「…ハルキ、いつの間に。」

前線にいたはずのハルキがいつの間にかゴール前に戻り、ボールを蹴り上げていた。

客席からは拍手と歓声が送られる。

「さすが南沢!」

「マジで危なかった!!!」

「よくやった!!」

でもまだ相手のフリーキック。
思わず手にグッと力が入る。

マドリードHの選手のフリーキックは綺麗な弧を描いてゴールに吸い込まれそうになったがGKのウーゴがなんとかキャッチ。

「よし!」

拍手と歓声。 
ドキドキ、ワクワクする。

ハルキにボールが渡ると相手を寄せ付けない速さのドリブルであっという間にゴール前。
でも一人だけ、ハルキを阻む選手がいた。

「フェルナンド…!」

「今日の試合はあの二人が群を抜いてるよな。」

モニターに映ったハルキの顔は険しく、でもその瞬間を楽しんでいるようにも見えた。

「ハルキ…?」

ハルキがにやっと笑ったように見えた瞬間にハルキの足元を見るとそこにボールはなかった。  

フェルナンドがはっとしたようにゴールに目を向けるとボールは他の選手に渡っていた。

「南沢、フェイントからのパスなんてあんまり使わなかったのに!」

「若さって本当に恐ろしいよな!」

SCバルセロナの11番の選手のシュートがゴール右隅に突き刺さった。

後半35分。
SCバルセロナの3点リードだ。

「オォー!さすがジャン!
あいつもやっぱり決めるときは決めてくれるよな!」

「ジャンと南沢は安定のホットラインだよ!」

11番の選手はジャンというみたい。 
ハルキとは高校からのチームメイトらしくて確かに言われてみれば…そんなような人がハルキの隣にいたかも。

「残り時間10分!」

「フェルナンド相当キレてると思うぞ。」

両手を組んでぐっと握った。
このまま何事もなく…勝てますように。

フェルナンドのマークは必ず2人。
ハルキにも2人。
フェルナンドとハルキはお互いのチームのエース、キーマン、フリーにしてはいけないというのをひしひしと感じた。

…この2人は言っちゃ悪いけど両チームの他の選手とはレベルが違う。

それから、何度もマドリードHからの攻撃からゴールを守り抜いて…。

ゲームセットの笛が鳴った。
3-0でSCバルセロナの快勝だ。

『本日のヒーローインタビュー!
SCバルセロナ期待のエース、背番号7の南沢遥輝選手です!
本日の感想をまずはお願いします!』

会場からは大きな拍手が巻き起こる。

『まずは応援、ありがとうございました。
チームで勝てたっていうのが一番でかいのと、自分たちで考えてゲームできたかなと思います。
んー、色々言っちゃうと長くなっちゃうんで…。』

最後にくしゃっとした笑顔を見せるとあたしの後ろにいた女の子たちがきゃーっと黄色い歓声を上げた。

…その笑顔本当にずるい。

『相手チームのフェルナンド選手にはどのような印象をお持ちですか?』

『はい…まさか今日戦えるとは思っていなかったので光栄というか恐れ多いというか。
レベルが段違いなので、もう着いていくのがやっとでした。』

フェルナンドがハルキとリポーターをめがけて歩いてくるのが見えた。
客席がざわつく。

「フェルナンド何する気だ!?」

「逃げて!!」

プレー中、気が荒いと思える態度や行動があったから、あたしも少し身構えた。

『あ、ちょっと!?フェルナンド選手!?』

『20歳のガキにまんまとコケにされたフェルナンドです。どうも。』

マイクを取り上げ自虐気味のフェルナンド。
意外とおちゃめな一面もあるんだと思わず笑ってしまった。

『本当に彼は素晴らしい。
セカンドチームにいるなんて勿体無いレベルの選手だよ。
来季はお互いにトップチームで戦いたいね。』

『…ぜひ!』

二人が固い握手を交わすと客席からは歓声と拍手が絶えなかった。
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