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筆記試験
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魔法学園は驚くほど広大な敷地に、白を基調とした建物がいくつも立ち並ぶ巨大施設だった。
園内は丁寧に植え込みが並べられていて、白と黄色の花をつける。
ミナト自身王都には何度も来たことあったが、こんな施設があるなんて初めて知った。
「こちらが受験票になります」
リザリーの案内の元大きな建物に入ったミナトは、事務所のような場所で一枚の紙切れを受け取った。
縦横に線が引かれ、中に筆記、実技やらと書かれている。
それを興味深く眺めているミナトに、リザリーが呆れたと言わんばかりの口調をむけた。
「しかし、あなた本当に何も知らないのねえ。一体どんな人生を送ってきたんだか」
ミナトはこの学園の名前も概要も目的も何も知らなかった。
道中リザリーに色々尋ねていたから呆れられてしまったのだろう。
この学園の名前はロクサーヌ王立第一魔法学園という。
他にも三つほど王都には魔法学園があるらしいが、ミナトはどれも見たことがなかった。
生徒数は千二百人ほどいて、六学年の四クラス制で分けられている。
そのクラスは入学試験の結果如何によって区別される。
剣術学校と違って門前払いをくらわなかった理由をミナトはすぐに推察した。
歩いていると明らかに教員ではなく、生徒としての老人の姿を何人も見かけたからだ。
魔法は単純に戦闘で役に立つだけではない。
生活面でも使える重要な技能であり、老後になって暇している年寄りが魔法学園に習いに来るのはよくあること。
もちろん基本的には若者の学園であり、その数は少ない。
二十五歳のミナトは平均年齢をわずかに上げるが、あまり気にはされないようだ。
その証拠に今も横を通っていった名も知らぬ少女は、外部から来た人間、を物珍しく見る程度の視線しか向けてこなかった。
「田舎で引き籠って暮らしてたからかな?」
「へえ。そんなタコだらけの手でねぇ」
「じ、実家がきこりなんだ。だからタコができるのも仕方がないんだよ」
「きこりをやってて魔法学園に入学ね。その歳で」
リザリーはこういったが年齢はミナトと一つしか変わらなかった。
つまり彼女も平均年齢をあげる側というわけだ。
もちろんミナトは女性の年齢について深く追及したりはしない。
「ま。いいわ。言いたくない過去もあるでしょう。私も同じだしね」
ミナトは剣術学園のことを考え、青龍にいたことや、SSランクであることなどは秘密にしようと考えている。
どんな情報が、どんな悪影響を及ぼすかだなんて分かるはずがない。
彼のその判断は、世界の常識からすれば正常なものだったと言える。
しばらくの時間を待った後、学園の入学試験が始まる。
小さな部屋に並ぶ机に数人の男女が腰かける。
当然、ミナトもリザリーもその中にいた。
ロクサーヌ王立第一魔法学園は、王都でもっとも巨大で高名な魔法学園。
そのため入学希望者は後を絶たない。
年ごとの総入れ替えは当然あるのだが、編入者を受け入れるためにほぼ毎日入学試験が行われている。
ただその合格率は決して高くはない。
魔法には才能が必要であり、選ばれたものしか入学を許されない。
頭脳を使用した筆記試験はもちろんのこと、実際に魔法を使用する実技試験。
つまり、既にある程度の魔法技能を持った人間しか、ロクサーヌ王立第一魔法学園には入学することができない。
ミナトはその点は問題ない。
追放されてもSSランクの魔法戦士だったのだ。
魔法が使えず魔法戦士を名乗れるはずがない。
はずだったのだが。
筆記試験にめちゃくちゃ苦戦しているようである。
感覚と独学で魔法を学んだミナトにとって、魔法学はちんぷんかんぷんだった。
MP100を使用してウォーターボールを発動させた時、魔力の還元効率はいくつか?
なんてわかるはずもなく、
ウォーターボールなんて、ぶおーんって手に力を込めて、ばしゃーって飛ばすんだよ!
と、内心独りごちる。
幸い冒険者の常識問題のようなものがあり、そちらで点を稼ぐことができた。
それがなければ容易く筆記で落とされていた事だろう。
ミストリーフ草をメインに使用する薬の名前は?
という問題に、しびれ治療薬と書き込んでチラと目線をあげた。
リザリーも自分と同じような実戦タイプ。だから苦戦しているはずだ。
そう思っていたが、すらすらすらっと書き終え、彼女は既に鼻の頭にペンを乗せ口笛を吹いていた。
その光景に愕然とするものがあった。
これが才能というものなんだろうか、と。
だがすぐに頭を振った。
これは単なる自分の不勉強でしかない、と思いなおしたのだ。
ミナトは残りの時間を脳みそフル回転でペンを動かした。
筆記試験は終わり結果が出る。
合格者は四名、その中に自分の名前も入っていたことに心の底から安堵した。
教官が結果を見ながら言う。
「リザリーは満点か、凄いなやるじゃないか。ミナトは魔法学が壊滅的、ぎりぎりだな。
それでも合格は合格だ。実技試験の結果次第であるから頑張れよ!」
あっはっは、と笑いながらの言葉に複雑な表情を浮かべた。
魔法学園に入ろうとしているのに、魔法学が壊滅的と暴露してくれるなんて。
チラとみると他に合格した二人が笑っていた。
リザリーがすました顔で、ぼそっと話しかけてくる。
「教官も言ってたじゃないの。合格は合格。というより、筆記試験なんてついでにすぎないわよ」
言葉はぶっきらぼうだが慰めてくれてるのが分かってうれしかった。
例え自分のほうが歳が上であろうとも、才能ある彼女の気持ちが伝わってきてうれしかったのだ。
園内は丁寧に植え込みが並べられていて、白と黄色の花をつける。
ミナト自身王都には何度も来たことあったが、こんな施設があるなんて初めて知った。
「こちらが受験票になります」
リザリーの案内の元大きな建物に入ったミナトは、事務所のような場所で一枚の紙切れを受け取った。
縦横に線が引かれ、中に筆記、実技やらと書かれている。
それを興味深く眺めているミナトに、リザリーが呆れたと言わんばかりの口調をむけた。
「しかし、あなた本当に何も知らないのねえ。一体どんな人生を送ってきたんだか」
ミナトはこの学園の名前も概要も目的も何も知らなかった。
道中リザリーに色々尋ねていたから呆れられてしまったのだろう。
この学園の名前はロクサーヌ王立第一魔法学園という。
他にも三つほど王都には魔法学園があるらしいが、ミナトはどれも見たことがなかった。
生徒数は千二百人ほどいて、六学年の四クラス制で分けられている。
そのクラスは入学試験の結果如何によって区別される。
剣術学校と違って門前払いをくらわなかった理由をミナトはすぐに推察した。
歩いていると明らかに教員ではなく、生徒としての老人の姿を何人も見かけたからだ。
魔法は単純に戦闘で役に立つだけではない。
生活面でも使える重要な技能であり、老後になって暇している年寄りが魔法学園に習いに来るのはよくあること。
もちろん基本的には若者の学園であり、その数は少ない。
二十五歳のミナトは平均年齢をわずかに上げるが、あまり気にはされないようだ。
その証拠に今も横を通っていった名も知らぬ少女は、外部から来た人間、を物珍しく見る程度の視線しか向けてこなかった。
「田舎で引き籠って暮らしてたからかな?」
「へえ。そんなタコだらけの手でねぇ」
「じ、実家がきこりなんだ。だからタコができるのも仕方がないんだよ」
「きこりをやってて魔法学園に入学ね。その歳で」
リザリーはこういったが年齢はミナトと一つしか変わらなかった。
つまり彼女も平均年齢をあげる側というわけだ。
もちろんミナトは女性の年齢について深く追及したりはしない。
「ま。いいわ。言いたくない過去もあるでしょう。私も同じだしね」
ミナトは剣術学園のことを考え、青龍にいたことや、SSランクであることなどは秘密にしようと考えている。
どんな情報が、どんな悪影響を及ぼすかだなんて分かるはずがない。
彼のその判断は、世界の常識からすれば正常なものだったと言える。
しばらくの時間を待った後、学園の入学試験が始まる。
小さな部屋に並ぶ机に数人の男女が腰かける。
当然、ミナトもリザリーもその中にいた。
ロクサーヌ王立第一魔法学園は、王都でもっとも巨大で高名な魔法学園。
そのため入学希望者は後を絶たない。
年ごとの総入れ替えは当然あるのだが、編入者を受け入れるためにほぼ毎日入学試験が行われている。
ただその合格率は決して高くはない。
魔法には才能が必要であり、選ばれたものしか入学を許されない。
頭脳を使用した筆記試験はもちろんのこと、実際に魔法を使用する実技試験。
つまり、既にある程度の魔法技能を持った人間しか、ロクサーヌ王立第一魔法学園には入学することができない。
ミナトはその点は問題ない。
追放されてもSSランクの魔法戦士だったのだ。
魔法が使えず魔法戦士を名乗れるはずがない。
はずだったのだが。
筆記試験にめちゃくちゃ苦戦しているようである。
感覚と独学で魔法を学んだミナトにとって、魔法学はちんぷんかんぷんだった。
MP100を使用してウォーターボールを発動させた時、魔力の還元効率はいくつか?
なんてわかるはずもなく、
ウォーターボールなんて、ぶおーんって手に力を込めて、ばしゃーって飛ばすんだよ!
と、内心独りごちる。
幸い冒険者の常識問題のようなものがあり、そちらで点を稼ぐことができた。
それがなければ容易く筆記で落とされていた事だろう。
ミストリーフ草をメインに使用する薬の名前は?
という問題に、しびれ治療薬と書き込んでチラと目線をあげた。
リザリーも自分と同じような実戦タイプ。だから苦戦しているはずだ。
そう思っていたが、すらすらすらっと書き終え、彼女は既に鼻の頭にペンを乗せ口笛を吹いていた。
その光景に愕然とするものがあった。
これが才能というものなんだろうか、と。
だがすぐに頭を振った。
これは単なる自分の不勉強でしかない、と思いなおしたのだ。
ミナトは残りの時間を脳みそフル回転でペンを動かした。
筆記試験は終わり結果が出る。
合格者は四名、その中に自分の名前も入っていたことに心の底から安堵した。
教官が結果を見ながら言う。
「リザリーは満点か、凄いなやるじゃないか。ミナトは魔法学が壊滅的、ぎりぎりだな。
それでも合格は合格だ。実技試験の結果次第であるから頑張れよ!」
あっはっは、と笑いながらの言葉に複雑な表情を浮かべた。
魔法学園に入ろうとしているのに、魔法学が壊滅的と暴露してくれるなんて。
チラとみると他に合格した二人が笑っていた。
リザリーがすました顔で、ぼそっと話しかけてくる。
「教官も言ってたじゃないの。合格は合格。というより、筆記試験なんてついでにすぎないわよ」
言葉はぶっきらぼうだが慰めてくれてるのが分かってうれしかった。
例え自分のほうが歳が上であろうとも、才能ある彼女の気持ちが伝わってきてうれしかったのだ。
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