2 / 5
途方に暮れて
しおりを挟む
ハイアーントの町で一人になったミナトは、一泊宿をとり冒険者ギルドへと行くことにした。
パーティー脱退の手続きが終わっていれば、すぐにでもメンバーを募集できる。
あくまでSSランクのパーティーを追放されただけであり、他から見れば十分垂涎といえる落とし物。
ちょうど雑貨市でにぎわっていた市場通りを抜けると、冒険者ギルドが目に入る。
木製のドアを押し開けて中へと入った。
聞くとなぜか安心できる冒険者たちの声。
その中に聞きたくない言葉が混ざりこんでいた。
「私、勇者パーティー青龍に誘われてるんですよぉ。っていうより、入ることが決まってるんですねえ」
「へえ、そいつは凄いな。ミルフィーユ、大出世じゃないか」
青龍はミナトが先ほど追放されたパーティーであり、言葉からするに彼女が新しいメンバーの回復術師なのだろう。
二十五歳のミナトからすれば大分年下に見える女性。
青い髪、青い瞳、青い服に腰に携えた青いダガー。
回復術師としても青龍としてもぴったりだな、とミナトには思えてならない。
パーティーメンバーを探すことも忘れ、反射的にギルドから外へと飛び出していた。
剣術も体術も得意そうには見えない。
レベルも自分より明らかに下だ。
なのに追放されたのは自分で、選ばれたのは彼女。
理解できなかった。
なぜ自分ではだめで、彼女ならいいのか分からなかった。
何か一つを極めることがそんなに大切なのか、と疑問を感じずにはいられなかった。
追放されてみじめな自分の姿を見られるのがどうしても嫌でたまらなかった。
滲む視界を走っていると、一際大きな敷地にそびえ立つ建物が目に留まった。
足を止めて顔をかたむけると、大きな銅プレートにハイアーント剣術学校と書いてある。
剣術のすべてを独学で修練してきたミナトには、産まれてこのかた縁がない場所。
ここに入るのは剣士や騎士、他にゴンザレスのような重戦士、斧使いなど武器を使用する前衛がここに入る。
勇者の名はない。
アレックスのような“勇者”という人間は基本的には他には存在しない。
勇者というのは特別で、天に選ばれし者のみがその名を口にすることができるからだ。
建物を見上げながらミナトは思案する。
ここに入れば最初からやり直すことができるのだろうか、と。
指導者さえいれば自分はもっと高みへ行けるんじゃないか、と。
たっぷり五分ほども考えた。
だが入学する方法が分からなかったようで、鋭角に削りだされた門の横に立っている男にたずねかける。
門番、などではなく服装から察するに、見回りしている剣術学校の指導教官であろう。
「すみません。剣術学校へはどうやったら入学できますか?」
「ん、あんた、青龍のミナトじゃないか? なぜ今さら入学……教師として入りたいってことなのか?」
ハイアーントは長らく活動拠点としていた町。
青龍の名前が耳に届くと、拍動が強まるのを確かに聞いた
彼の顔に侮蔑はない。突然のSSランクの出現に心底驚いているだけのよう。
「いえ、違います。生徒として入れてほしいんです」
「何を馬鹿な……。SSランクの人間を生徒として受け入れる用意なんて、あるわけがないだろう!」
SSランクとなれば教師側ですら一人もいないのだ。
自分の剣の技量はもしかすれば、この学校の誰よりも高いかもしれない。
その可能性は考慮している。
だが、そんなことは一切関係なかった。
自分が高みにいけるヒントを得ることが最大の目的だったからだ。
「そこをなんとかなりませんか。お願いします」
「無理だ! 冷やかしはやめてくれっ!」
駄目だった。
さらに食い下がってみるものの、男は頑なに首を縦に振ろうとはしなかった。
無駄にとどろいている名が自分の邪魔をするだなんて考えてもみなかった。
独学で剣を勉強しなおすのは無理がある。
プライドを打ち砕かれた今、冒険者を辞めてしまおうかとも考えた。
だが他にどうやって生きていけばいいのか、彼には分からなかった。
途方に暮れる。
故郷の事が頭に浮かんでくる。
幼馴染の事が頭に浮かんでくる。
ユリのように大きな笑顔が頭に浮かんでくる。
少し疲れてしまった。
ミナトは一度故郷に戻ることを決めた。
パーティー脱退の手続きが終わっていれば、すぐにでもメンバーを募集できる。
あくまでSSランクのパーティーを追放されただけであり、他から見れば十分垂涎といえる落とし物。
ちょうど雑貨市でにぎわっていた市場通りを抜けると、冒険者ギルドが目に入る。
木製のドアを押し開けて中へと入った。
聞くとなぜか安心できる冒険者たちの声。
その中に聞きたくない言葉が混ざりこんでいた。
「私、勇者パーティー青龍に誘われてるんですよぉ。っていうより、入ることが決まってるんですねえ」
「へえ、そいつは凄いな。ミルフィーユ、大出世じゃないか」
青龍はミナトが先ほど追放されたパーティーであり、言葉からするに彼女が新しいメンバーの回復術師なのだろう。
二十五歳のミナトからすれば大分年下に見える女性。
青い髪、青い瞳、青い服に腰に携えた青いダガー。
回復術師としても青龍としてもぴったりだな、とミナトには思えてならない。
パーティーメンバーを探すことも忘れ、反射的にギルドから外へと飛び出していた。
剣術も体術も得意そうには見えない。
レベルも自分より明らかに下だ。
なのに追放されたのは自分で、選ばれたのは彼女。
理解できなかった。
なぜ自分ではだめで、彼女ならいいのか分からなかった。
何か一つを極めることがそんなに大切なのか、と疑問を感じずにはいられなかった。
追放されてみじめな自分の姿を見られるのがどうしても嫌でたまらなかった。
滲む視界を走っていると、一際大きな敷地にそびえ立つ建物が目に留まった。
足を止めて顔をかたむけると、大きな銅プレートにハイアーント剣術学校と書いてある。
剣術のすべてを独学で修練してきたミナトには、産まれてこのかた縁がない場所。
ここに入るのは剣士や騎士、他にゴンザレスのような重戦士、斧使いなど武器を使用する前衛がここに入る。
勇者の名はない。
アレックスのような“勇者”という人間は基本的には他には存在しない。
勇者というのは特別で、天に選ばれし者のみがその名を口にすることができるからだ。
建物を見上げながらミナトは思案する。
ここに入れば最初からやり直すことができるのだろうか、と。
指導者さえいれば自分はもっと高みへ行けるんじゃないか、と。
たっぷり五分ほども考えた。
だが入学する方法が分からなかったようで、鋭角に削りだされた門の横に立っている男にたずねかける。
門番、などではなく服装から察するに、見回りしている剣術学校の指導教官であろう。
「すみません。剣術学校へはどうやったら入学できますか?」
「ん、あんた、青龍のミナトじゃないか? なぜ今さら入学……教師として入りたいってことなのか?」
ハイアーントは長らく活動拠点としていた町。
青龍の名前が耳に届くと、拍動が強まるのを確かに聞いた
彼の顔に侮蔑はない。突然のSSランクの出現に心底驚いているだけのよう。
「いえ、違います。生徒として入れてほしいんです」
「何を馬鹿な……。SSランクの人間を生徒として受け入れる用意なんて、あるわけがないだろう!」
SSランクとなれば教師側ですら一人もいないのだ。
自分の剣の技量はもしかすれば、この学校の誰よりも高いかもしれない。
その可能性は考慮している。
だが、そんなことは一切関係なかった。
自分が高みにいけるヒントを得ることが最大の目的だったからだ。
「そこをなんとかなりませんか。お願いします」
「無理だ! 冷やかしはやめてくれっ!」
駄目だった。
さらに食い下がってみるものの、男は頑なに首を縦に振ろうとはしなかった。
無駄にとどろいている名が自分の邪魔をするだなんて考えてもみなかった。
独学で剣を勉強しなおすのは無理がある。
プライドを打ち砕かれた今、冒険者を辞めてしまおうかとも考えた。
だが他にどうやって生きていけばいいのか、彼には分からなかった。
途方に暮れる。
故郷の事が頭に浮かんでくる。
幼馴染の事が頭に浮かんでくる。
ユリのように大きな笑顔が頭に浮かんでくる。
少し疲れてしまった。
ミナトは一度故郷に戻ることを決めた。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる