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94話目
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「へーい!やってるぅ?」
私は勢いよく扉を開け、メアリー武具店へと侵入していった。
入るとそこには、カウンターにムーちゃんが立っているだけで、メアリーの姿はなかった。
「こんにちは、ムーちゃん。メアリーはいる?」
「店長なら、オくの作業スペースにイますヨ。」
私が質問をすると、相変わらずの片言の日本語で対応してくれる。
メアリー武具店は、表側が販売エリアで、裏側が作業スペース、2階が住居エリアになっている。
住居エリアは、物置と化しているらしいのだが、まあ物置として使えるのでいいだろう。
私はムーちゃんの横を通り、のれんを上げて作業スペースへと入っていった。
「やあメアリー、来たよ!」
入ると、そこには金槌を持ち、金床とにらめっこしているメアリーの姿があった。
どうやら私の存在に気が付いていない様子だ。
(これは相当集中しているんだろうな。少し黙っておこう。)
私の存在に気が付くことなく、ひたすらに金属を叩くメアリーの姿。
私はメアリーの仕事姿を見たことがなかったので、少し感動していた。
あの小さなアバターで大きな金槌を握り、額に汗を浮かべながら金属を叩いているメアリーの姿。
かっこいいと思う。
「ふぅ……。」
10分ほど経過し、メアリーは腕で額の汗を拭きとった。
どうやら終わったようだ。
「お疲れ。これ、使って。」
私は後ろからそっと近づき、メアリーにフェイスタオルを渡した。
「ありがと、って!いたの!?いたなら声かけてよ!」
ためらうこともなくタオルを受け取ったメアリーであったが、どうやら気が付いたようだ。
「いや、初め声かけたんだけど、集中していたから、悪いかなって。」
「そう。で、2人はどうしたの?」
「2人は今クエストを探しているんだよ。」
私がそういうと、メアリーは遠い目をしながら、「あぁ……。」と呟いた。
私がどうしたのかと問うと、以前あった事件を話してくれた。
「あれはつい1週間前のことだった――――――」
メアリーの口から語られたのは、1人の少女が背負えるほどの、軽く、浅い話であった。
簡単に言うと、メアリーは音符猫とアルミと一緒にクエストを受けに来たらしい。
いや、私も混ぜろよ!と思ったのだが、口には出さないで置いた。
メアリーはクエストなんか適当なものやっておけばいい派の私と同じ派閥の人間だったのだが、2人はそうではなかった。
彼女たちは男衆の中を突き進み、大きな看板に大量に張り出されたクエスト用紙を貪るかのように漁りだした。
その時間は、1時間半にも及んだという。
その結果、彼女の口から放たれた言葉は!
「あんまいいクエストはなかった。今日受けるのやめよう――――――」
「いや!待たされた私の気持ちにもなれッ!!」
「あはは、それは災難だったね……。」
メアリーが珍しく、熱く!熱くその話を語っていたことから見るに、相当な苦痛を強いられていたのだろう。
たしかに、無の時間というのは何より怖いことだからな。
私は今までの人生でそれをいやというほど知っている。
「まあ、ということで、あの2人にクエストを探すのを任せるのはやめた方がいいわ。で、あなたは今何をしているんだっけ?」
「……2人に、クエスト探しを任せています……。」
「終わったわね。」
その話を聞いてなお、私は大丈夫ではないかという気持ちが正直あった。
人間、都合の悪いことがあると、『大したことではない』と落ち着こうとすることがあるらしい。
私とメアリーは雑談をしながら連絡を待っていたのだが、彼女たちから連絡が来たのは、それからおよそ1時間経った頃のことであった。
『ごめん、いいクエストなかったから今日はやめよう。』
私は勢いよく扉を開け、メアリー武具店へと侵入していった。
入るとそこには、カウンターにムーちゃんが立っているだけで、メアリーの姿はなかった。
「こんにちは、ムーちゃん。メアリーはいる?」
「店長なら、オくの作業スペースにイますヨ。」
私が質問をすると、相変わらずの片言の日本語で対応してくれる。
メアリー武具店は、表側が販売エリアで、裏側が作業スペース、2階が住居エリアになっている。
住居エリアは、物置と化しているらしいのだが、まあ物置として使えるのでいいだろう。
私はムーちゃんの横を通り、のれんを上げて作業スペースへと入っていった。
「やあメアリー、来たよ!」
入ると、そこには金槌を持ち、金床とにらめっこしているメアリーの姿があった。
どうやら私の存在に気が付いていない様子だ。
(これは相当集中しているんだろうな。少し黙っておこう。)
私の存在に気が付くことなく、ひたすらに金属を叩くメアリーの姿。
私はメアリーの仕事姿を見たことがなかったので、少し感動していた。
あの小さなアバターで大きな金槌を握り、額に汗を浮かべながら金属を叩いているメアリーの姿。
かっこいいと思う。
「ふぅ……。」
10分ほど経過し、メアリーは腕で額の汗を拭きとった。
どうやら終わったようだ。
「お疲れ。これ、使って。」
私は後ろからそっと近づき、メアリーにフェイスタオルを渡した。
「ありがと、って!いたの!?いたなら声かけてよ!」
ためらうこともなくタオルを受け取ったメアリーであったが、どうやら気が付いたようだ。
「いや、初め声かけたんだけど、集中していたから、悪いかなって。」
「そう。で、2人はどうしたの?」
「2人は今クエストを探しているんだよ。」
私がそういうと、メアリーは遠い目をしながら、「あぁ……。」と呟いた。
私がどうしたのかと問うと、以前あった事件を話してくれた。
「あれはつい1週間前のことだった――――――」
メアリーの口から語られたのは、1人の少女が背負えるほどの、軽く、浅い話であった。
簡単に言うと、メアリーは音符猫とアルミと一緒にクエストを受けに来たらしい。
いや、私も混ぜろよ!と思ったのだが、口には出さないで置いた。
メアリーはクエストなんか適当なものやっておけばいい派の私と同じ派閥の人間だったのだが、2人はそうではなかった。
彼女たちは男衆の中を突き進み、大きな看板に大量に張り出されたクエスト用紙を貪るかのように漁りだした。
その時間は、1時間半にも及んだという。
その結果、彼女の口から放たれた言葉は!
「あんまいいクエストはなかった。今日受けるのやめよう――――――」
「いや!待たされた私の気持ちにもなれッ!!」
「あはは、それは災難だったね……。」
メアリーが珍しく、熱く!熱くその話を語っていたことから見るに、相当な苦痛を強いられていたのだろう。
たしかに、無の時間というのは何より怖いことだからな。
私は今までの人生でそれをいやというほど知っている。
「まあ、ということで、あの2人にクエストを探すのを任せるのはやめた方がいいわ。で、あなたは今何をしているんだっけ?」
「……2人に、クエスト探しを任せています……。」
「終わったわね。」
その話を聞いてなお、私は大丈夫ではないかという気持ちが正直あった。
人間、都合の悪いことがあると、『大したことではない』と落ち着こうとすることがあるらしい。
私とメアリーは雑談をしながら連絡を待っていたのだが、彼女たちから連絡が来たのは、それからおよそ1時間経った頃のことであった。
『ごめん、いいクエストなかったから今日はやめよう。』
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