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空は晴れましたが
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テーマ:雨、恋
どうしたものか。空は大きな雫を一粒一粒、落としている。雲は絵の具ですべての色を混ぜ合わせた時の色みたいにどこまでも濁っている。いや少し白身もある。なんとも、中途半端な空だ。まるで今の僕じゃないか。
憧れの先輩が僕に「待っていて。」とつぶやいてからもう早三十分。先輩はこんな空みたく、濁ってなんかいない。透き通るような青と、光り輝く太陽が織りなす、空。それがあの人だ。
今日こそは告白すると心に決めたはずなのに、せっかくの雨なのに、傘を忘れてしまった。だからこの空は泣いているんだ。天気予報では今日は晴れだと言っていた。しかし、クラスメイトの男子は「今日は大雨だ。晴れは明日だな」と言っていた。結果、大粒の雫がぽつりぽつりと濁り雲からあふれ出す。僕が覚えていた天気予報は明日のだった。
雨の中、好きな人と自分の傘で相合傘をするのをずっと憧れていたのに。先輩は僕と帰ってくれるって言ってたのに。先輩に悪いことをしたな。
雨はまだ降り注ぐ。それどころか、前よりも激しく降り始めた。風も吹き荒れ、大きな雫は次々に僕の足元でたたきつけられる。その勢いはとどまることはなくさらに激しさを増していく。
なんだか胸騒ぎがする。
先輩は一向に来る気配がないけど、なにをしているんだろうか。見に行ってみるか。
確か、先輩の教室はここの角を曲がった先だったな。そして教室のドアが見えた頃、
「ごめんなさい…。気持ちは嬉しいけど」
「どうして?」
「だって」
男女2人が放課後の教室で話をしてる。
なんとも気まずいときに来てしまったのだろう。
「私には好きな人がいるの」
好きな人がいる?
外の雫たちはさらに強く地面に叩きつけられる。
「その好きな人は君を幸せにできるのかい?」
「幸せにならなくても、想ってるだけで十分よ」
「おかしいよそんなの」
男は少しずつ震えだした。
「だから、ごめんなさい。その告白は受け止められないわ」
男は机を勢いよく叩く。机はバンッ!と大きな音を立て静寂を作る。
「それじゃあ」
先輩は自分のカバンを肩にかけ、教室を出ようと男の前を通った。
雨は一向に止む気配がなく、ずっと雨音を激しく響かせている。
「待ってよ」
男は彼女の腕を引き、彼女を机に押し倒した。
彼女の体は机に強く叩きつけられた。
腕を片手で抑えられ、拘束されてしまう。
男は自分のズボンのベルトを外した。
雷鳴は吹き荒れる雨とともに鳴らされる。
彼女は泣いていた。
「やめて!」
僕は思わずそう言っていた。
ずっと隠れていたはずなのに。臆病者なのに。
僕は男を彼女から引き離す。
「彼女は僕の…」
雷鳴は残酷にも僕の言葉を貫いて隠す。
男は悔しそうに教室を走り去る。
先ほどまで荒れ狂っていた中途半端な空は薄い赤を広げ、暁の空は優しく教室を包む。
「先輩、大丈夫ですか?」
そう聞くと、彼女は僕の顔を覗き込んだ。
「大丈夫よ」
そういうと彼女は僕の制服の裾を掴んで
「…ありがとね」
と言った。
校舎の外に出て、空を見上げる。先ほどとは打って変わって美しい夕焼けが僕らを迎える。
「綺麗ですね」
僕はそう言った。
「だね。さっきの格好良かったよ」
空はさらに赤みが増したように見える。
「あのさ、……っき」
風が吹き荒れた。
「え?なんて?」
「なんでもないわ。さあ、帰りましょ」
なんて言ったんだろう?なんだか凄く嬉しい言葉だった気がするんだけど。
「ま、待ってください!」
僕は前を行く先輩の後を慌てて追いかける。
空は晴れたけど僕の心は曇ったままだ。
どうしたものか。空は大きな雫を一粒一粒、落としている。雲は絵の具ですべての色を混ぜ合わせた時の色みたいにどこまでも濁っている。いや少し白身もある。なんとも、中途半端な空だ。まるで今の僕じゃないか。
憧れの先輩が僕に「待っていて。」とつぶやいてからもう早三十分。先輩はこんな空みたく、濁ってなんかいない。透き通るような青と、光り輝く太陽が織りなす、空。それがあの人だ。
今日こそは告白すると心に決めたはずなのに、せっかくの雨なのに、傘を忘れてしまった。だからこの空は泣いているんだ。天気予報では今日は晴れだと言っていた。しかし、クラスメイトの男子は「今日は大雨だ。晴れは明日だな」と言っていた。結果、大粒の雫がぽつりぽつりと濁り雲からあふれ出す。僕が覚えていた天気予報は明日のだった。
雨の中、好きな人と自分の傘で相合傘をするのをずっと憧れていたのに。先輩は僕と帰ってくれるって言ってたのに。先輩に悪いことをしたな。
雨はまだ降り注ぐ。それどころか、前よりも激しく降り始めた。風も吹き荒れ、大きな雫は次々に僕の足元でたたきつけられる。その勢いはとどまることはなくさらに激しさを増していく。
なんだか胸騒ぎがする。
先輩は一向に来る気配がないけど、なにをしているんだろうか。見に行ってみるか。
確か、先輩の教室はここの角を曲がった先だったな。そして教室のドアが見えた頃、
「ごめんなさい…。気持ちは嬉しいけど」
「どうして?」
「だって」
男女2人が放課後の教室で話をしてる。
なんとも気まずいときに来てしまったのだろう。
「私には好きな人がいるの」
好きな人がいる?
外の雫たちはさらに強く地面に叩きつけられる。
「その好きな人は君を幸せにできるのかい?」
「幸せにならなくても、想ってるだけで十分よ」
「おかしいよそんなの」
男は少しずつ震えだした。
「だから、ごめんなさい。その告白は受け止められないわ」
男は机を勢いよく叩く。机はバンッ!と大きな音を立て静寂を作る。
「それじゃあ」
先輩は自分のカバンを肩にかけ、教室を出ようと男の前を通った。
雨は一向に止む気配がなく、ずっと雨音を激しく響かせている。
「待ってよ」
男は彼女の腕を引き、彼女を机に押し倒した。
彼女の体は机に強く叩きつけられた。
腕を片手で抑えられ、拘束されてしまう。
男は自分のズボンのベルトを外した。
雷鳴は吹き荒れる雨とともに鳴らされる。
彼女は泣いていた。
「やめて!」
僕は思わずそう言っていた。
ずっと隠れていたはずなのに。臆病者なのに。
僕は男を彼女から引き離す。
「彼女は僕の…」
雷鳴は残酷にも僕の言葉を貫いて隠す。
男は悔しそうに教室を走り去る。
先ほどまで荒れ狂っていた中途半端な空は薄い赤を広げ、暁の空は優しく教室を包む。
「先輩、大丈夫ですか?」
そう聞くと、彼女は僕の顔を覗き込んだ。
「大丈夫よ」
そういうと彼女は僕の制服の裾を掴んで
「…ありがとね」
と言った。
校舎の外に出て、空を見上げる。先ほどとは打って変わって美しい夕焼けが僕らを迎える。
「綺麗ですね」
僕はそう言った。
「だね。さっきの格好良かったよ」
空はさらに赤みが増したように見える。
「あのさ、……っき」
風が吹き荒れた。
「え?なんて?」
「なんでもないわ。さあ、帰りましょ」
なんて言ったんだろう?なんだか凄く嬉しい言葉だった気がするんだけど。
「ま、待ってください!」
僕は前を行く先輩の後を慌てて追いかける。
空は晴れたけど僕の心は曇ったままだ。
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