Sorry Baby

ぴあす

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3.注目

サッカー選手

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「おかえり。」

パパは何事もなかったかのようにあたしを迎えた。

「久しぶりに見る試合はどうだった?」

その一言に背筋が凍った。

「…なにが?」

「今日観に行ってたんだろ?
しかもVIP席で。
俺の知り合いがVIP席にいてお前を見かけたって連絡が来たよ。」

パパの知り合いがVIP席にいるなんてそこまでは想定していなかった。

「そうなんだ。楽しかったよ、久しぶりで。」

「あの日本人選手。」

…ハルキのことだ。
啖呵を切ったのはあたしだけど変な詮索されたくない。

「南沢遥輝のこと?」

「そんな名前だったかな。
あれは来季トップチームでプレー出来るくらいの実力だな。
映像見たけど一人だけ群を抜いてた。」

あたしサッカーのことは全然わからないけど…元プロサッカー選手に認められるハルキってやっぱりすごいんだ。

「…そう。」

「俺はまたチームのコーチと飯を食う約束をしているからそろそろ出るよ。
夜出かけるのはいいけど遅くなりすぎないように。」

「わかってる。」

パパはあたしの頭をそっと撫でてまた家を出て行った。

…そう言って出てったけどご飯を食べるにしては多すぎる荷物なんだよね。

ソファに座ってスマホを見るとハルキからお店へのマップが送られてきていた。

お店を見てみるとそこは繁華街にあるオシャレなバルだった。
シャワーを浴びるまではないけどこのままの服ではカジュアルすぎるかもと思って黒いレースのタイトスカートに手を伸ばしたそのときに着信が入った。

「…もしもし?」

「あぁ、ハルキどうしたの?」

受話器の向こう側から車の滑走音が聞こえた。

「家まで迎えに行こうと思ったけど住所知らないなと思って。
とりあえずあの公園まで歩いて来たんだけど…。」

「え?迎えに来てくれるの?
そこからは歩いて10分とかなんだけど…。」

わざわざ迎えに来てくれるなんて思わなかったから焦る…。
早く準備しなきゃ。

「あーそうなんだ。
走ったら5分で着くかな?」

「そんなに急がなくても…。
住所送るね。」

電話を切ってハルキに住所を送った。
急いで着替えてメイクを直す。

家のチャイムがなって玄関のドアを開けるとグレーのセットアップをカッチリと着こなしたハルキが立っていた。

「本当に5分くらい…ハルキ走ったの?」

息が全然上がってないし、表情も超余裕…。
てかちょっといつもと雰囲気違ってなんか緊張する。

「走ったけど…そんなことはどうでもいいくらいに家でかすぎない?」

「一括年俸御殿ってパパが言ってた。
本当かどうかはわかんないけど。」

「へぇ…やっぱすげーな元日本代表。」

なんだかハルキとさっきから目が合わせられない。
てか、ハルキもなんかこっちをちゃんと見てくれないんだけど…。

「あー、あのさ。」

「へっ?」

ちょっとした沈黙のあとハルキが話を切り出すので変な声が出てしまった。

「なんか昼間と雰囲気違うね。
大人っぽいっていうかなんていうか…。」

「そ、そうかな…。
ハルキもいつもと雰囲気違うからなんかあたし緊張しちゃって…ごめん。」

顔、熱い…。
ちょっとの沈黙が辛い。

「そう?
…あぁ、迎え来たわ。」

うつむき気味のあたしの顔に車のライトらしき光が差して思わず目を細める。

「タクシー呼んでくれたの?」

「…あんまりガラじゃないし、こういうこと馴れてねーし。やったことないんだけど。」

ハルキが玄関の扉を開けてあたしに手を差し伸べた。

「今日はエスコートさせてよ。」

玄関の前には黒いリムジン。 
運転手さんが後部座席のドアを開けて待ってくれていた。

「ねぇ、ハルキ。
今日大サービスすぎない?
VIP席にリムジンまで…。 
本当にいいの!?」

初めてのリムジンはさすがにテンションが上がるし自分のために特別なことをしてくれることが何よりも嬉しかった。

「俺がしたくてやったことだから。
どう?喜んでもらえた?」

「すごい嬉しい…です。」

ハルキが手を膝について大きく溜息を吐いた。

「うわー、よかった。
もし引かれたり嫌がられたりしたらどうしようかと思った…。」

「嫌がるわけないじゃん。
最高だよ…。」

あたしがハルキの顔を覗き込むとハルキはいつもの笑顔になってあたしをリムジンまでエスコートしてくれた。

…今日はもっといい日になりそう。

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