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プロローグ
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血が流れ出ている傷だらけの手で、落とした剣を持ち上げた。
また落とさぬように力強く握り締める。その瞬間、手から肩、首、顔と伝わっていき、最後に脳へ激痛が届いた。まるで脳から発せられた電気信号が数百倍になって帰ってきたかのようだった。思わずまた剣を落としそうになるのを堪え、しっかりと構える。
剣先を、目の前で牙を剥いているドラゴンに向けた。
ドラゴンは不快感を露わにし、殺気を込めた咆哮を攻撃のように放ってくる。
逃げよう、と剣を持つ手が訴える。
逃げよう、と地を踏む足が訴える。
逃げよう、と本能が全力で訴える。
──それでも逃げなかった。
恐怖心を息と一緒に吐き出す。
逃げられない。今逃げてしまえば、自分の全てを放棄してしまうことと同じだ。それだけは決して許されないし、許さない。
活路はここにしかないのだ。
小さく深呼吸を重ね、気持ちを深いところに落とす。
覚悟を決め、恐怖に抗うように全力で駆け出した。
ドラゴンが恐ろしいほどに鋭い爪を振り下ろした。
先ほど受けた一撃が脳裏をよぎる。
吐き出した恐怖を呼び戻されてしまった。
それでも足を止めない。
寸でのところ──頬や肩を掠めながらもなんとか躱し、ドラゴンの懐に入り込んだ。すぐに剣を振り上げようとする。だが次の瞬間、もう片方の前足が襲いかかってきた。咄嗟に振り上げ途中の剣で受け止める。爪による斬撃は防げたが、軽々と吹き飛ばされた。
地面を転がる度、激痛が意識を刈り取ろうとする。
意識を失えば待ってるのは死のみだ。
手足に力を入れて、必死に立ち上がった。
開けているのも辛い目で、握り締めている剣を一瞥する。刃が真ん中辺りで折れていた。見ればドラゴンの足元に突き刺さっている。この剣は間違いなく名匠が打った名剣に違いない。だというのに、容易く折られてしまった。
ドラゴンかここぞとばかりに、こちらに向けて大口を開ける。奥の方で煌々と燃ゆる灼熱の炎が見え隠れしていた。トドメを刺そうというのだろう。実際、今のダメージで足が震えて逃げられそうにない。
折れた剣を捨て、首から下げた青い石──召門石を血まみれの手で握った。
「──ァァァァッ!」
叫び、渾身の魔力を流し込む。
「──召喚ッ!」
また落とさぬように力強く握り締める。その瞬間、手から肩、首、顔と伝わっていき、最後に脳へ激痛が届いた。まるで脳から発せられた電気信号が数百倍になって帰ってきたかのようだった。思わずまた剣を落としそうになるのを堪え、しっかりと構える。
剣先を、目の前で牙を剥いているドラゴンに向けた。
ドラゴンは不快感を露わにし、殺気を込めた咆哮を攻撃のように放ってくる。
逃げよう、と剣を持つ手が訴える。
逃げよう、と地を踏む足が訴える。
逃げよう、と本能が全力で訴える。
──それでも逃げなかった。
恐怖心を息と一緒に吐き出す。
逃げられない。今逃げてしまえば、自分の全てを放棄してしまうことと同じだ。それだけは決して許されないし、許さない。
活路はここにしかないのだ。
小さく深呼吸を重ね、気持ちを深いところに落とす。
覚悟を決め、恐怖に抗うように全力で駆け出した。
ドラゴンが恐ろしいほどに鋭い爪を振り下ろした。
先ほど受けた一撃が脳裏をよぎる。
吐き出した恐怖を呼び戻されてしまった。
それでも足を止めない。
寸でのところ──頬や肩を掠めながらもなんとか躱し、ドラゴンの懐に入り込んだ。すぐに剣を振り上げようとする。だが次の瞬間、もう片方の前足が襲いかかってきた。咄嗟に振り上げ途中の剣で受け止める。爪による斬撃は防げたが、軽々と吹き飛ばされた。
地面を転がる度、激痛が意識を刈り取ろうとする。
意識を失えば待ってるのは死のみだ。
手足に力を入れて、必死に立ち上がった。
開けているのも辛い目で、握り締めている剣を一瞥する。刃が真ん中辺りで折れていた。見ればドラゴンの足元に突き刺さっている。この剣は間違いなく名匠が打った名剣に違いない。だというのに、容易く折られてしまった。
ドラゴンかここぞとばかりに、こちらに向けて大口を開ける。奥の方で煌々と燃ゆる灼熱の炎が見え隠れしていた。トドメを刺そうというのだろう。実際、今のダメージで足が震えて逃げられそうにない。
折れた剣を捨て、首から下げた青い石──召門石を血まみれの手で握った。
「──ァァァァッ!」
叫び、渾身の魔力を流し込む。
「──召喚ッ!」
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