勇者パーティーを追放された魔法戦士の真の適性は回復術師でした

こなきな粉

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途方に暮れて

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 ハイアーントの町で一人になったミナトは、一泊宿をとり冒険者ギルドへと行くことにした。
 パーティー脱退の手続きが終わっていれば、すぐにでもメンバーを募集できる。
 あくまでSSランクのパーティーを追放されただけであり、他から見れば十分垂涎といえる落とし物。

 ちょうど雑貨市でにぎわっていた市場通りを抜けると、冒険者ギルドが目に入る。
 木製のドアを押し開けて中へと入った。
 聞くとなぜか安心できる冒険者たちの声。
 その中に聞きたくない言葉が混ざりこんでいた。

「私、勇者パーティー青龍に誘われてるんですよぉ。っていうより、入ることが決まってるんですねえ」

「へえ、そいつは凄いな。ミルフィーユ、大出世じゃないか」

 青龍はミナトが先ほど追放されたパーティーであり、言葉からするに彼女が新しいメンバーの回復術師なのだろう。
 二十五歳のミナトからすれば大分年下に見える女性。
 青い髪、青い瞳、青い服に腰に携えた青いダガー。
 回復術師としても青龍としてもぴったりだな、とミナトには思えてならない。

 パーティーメンバーを探すことも忘れ、反射的にギルドから外へと飛び出していた。
 剣術も体術も得意そうには見えない。
 レベルも自分より明らかに下だ。
 なのに追放されたのは自分で、選ばれたのは彼女。

 理解できなかった。

 なぜ自分ではだめで、彼女ならいいのか分からなかった。
 何か一つを極めることがそんなに大切なのか、と疑問を感じずにはいられなかった。
 追放されてみじめな自分の姿を見られるのがどうしても嫌でたまらなかった。

 滲む視界を走っていると、一際大きな敷地にそびえ立つ建物が目に留まった。
 足を止めて顔をかたむけると、大きな銅プレートにハイアーント剣術学校と書いてある。
 剣術のすべてを独学で修練してきたミナトには、産まれてこのかた縁がない場所。

 ここに入るのは剣士や騎士、他にゴンザレスのような重戦士、斧使いなど武器を使用する前衛がここに入る。

 勇者の名はない。

 アレックスのような“勇者”という人間は基本的には他には存在しない。
 勇者というのは特別で、天に選ばれし者のみがその名を口にすることができるからだ。

 建物を見上げながらミナトは思案する。
 ここに入れば最初からやり直すことができるのだろうか、と。
 指導者さえいれば自分はもっと高みへ行けるんじゃないか、と。

 たっぷり五分ほども考えた。
 だが入学する方法が分からなかったようで、鋭角に削りだされた門の横に立っている男にたずねかける。
 門番、などではなく服装から察するに、見回りしている剣術学校の指導教官であろう。

「すみません。剣術学校へはどうやったら入学できますか?」

「ん、あんた、青龍のミナトじゃないか? なぜ今さら入学……教師として入りたいってことなのか?」

 ハイアーントは長らく活動拠点としていた町。
 青龍の名前が耳に届くと、拍動が強まるのを確かに聞いた
 彼の顔に侮蔑はない。突然のSSランクの出現に心底驚いているだけのよう。

「いえ、違います。生徒として入れてほしいんです」

「何を馬鹿な……。SSランクの人間を生徒として受け入れる用意なんて、あるわけがないだろう!」

 SSランクとなれば教師側ですら一人もいないのだ。
 自分の剣の技量はもしかすれば、この学校の誰よりも高いかもしれない。
 その可能性は考慮している。
 だが、そんなことは一切関係なかった。
 自分が高みにいけるヒントを得ることが最大の目的だったからだ。

「そこをなんとかなりませんか。お願いします」

「無理だ! 冷やかしはやめてくれっ!」

 駄目だった。
 さらに食い下がってみるものの、男は頑なに首を縦に振ろうとはしなかった。 
 無駄にとどろいている名が自分の邪魔をするだなんて考えてもみなかった。

 独学で剣を勉強しなおすのは無理がある。
 プライドを打ち砕かれた今、冒険者を辞めてしまおうかとも考えた。
 だが他にどうやって生きていけばいいのか、彼には分からなかった。

 途方に暮れる。

 故郷の事が頭に浮かんでくる。
 幼馴染の事が頭に浮かんでくる。
 ユリのように大きな笑顔が頭に浮かんでくる。

 少し疲れてしまった。
 
 ミナトは一度故郷に戻ることを決めた。
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